行政書士 商法・会社法 問27:株主総会決議の瑕疵・決議取消しの訴え
株主総会の決議の瑕疵に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア株主総会の決議の取消しの訴えは、決議の日から3か月以内に提起しなければならず、この期間は不変期間であって伸長することができない。
- イ決議取消しの訴えを提起できる者は、株主・取締役・監査役・執行役・清算人に限られ、会社債権者はこれを提起することができない。
- ウ裁判所は、決議取消事由があっても、その違反する事実が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさないと認めるときは、請求を棄却することができる。
- エ株主総会の決議の内容が定款に違反する場合は、決議取消しの訴えではなく、決議無効確認の訴えによらなければならない。正答
- オ株主総会の決議の内容が法令に違反する場合は、決議無効確認の訴えによるべきであり、誰でもいつでも訴えを提起することができる。
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株主総会決議の瑕疵の類型が問われています。エが誤りです。決議の内容が「定款に違反する場合」は、決議取消しの訴えの事由です(831条1項2号)。決議無効確認の訴えは「決議の内容が法令に違反する場合」に用いられます(830条2項)。つまりエは取消しと無効を逆に述べており誤りです。ア(3か月の出訴期間)・イ(提訴権者の限定)・ウ(裁量棄却)・オ(決議無効は誰でもいつでも)はいずれも正しい内容です。
瑕疵の類型と訴えの整理
会社法は株主総会決議の瑕疵を三類型に区分しています。
1. 決議取消し(831条): ①招集手続・決議方法の法令・定款違反、②決議内容の定款違反、③特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議。提訴権者は株主・取締役・監査役・執行役・清算人に限定。提訴期間は決議の日から3か月以内。裁量棄却(831条2項)あり。
2. 決議無効確認(830条2項): 決議の内容が法令に違反する場合。提訴権者・期間の制限なし(誰でもいつでも)。
3. 決議不存在確認(830条1項): 総会が物理的に開催されなかった場合等、決議としての外形すら欠く場合。提訴権者・期間の制限なし。
エは「内容が定款違反→無効確認の訴え」と述べているが正しくは「内容が定款違反→取消しの訴え」であり、これが誤りです。
他の選択肢の確認
- ア: 正しい。3か月の不変期間(831条1項)。
- イ: 正しい。提訴権者の限定(831条1項の主体列挙)。
- ウ: 正しい。裁量棄却(831条2項)。
- オ: 正しい。決議無効は確認の利益がある者は誰でも訴えられ、期間制限なし(確認の訴えとして一般原則による)。
【理論的背景:取消し・無効・不存在の区別の設計思想】
会社法が決議の瑕疵を三段階に区別しているのは、法的安定性と株主保護のバランスを図るためです。決議には多数の第三者(取引相手方・従業員等)が依拠して行動するため、瑕疵があるからといって常に無効とすれば取引の安全が著しく損なわれます。そこで会社法は①手続的瑕疵や定款違反は相対的に軽微として「取消し」(形成訴訟・期間制限・取消しまでは有効)とし、②法令に違反する実質的に重大な瑕疵は「無効」(期間制限なし・誰でも主張可)として区別しました。不存在は決議が存在するかのような外形すらない極端な場合です。
【実務・条文構造:831条と830条の比較対照】
| 項目 | 取消し(831条) | 無効確認(830条2項) | 不存在確認(830条1項) |
|---|---|---|---|
| 事由 | ①招集手続・決議方法の法令/定款違反②決議内容の定款違反③特別利害関係人の著しく不当な決議 | 決議内容が法令違反 | 決議が存在しない |
| 提訴権者 | 株主・取締役・監査役・執行役・清算人(限定列挙) | 制限なし | 制限なし |
| 提訴期間 | 決議の日から3か月以内 | 制限なし | 制限なし |
| 訴えの性質 | 形成訴訟(取消しまでは有効) | 確認訴訟 | 確認訴訟 |
| 裁量棄却 | あり(831条2項) | なし | なし |
| 対世効 | あり(838条:請求認容判決は第三者にも効力) | あり | あり |
【試験での位置づけ:頻出の引っかけパターン4つ】
行政書士試験では以下の引っかけが繰り返し出題されます。
① 「定款違反→取消し」か「法令違反→無効」かの入れ替え(本問エ)。この区別は最重要。
② 「取消しの提訴期間は3か月」と「決議があった日から6か月(株式の取得請求等)」等の混同。
③ 裁量棄却(831条2項)の存在を知らないと「手続違反なら必ず取消される」と誤解する。要件は「違反が重大でなく、かつ決議に影響を及ぼさない」の両方が必要。
④ 特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議(831条1項3号):利害関係を持つ株主が議決権を行使すること自体は禁止されていないが、その行使によって「著しく不当な決議」となった場合に取消事由になるという点(利害関係の「有無」ではなく「著しく不当な決議」の結果を問う点)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 3か月の不変期間とは「裁判所による伸長・短縮が不可」な法定期間。会社の期間利益(法律関係の早期安定)のため厳格に設定されています。
- イ: 提訴権者の限定は取消し訴訟の特則。株主は「取消し事由がある決議の日に株主であった者」でも可。また「債権者」は取消し訴訟の提訴権者に含まれない点を確認する。無効確認訴訟は確認の利益がある者ならば債権者も含め訴えられます。
- オ: 決議無効確認訴訟は形式的当事者(株主・役員等)に限らず、確認の利益がある限り誰でも訴えられます。典型例:決議内容が法令(株式会社の利益相反規制等)に明らかに違反する場合。期間制限がない理由は「法令違反は公序に関わる重大な瑕疵であり、いつでも無効が確認されるべき」という政策的判断によります。
【根拠条文】
会社法 第830条第1項(決議不存在確認の訴え)・第2項(決議無効確認の訴え)
会社法 第831条第1項(決議取消しの訴え・事由と期間)・第2項(裁量棄却)
会社法 第838条(認容判決の対世効)
【補足】
「定款違反→取消し」「法令違反→無効」の対応は絶対に覚える。831条の取消し事由3号(特別利害関係人)は条文の読み込みを要する応用論点。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第830条(決議不存在・無効確認の訴え)・第831条(決議取消しの訴え) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。