行政書士 商法・会社法 問25:株主総会の招集・通知
株式会社の株主総会の招集に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア取締役会設置会社においては、株主総会の招集は取締役会の決議によって決定しなければならず、代表取締役が単独で招集の決定をすることはできない。
- イ公開会社においては、株主総会の招集通知は、原則として会日の2週間前までに発しなければならない。
- ウ書面投票または電磁的方法による議決権行使を認める場合、会社は招集通知とともに株主総会参考書類および議決権行使書面を交付しなければならない。
- エ株主総会の招集通知は、書面によることが必要であり、口頭による通知では株主総会を適法に招集することができない。正答
- オ取締役会設置会社においては、少数株主による株主総会の招集請求を受けた場合、取締役会が一定期間内に総会招集の手続を行わないときは、請求をした株主は裁判所の許可を得て総会を招集することができる。
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株主総会の招集手続に関する問題です。エが誤りです。会社法299条は招集通知の方法について「書面によること」を絶対的に要求しているわけではありません。取締役会非設置会社では、株主全員の同意がある場合は招集手続を省略でき(300条)、また非公開会社で書面投票・電磁的投票を行わない場合は、定款に定めがあれば電磁的方法の通知も可能です。さらに非公開会社では定款の定めで招集通知を「書面によらない方法」でも行えます(299条2項・3項)。書面が絶対的要件とはいえず、エは誤りです。他の選択肢は概ね正しい内容を述べています。
エが誤りの根拠(会社法299条の詳細な構造)
299条の招集通知の方法は会社の種類に応じて段階的に異なります。
①公開会社・取締役会設置会社: 書面(または電磁的方法で承諾した株主への電磁的方法)による通知が原則(299条2項・3項)。
②取締役会設置会社でない非公開会社: 定款に定めがなければ書面・電磁的方法・口頭のいずれでも可(299条1項は「通知しなければならない」のみ規定)。ただし書面投票を設ける場合は書面通知が必要(299条3項)。
③全株主の同意: 招集手続自体を省略できる(300条)。
したがって「書面によることが必要であり、口頭による通知では適法に招集できない」という一律の断定(エ)は誤りです。
他の選択肢の確認
- ア: 正しい。取締役会設置会社での招集決定は取締役会の決議事項(298条4項)。
- イ: 正しい。公開会社は2週間前(299条1項)。非公開会社は原則1週間前(同項・定款で短縮可)。
- ウ: 正しい。書面投票等を認める場合の参考書類・議決権行使書面の交付義務(301条・302条)。
- オ: 正しい。少数株主の招集請求(297条)と裁判所許可による自己招集(297条4項)の制度。
【理論的背景:招集手続の目的と保護法益】
株主総会の招集手続規制は「株主への事前情報提供と出席機会の保障」が目的です。招集通知が適切になされることで、株主は議案を事前検討し、出席・議決権行使・委任状提出等の対応を取ることができます。手続違反があった場合、総会決議の取消事由となりえますが(831条1項1号)、重大な違反がなければ裁判所は請求を棄却できる「裁量棄却」規定もあります(831条2項)。このように招集手続は重要ですが、その方式は絶対的ではなく、会社の規模・株主数・全員同意等の状況に応じた柔軟性が認められています。
【実務・条文構造:299条の段階的な方式要件】
招集通知の要件は4つの変数によって決まります。
1. 通知期間: 公開会社=2週間前(299条1項本文)、非公開会社=1週間前(同項ただし書・定款でさらに短縮可)。書面投票等を設ける場合は非公開会社でも2週間前(299条1項かっこ書)。
2. 通知方法: 取締役会設置会社・公開会社は書面または電磁的方法(承諾した株主のみ)が必要(299条2項・3項)。非公開の取締役会非設置会社は定款の定めがなければ口頭でも可(299条1項は「通知」のみ要求)。
3. 添付書類: 書面投票を定めた場合は株主総会参考書類と議決権行使書面の交付が必要(301条1項)。電磁的方法による場合も同様(302条1項)。
4. 招集手続の省略: 全株主(議決権の有無を問わず)の同意があれば招集手続なしに開催可(300条)。ただし書面投票制度を設けた場合は省略不可(300条ただし書)。
選択肢エは「取締役会設置会社か否か・公開会社か否か・書面投票の採否」という変数を無視して一律に「書面による通知が必要」と断定する点で誤りです。
【試験での位置づけ:招集手続違反の効果と出題頻度】
招集手続の瑕疵の効果は行政書士試験の頻出テーマです。①通知期間の不足、②必要な書面の添付漏れ、③招集権限のない者による招集などが「決議取消事由」(831条1項)になります。ただし「裁量棄却」(831条2項)により、違反が軽微で株主が不利益を受けていないと認められる場合、裁判所は取消請求を棄却できます。この裁量棄却の要件(①違反した事実が重大でないこと②決議に影響を及ぼさないこと)も頻出です。また「全株主の同意」による手続省略(300条)は実務上の定時総会書面決議方式とも関連するため、理解を深めておく必要があります。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 取締役会が招集を決定し(298条4項)、代表取締役が招集通知を発するという分業構造。ただし「取締役会が定めた範囲内で代表取締役が招集手続を進める」という実務慣行がある点に注意。
- イ: 2週間前は「書面等を要する会社」の要件でもある(299条1項かっこ書)。非公開会社でも書面投票を採用する場合は2週間前となり、原則の1週間前より長くなります。
- オ: 少数株主の招集請求(297条)は、総株主の議決権の100分の3以上かつ6か月前から引き続き保有(公開会社の場合)が要件。非公開会社では保有期間要件なし。請求から8週間以内に取締役が招集手続を行わないとき、裁判所の許可を得て株主自身が招集できます(297条4項)。
【根拠条文】
会社法 第298条(株主総会の招集の決定)
会社法 第299条第1項〜第3項(株主総会の招集通知)
会社法 第300条(招集手続の省略)
会社法 第301条・第302条(参考書類・議決権行使書面の交付)
会社法 第831条第1項第1号・第2項(決議取消しの訴え・裁量棄却)
【補足】
通知期間(公開会社2週間/非公開1週間)と方法(取締役会設置か否かで書面要否が変わる)の組み合わせを整理する。「全株主同意で手続省略」(300条)は頻出の応用論点。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第299条(株主総会の招集通知) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。