問題
株式会社の監査役および監査役会に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
監査役の権限・地位に関する問題です。オが誤りです。監査役の報酬等は定款または株主総会の決議によって定められますが(387条1項)、監査役が二人以上いて各監査役の報酬等について定款の定めや総会決議がないときは、その範囲内で「監査役の協議によって」定めます(387条2項)。取締役会の決議によるのではありません。これは監査役の独立性(取締役・取締役会から独立して監査を行う)を確保するための規定です。取締役会が各監査役への報酬配分を決定できるならば、報酬をちらつかせて監査役を支配できるからです。ア(取締役会への出席・意見陳述義務:383条1項)・イ(4年任期・非公開会社での10年までの伸長:336条1項・2項)・ウ(訴えの代表:386条1項、著しい損害のおそれがある場合の差止請求:385条1項)・エ(3人以上・半数以上社外監査役・監査報告の作成:335条3項・390条)は正しい内容です。
オが誤りの根拠(387条2項の「協議」)
387条は段階的に規律します。①387条1項:監査役の報酬等は、定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。②387条2項:監査役が二人以上ある場合に、各監査役の報酬等について定款の定めや株主総会の決議がないときは、1項の報酬等の範囲内において「監査役の協議によって定める」。つまり配分の決定は「監査役自身の協議」によるのであり、取締役会には委ねられません。これは監査する側(監査役)が監査される側(取締役会)に報酬配分を決定させると独立性が失われるためです。
他の選択肢の確認
- ア: 正しい。383条1項「監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない」。
- イ: 正しい。監査役の任期は選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで(336条1項)。公開会社でない株式会社では、定款によって選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長できます(336条2項)。取締役のような「定款又は株主総会の決議」による一般的な短縮の規定(332条1項ただし書)はありません。
- ウ: 正しい。会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表(386条1項1号)、取締役の法令・定款違反行為によって「著しい損害が生ずるおそれがあるとき」の差止請求(385条1項)。
- エ: 正しい。監査役会はすべての監査役で組織し(390条1項)、監査役は3人以上で半数以上は社外監査役(335条3項)、監査報告の作成・常勤の監査役の選定及び解職は監査役会の職務(390条2項1号・2号)。
【理論的背景:監査役の独立性確保の多層的な仕組み】
会社法が監査役の独立性を確保するために採る制度は複数あります。①任期(336条1項):選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。取締役のような「定款又は株主総会の決議」による一般的な短縮の規定(332条1項ただし書)はありません。ただし、定款で補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすること(336条3項)や、監査役を置く旨の定款の定めの廃止など一定の定款変更による任期の満了(336条4項)は定められています。②解任:株主総会の決議で解任できますが(339条1項)、監査役の解任は特別決議によります(309条2項7号)。正当な理由なく解任された者は損害賠償を請求できます(339条2項)。③報酬:定款または株主総会の決議で定め(387条1項)、各監査役の配分は監査役の協議によります(387条2項)。監査役は株主総会で監査役の報酬等について意見を述べることができます(387条3項)。④意見陳述:監査役は株主総会で監査役の選任・解任・辞任について意見を述べることができ、監査役を辞任した者は辞任後最初に招集される株主総会に出席して辞任した旨とその理由を述べることができます(345条4項による同条1項・2項の準用)。⑤選任議案への同意:取締役が監査役の選任議案を株主総会に提出するには監査役(二人以上なら過半数)の同意が必要で、監査役会設置会社では監査役会の同意となります(343条1項・3項)。これらが重なり合って、監査役が経営陣の意向に左右されずに監査できる環境を作っています。
【実務・条文構造:監査役の権限と報告の流れ】
1. 調査権限(381条2項〜4項):いつでも取締役・会計参与・支配人その他の使用人に事業の報告を求め、業務・財産の状況を調査できる。職務を行うため必要があるときは子会社にも報告を求め調査できる(子会社は正当な理由があるときは拒むことができる)。
2. 報告の流れ:監査役は、取締役の不正行為やそのおそれ、法令・定款違反の事実や著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく取締役(取締役会設置会社では取締役会)に報告しなければならない(382条)。逆に、取締役は会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに監査役(監査役会設置会社では監査役会)に報告しなければならない(357条1項・2項)。
3. 差止請求権(385条):取締役が目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をし、またはするおそれがある場合において、当該行為によって会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、その行為をやめることを請求できる(1項)。裁判所が仮処分で差止めを命ずるときは担保を立てさせない(2項)。
4. 会社の代表(386条):会社が取締役(取締役であった者を含む)に対し、または取締役が会社に対して訴えを提起する場合は、監査役が会社を代表する(1項1号)。また、株主から取締役の責任を追及する訴えの提起の請求を受ける場合や、取締役の責任を追及する訴えに係る訴訟告知、和解に関する通知・催告を受ける場合も、監査役が会社を代表する(2項1号・2号)。
【試験での位置づけ:監査役と取締役・株主の頻出比較】
①会社と取締役との間の訴え→監査役設置会社では監査役が代表(386条1項)、原則は代表取締役の包括的代表権(349条4項)。②差止請求→監査役は「著しい損害」のおそれで足りる(385条1項)。株主の差止請求も条文上は「著しい損害」(360条1項)ですが、監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では「回復することができない損害」に読み替えられます(360条3項)。③報酬→監査役は配分を「協議」で決める(387条2項)。取締役の報酬等は、定款に定めていないときは株主総会の決議によって定めます(361条1項)。④任期→監査役は4年(336条1項)、取締役は2年で、定款または株主総会の決議によって短縮できます(332条1項)。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 383条1項のとおり。監査役は取締役会の構成員ではないので議決権はないが、出席し、必要があると認めるときは意見を述べる義務を負う。
- イ: 336条1項・2項のとおり。伸長できるのは公開会社でない株式会社に限られ、上限は選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで。
- ウ: 386条1項の訴えには、会社から取締役への責任追及の訴えと、取締役から会社への訴えの両方が含まれる。差止請求は「著しい損害が生ずるおそれがあるとき」に限られ(385条1項)、この要件を欠くと請求できない。
- エ: 社外監査役の「半数以上」要件(335条3項)は監査役会設置会社に適用される。大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)は監査役会を置かなければならない(328条1項)。常勤の監査役の選定は監査役会の職務であり(390条2項2号・3項)、監査役会の決議は監査役の過半数をもって行う(393条1項)。
- オ: 誤り。387条2項により、各監査役の報酬等について定款の定めや株主総会の決議がないときは、387条1項の報酬等の範囲内において監査役の協議によって定める。取締役会の決議ではない。
【根拠条文】
会社法 第335条第3項(監査役会設置会社の監査役の員数・社外監査役)
会社法 第336条第1項〜第4項(監査役の任期)
会社法 第383条第1項(取締役会への出席・意見陳述義務)
会社法 第385条第1項・第2項(監査役による取締役の行為の差止め)
会社法 第386条第1項・第2項(監査役設置会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等)
会社法 第387条第1項〜第3項(監査役の報酬等)
会社法 第390条第1項〜第3項(監査役会の構成・職務・常勤の監査役)
【補足】
報酬配分が「監査役の協議」(387条2項)で取締役会ではない点が最重要。差止請求(385条1項・著しい損害のおそれ)と会社の代表(386条)は権限の核心。
- 会社法第335条・第336条・第383条・第385条・第386条・第387条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第387条(監査役の報酬等)・第383条(取締役会への出席義務等)・第336条(監査役の任期)・第385条(監査役による取締役の行為の差止め)・第386条(会社と取締役との間の訴えにおける会社の代表等)・第335条第3項・第390条(監査役会) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

