商法・会社法13発起人の責任・会社不成立の場合の責任

行政書士 商法・会社法 問13:発起人の責任・会社不成立の場合の責任

株式会社の設立に関する発起人の責任に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 発起人は、株式会社の設立についてその任務を怠った場合には、当該株式会社に対し、連帯して損害賠償をする責任を負う。
  • 会社の不成立(設立の失敗・設立登記の不完了)の場合、発起人は、会社設立に関して行った行為についての連帯責任を負い、また設立に関して支出した費用を連帯して負担する。
  • 発起設立において発起人が払込みを仮装した場合(見せ金)、当該株式の引受人(仮装をした発起人)はその払込みの仮装に関与した設立時取締役等とともに連帯して支払い義務を負う場合がある。
  • 株式会社の設立に際して、第三者に損害を与えた場合、発起人はその悪意または重過失によって生じた損害について責任を負う。
  • 発起人が出資の履行を仮装した場合(見せ金)には、発起人は、仮装した出資に係る払込金額の全額を支払う義務を負うが、この義務は他の発起人の承認があれば免除される。正答
正答:発起人が出資の履行を仮装した場合(見せ金)には、発起人は、仮装した出資に係る払込金額の全額を支払う義務を負うが、この義務は他の発起人の承認があれば免除される。

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発起人の責任には複数の局面があります。①任務懈怠責任(会社法53条1項):設立についての任務を怠り会社に損害を与えた場合、発起人は連帯して損害賠償責任を負います(ア正しい)。②会社不成立の場合(会社法56条):設立が失敗した場合は、発起人が行った行為に連帯責任を負い費用も連帯負担します(イ正しい)。③仮装払込み(見せ金)の責任(会社法52条の2):仮装した発起人は払込金額全額の支払い義務を負い、この義務の免除には総株主の同意が必要です(会社法55条)(オ誤り:「他の発起人の承認で免除」は誤り。総株主の同意がなければ免除できない)。④第三者への責任(会社法53条2項):悪意・重過失で第三者に損害を与えた場合の賠償責任(エ正しい)。⑤設立時取締役等との連帯責任(ウ正しい方向)。

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発起人の設立関連責任の体系を整理します。任務懈怠による会社への損害賠償(会社法53条1項):発起人・設立時取締役・設立時監査役が設立についてその任務を怠った場合、連帯して損害賠償をする責任を負います(ア正しい)。この責任は「任務懈怠(=過失・故意による任務の不履行)」を要件とします。第三者への損害賠償(会社法53条2項):発起人等が悪意・重過失によって第三者に損害を与えた場合の責任(エ正しい)。軽過失では第三者への直接責任は生じない点に注意(会社役員の第三者責任と同構造)。会社不成立の場合(会社法56条):設立が完了しなかった場合(設立登記未了等)には、発起人は設立に関して行った行為について連帯責任を負い、設立に関して支出した費用を連帯して負担します(イ正しい)。仮装払込み(見せ金)(会社法52条の2):出資の払込みを仮装した発起人は、払込金額に相当する金銭を支払う義務を負います。この義務の免除には総株主の同意が必要であり(会社法55条)、「他の発起人の承認があれば免除される」というものではありません(オ誤り)。仮装払込みに関与した設立時取締役等は、その発起人と連帯して支払い義務を負う場合があります(会社法52条の2第2項・第3項)(ウ正しい)。

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【理論的背景】

発起人の責任が厳格に規律される理由は、設立の場面で発起人が会社に対して圧倒的に優位な立場にあり、設立後の株主・債権者が発起人の行為を事前にチェックする機会がないからです。特に仮装払込み(見せ金)は、実際には出資をしていないのに形式上払込みをしたように装い、払込み証明を得た後に払い込んだ金銭を直ちに引き出す行為であり、会社の資本充実(会社の財産的基礎の確保)を著しく害します。このため、仮装払込みについては免除を総株主の同意にかからしめる(会社法55条)ことで、資本充実の原則を強く維持しています。なお仮装払込責任(52条の2)と異なり、発起人の対第三者責任(53条2項)は総株主の同意によっても免除できません。

【条文構造】

会社法52条の2は仮装払込みの責任を規定し、1項(仮装した発起人の支払義務:払込金額に相当する金銭の支払い)、2項(仮装に関与した設立時取締役等の連帯義務:ただし注意を怠らなかったことを証明した場合は免れる)、3項(連帯債務:仮装した発起人と関与した設立時取締役等が義務を負うときはこれらの者を連帯債務者とする)と規定されます。仮装払込みによる支払義務の免除には総株主の同意が必要です(会社法55条)。すなわち「他の発起人の承認」程度では免除できず、株主全員の同意がなければ免除できません。会社法53条1項は「発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったときは、当該株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」と規定し、同条2項は「悪意又は重大な過失があったときは、当該発起人、設立時取締役又は設立時監査役は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う」と規定します。会社法56条(会社不成立の場合)は「発起人は、株式会社の設立についてその設立に関してした行為についての責任を負い、株式会社の設立に関して支出した費用を負担する」と規定し(連帯責任を明示)、会社の成立を条件としない発起人の個人責任を確立しています。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での発起人責任は、①任務懈怠による会社への連帯損害賠償(53条1項)、②第三者への悪意・重過失責任(53条2項)、③会社不成立時の発起人の連帯責任(56条)、④仮装払込み責任の免除には総株主の同意が必要(55条)の4点が典型です。特に④は「免除には総株主の同意が必要であり、一部の発起人の承認では免除されない」という点が問われます。会社設立後の取締役の第三者責任(423条・429条)との比較も有用です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 正しい。会社法53条1項により、発起人は設立についての任務懈怠を原因とする連帯損害賠償責任を負う。
  • イ: 正しい。会社法56条により、会社が不成立の場合でも発起人は設立関連行為の連帯責任・費用の連帯負担義務を負う。「会社がないから責任なし」にはならない。
  • ウ: 正しい。会社法52条の2第2項が仮装払込みに関与した設立時取締役等の連帯義務を規定(注意を怠らなかったことの証明により免れる可能性あり)。
  • エ: 正しい。会社法53条2項(悪意・重過失による第三者への損害賠償)。軽過失では第三者への直接責任は生じない。
  • オ: 誤り。仮装払込みの支払義務の免除には総株主の同意が必要(会社法55条)。「他の発起人の承認があれば免除される」という選択肢の内容は法的根拠がない。

【根拠条文】

会社法 第52条の2第1項・第2項・第3項(出資の履行を仮装した場合の責任・連帯債務)

会社法 第55条(責任の免除には総株主の同意が必要)

会社法 第53条第1項・第2項(発起人等の損害賠償責任・任務懈怠・第三者責任)

会社法 第56条(会社不成立の場合の責任)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第53条(発起人の損害賠償責任)、会社法第56条(会社不成立の場合の責任)、会社法第52条の2(出資の履行を仮装した場合の責任)、会社法第55条(責任の免除=総株主の同意) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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