商法・会社法26特別決議・特殊決議の要件

行政書士 商法・会社法 問26:特別決議・特殊決議の要件

甲株式会社(取締役会設置会社・公開会社)の株主総会の決議要件に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 定款変更の決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要であるが、定款によって定足数を過半数未満に引き下げることはできない。
  • 役員(取締役・監査役)の選任は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成が必要であり、定款によって定足数を3分の1以上に引き下げることができる。正答
  • 代表取締役の解職は、株主総会の特別決議によって行われ、定足数を定款で引き下げることはできない。
  • 特別決議の「出席した株主の議決権の3分の2以上」という賛成要件は、定款によって4分の3以上に加重することができるほか、定款で定めれば過半数にまで引き下げることもできる。
  • 取締役の解任は、常に特別決議を要し、普通決議で行うことはできない。
正答:役員(取締役・監査役)の選任は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成が必要であり、定款によって定足数を3分の1以上に引き下げることができる。

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株主総会の決議要件が問われています。イが正しい。役員(取締役・監査役等)の選任は普通決議によります(341条)。ただし一般的な普通決議(309条1項)とは異なり、定款によって定足数を「3分の1未満にすることができない」という下限が設けられています(341条)。つまり「過半数→3分の1以上まで引き下げ可」という理解が正確で、イの記述は正しい。アは誤り:特別決議(309条2項)の定足数は定款で「3分の1以上」まで引き下げ可能です。エは誤り:「3分の2以上」を加重することは可能ですが、下限(3分の2)自体は法定です。

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イが正答の根拠(341条の特別規定)

役員の選任・解任の決議要件は会社法341条が特則として定めています。①定足数:議決権を行使できる株主の議決権の過半数(定款で3分の1以上まで緩和可)。②賛否:出席した株主の議決権の過半数(定款で加重可・ただし309条1項の普通決議より厳しい341条独自の規律)。これは「役員の選任を一部株主の多数で行われること」を防ぐための趣旨であり、定足数の緩和には下限(3分の1)が設けられています。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 特別決議(309条2項)の定足数は定款で「3分の1以上」まで引き下げ可能(同条2項かっこ書)。「過半数未満に引き下げできない」は誤り。
  • ウ: 代表取締役の解職は取締役会設置会社では取締役会の決議(362条3項)。株主総会が直接解職する規定は原則なし(ただし定款の別段の定めは可能)。
  • エ: 誤り。特別決議の賛成要件「3分の2以上」(309条2項)は、定款で4分の3以上などに加重することはできますが、これを下回る(過半数まで引き下げる)ことはできません。「3分の2以上」は法定の最低ライン(強行的下限)です。エは「過半数にまで引き下げることもできる」としている点で誤りです(定足数は3分の1以上まで引き下げ可能であるのに対し、賛成要件は加重のみ可という非対称に注意)。
  • オ: 取締役の解任は普通決議が原則(341条・309条1項)。監査役等の解任のみ特別決議(339条1項、309条2項7号)。
上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景:決議要件の設計思想と株主保護】

会社法の決議要件設計は「事項の重要性と株主の保護」のバランスに基づいています。普通決議(309条1項)は日常的な業務に関する意思決定に用いられ、定款によって定足数を完全に排除することも可能です(同条1項かっこ書)。これに対し特別決議(309条2項)は会社の基礎を変更する事項に用いられ、定足数の引き下げには下限(3分の1以上)があり、賛成要件(3分の2以上)は定款で引き上げのみ可能です。役員選任に関する341条はこの中間形態として、定足数の緩和に3分の1という下限を設けることで、少数株主による役員支配を防止しています。

【実務・条文構造:309条と341条の決議要件マトリクス】

| 決議種別 | 定足数 | 賛成要件 | 主な対象事項 |

|---|---|---|---|

| 普通決議(309条1項) | 過半数(定款で排除可) | 過半数 | 役員報酬・計算書類承認等 |

| 役員選任(341条) | 過半数(定款で3分の1以上に緩和可) | 過半数(定款で加重可) | 取締役・監査役等の選任 |

| 特別決議(309条2項) | 過半数(定款で3分の1以上に緩和可) | 3分の2以上(定款で加重可) | 定款変更・合併・解散等 |

| 特殊決議(309条3項) | 総株主の半数以上(頭数) | 議決権の4分の3以上 | 株主ごと異なる取扱い定款変更等 |

取締役の解任については、341条が原則として普通決議(ただし341条の特別規定により定足数下限あり)としていることに注意が必要です。ただし累積投票で選任した取締役の解任は特別決議が必要(309条2項7号)という例外があります。

【試験での位置づけ:解任・解職の区別と出題パターン】

行政書士試験では「解任」と「解職」の区別も問われます。「解任」は株主総会が取締役・監査役の地位そのものを終了させること(役員の地位を失わせる)。「解職」は取締役会が代表取締役・業務執行取締役の「代表・業務執行の権限」を取り上げること(取締役の地位自体は残る)。取締役会設置会社において代表取締役を「解職」するのは取締役会の権限(362条3項)であり、株主総会ではできません(定款に別段の定めがある場合を除く)。選択肢ウはこの「解職=取締役会の権限」という点を無視した誤りです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 特別決議の定足数は「3分の1以上」まで引き下げ可能(309条2項かっこ書)。つまり「議決権の3分の1を保有する株主が出席すれば定足数を満たす」状態にできる。公開大会社では株主数が多く定足数を確保することが困難なため、この緩和は実務上重要です。
  • イ: 正しい。341条は「議決権を行使できる株主の議決権の過半数(3分の1以上に引き下げ可)を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数をもって行う」と規定。
  • エ: 加重は可能(例:「4分の3以上の賛成を要する」と定款に定めることができる)。309条2項は「3分の2以上」を最低限として定めているため、これを下回る引き下げは不可。
  • オ: 累積投票で選任された取締役の解任のみ特別決議(309条2項7号)が必要。通常の選任取締役の解任は原則普通決議(341条)。「常に特別決議」は誤り。

【根拠条文】

会社法 第309条第1項(普通決議)・第2項(特別決議)・第3項(特殊決議)

会社法 第341条(役員の選任・解任の決議)

会社法 第339条第1項(役員の解任)

会社法 第362条第3項(取締役会の専決事項)

【補足】

309条と341条の「定足数の緩和下限(3分の1以上)」と「賛成要件の違い」を表で整理する。「解任(総会)」と「解職(取締役会)」の区別は頻出の引っかけ。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第309条(株主総会の決議)・第341条(役員の選任・解任の決議) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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