行政書士 商法・会社法 問24:株主総会の権限・決議事項
株主総会に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア株主総会は、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り決議することができ、取締役会設置会社においても、代表取締役の選定を自らの決議で行うことができる。
- イ取締役会設置会社においては、株主総会の権限は会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限定されるが、取締役会を設置しない会社においては、株主総会は一切の事項について決議することができる。正答
- ウ株主総会の決議は、決議の種類を問わず、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数をもって行われる。
- エ株主総会において、株主は、株主総会の目的である事項に関係がない事項についても、自由に質問し、取締役はこれに答弁する義務を負う。
- オ株主は、株主総会において書面または電磁的方法により議決権を行使することができるが、これは定款に定めがある場合に限られ、会社はいつでも任意に採用することはできない。
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株主総会の権限の範囲が問われています。会社法295条の規定がポイントです。取締役会設置会社では、株主総会は「会社法に規定する事項および定款で定めた事項」のみ決議できます(同条2項)。取締役会非設置会社では、株主総会は「一切の事項について決議できる」(同条1項)。イはこの区別を正確に述べており正しい。アは誤り:取締役会設置会社では代表取締役の選定は取締役会の専決事項(会社法362条3項)であり、株主総会では原則できません。ウは誤り:特別決議等の要件が異なります。
イが正答の根拠(会社法295条の構造)
会社法295条は2つの場合を明確に区別しています。①取締役会非設置会社:株主総会は「会社の組織・運営・管理その他会社に関する一切の事項について決議することができる」(1項)。②取締役会設置会社:株主総会の権限は「会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限る」(2項)。これは、取締役会設置会社では業務執行を取締役会に委ねる構造を採るためです。
各選択肢の誤りの核心
- ア: 代表取締役の選定は取締役会設置会社において取締役会の専決事項(362条3項)。株主総会は原則として選定できません(定款に別段の定めがある場合を除く)。
- ウ: 普通決議の要件(定足数は定款で排除可・議決権の過半数が原則)と特別決議(議決権の3分の2以上)・特殊決議は要件が異なります。
- エ: 株主の質問権(314条)は「議題に関係する事項」に限られ、無関係な質問への答弁義務はありません。
- オ: 書面・電磁的議決権行使は「株主の数が1000人以上の会社」では書面投票が義務化(298条2項)。任意採用も許容されており「定款に定めがある場合に限られる」とする点が誤りです。
【理論的背景:株主総会の地位と権限分配の意義】
株主総会は株主の意思決定機関であり、会社の最高意思決定機関と呼ばれることがあります。しかし会社法は、取締役会設置会社における株主総会の権限を意図的に限定しています。その理由は「経営の専門化・機動性の確保」にあります。株主は多数・分散しており、複雑な業務執行判断を全員の合議で行うことは非効率です。そこで業務執行は取締役会に委ね、株主は大枠の組織的意思決定(役員選解任・計算書類承認・定款変更・合併等の基礎的変更)のみに関与する「二元的構造」を採ります。これが295条2項の権限限定の根拠です。
【実務・条文構造:普通決議・特別決議・特殊決議の三層構造】
株主総会の決議要件は、決議事項の重要性に応じて三層に分かれます。
1. 普通決議(309条1項): 定足数は「議決権の過半数」(定款で緩和・排除可能)、賛成は「出席した株主の議決権の過半数」。役員報酬・計算書類の承認・剰余金配当(別段の定めのある場合)等。役員選解任も普通決議が原則(ただし取締役選任の定足数は定款で3分の1以上まで緩和可)。
2. 特別決議(309条2項): 定足数は「議決権の過半数」(定款で3分の1以上まで緩和可)、賛成は「出席した株主の議決権の3分の2以上」。定款変更・事業譲渡の全部・合併契約承認・解散決議等、会社の基礎に関わる事項。
3. 特殊決議(309条3項・4項): 定款で株主ごとに異なる取扱いを定める場合(総株主の半数以上かつ議決権の4分の3以上)など。
選択肢ウは「決議の種類を問わず…過半数をもって行われる」とする点でこの三層構造を無視した誤りです。
【試験での位置づけ:行政書士試験での出題パターン】
商法・会社法は行政書士試験で毎年5問程度出題されます(全体の約8%)。機関分野では特に「取締役会設置会社か否かで権限・手続が異なる」という軸が頻出です。295条(総会権限)、309条(決議要件)、362条(取締役会専決事項)は三点セットで理解する必要があります。また「定款で変更できる要件」と「法定で変更できない要件」の区別(たとえば特別決議の「3分の2以上」は定款で引き上げは可能だが引き下げは不可)も応用問題で問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 代表取締役の「選定」は取締役会専決(362条3項)。ただし株主総会で選定できる場合として①取締役会非設置会社(会社法349条1項で各取締役が代表権を持つのが原則)、②定款に特別の定めがある場合、などがあります。試験では「選任(役員を選ぶ)」と「選定(代表権を与える)」の区別も問われます。
- オ: 書面投票・電磁的投票の義務化ラインは「株主数1000人以上」(298条2項)。これ以下でも取締役会は任意に採用できます(298条1項2号・3号)。「定款に定めがある場合に限られる」という限定は法文上ありません。
【根拠条文】
会社法 第295条(株主総会の権限)
会社法 第309条(株主総会の決議)
会社法 第362条第3項(取締役会の権限)
【補足】
295条の「一切の事項=非設置会社」「限定=設置会社」の対比は最頻出。309条の三層構造(普通/特別/特殊)と定款による緩和の可否も整理必須。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第295条(株主総会の権限) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。