行政書士 商法・会社法 問33:会計参与・会計監査人の機能
会計参与および会計監査人に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア会計参与は、税理士・税理士法人・公認会計士・監査法人のいずれでも就任することができ、取締役と共同して計算書類を作成する機関である。正答
- イ会計参与は、任意に設置できる機関であり、会計参与を設置した会社では、監査役を設置する必要がなくなる。
- ウ会計監査人は、大会社(最終事業年度に係る貸借対照表上の資本金100億円以上または負債100億円以上の株式会社)に必ず設置しなければならない機関であり、公認会計士または監査法人でなければなれない。
- エ会計監査人の選任および解任は株主総会の普通決議によって行われるが、監査役(会)は選任議案に反対意見を付することができる。
- オ会計監査人を設置した会社では、会計参与を設置することができなくなる。
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会計参与と会計監査人の区別が問われています。アが正しい。会計参与の資格(333条1項)は税理士・税理士法人・公認会計士・監査法人のいずれかであり(会計専門家)、取締役と「共同して」計算書類等を作成することが最大の特徴です(374条1項)。これはアの記述と一致します。イは誤り:会計参与を置いても監査役設置義務が消えるわけではありません(取締役会設置会社では原則監査役が必要)。ウは誤り:大会社の定義は「資本金5億円以上または負債200億円以上」(会社法2条6号)であり、ウの「資本金100億円以上または負債100億円以上」は数値が誤りです(会計監査人の資格=公認会計士・監査法人のみという後段は正しい)。エは誤り:会計監査人の選任議案に関して、監査役会(会計監査人設置会社では監査役会等)が同意権を持ちます(344条)。オは誤り:会計参与と会計監査人は同時に設置可能です。
アが正答の根拠(会計参与の定義と資格)
会計参与は「取締役と共同して計算書類等を作成する」機関(374条1項・2項)であり、これが会計参与の最大の特徴です。単なる監査・確認ではなく「共同作成」であるため、計算書類の正確性に対し会計参与も連帯して責任を負う立場になります。資格は会計専門家(公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人)に限定されており(333条1項)、取締役・使用人を兼ねることはできません(333条3項)。
各選択肢の誤りの核心
- イ: 会計参与の設置は取締役会設置会社における監査役設置義務に影響しません。取締役会設置会社には原則監査役(または監査等委員会・指名委員会等)が必要(327条1項・2項)。
- ウ: 誤り。大会社の定義は「最終事業年度に係る貸借対照表上、資本金の額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社」(会社法2条6号)です。ウの「資本金100億円以上または負債100億円以上」は基準額が誤りです。大会社には会計監査人の設置義務があり(328条1項・2項)、加えて監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社も会計監査人の設置が義務(327条5項)。なお「会計監査人は公認会計士または監査法人でなければならない」(337条1項)という後段は正しい記述です。
- エ: 会計監査人の選任・解任は「監査役(会)の同意」を要します(344条1項)。「反対意見を付することができる」という表現が弱すぎます(同意権は選任を左右する実効的な権限)。
- オ: 会計参与と会計監査人は独立した機関であり、両方を設置することも、いずれか一方のみを設置することも可能です(326条2項・一定の義務設置以外は任意)。
【理論的背景:会計参与制度の立法背景と中小会社への意義】
会計参与は2005年の会社法制定時に新設された機関です。背景には「中小会社の計算書類の信頼性確保」というニーズがあります。大会社では会計監査人(公認会計士・監査法人)による監査が義務付けられていますが、中小会社にはそのような外部監査義務がなく、計算書類の品質が低い場合がありました。そこで「取締役と共同して計算書類を作成する」専門家(会計参与)を任意設置可能な機関として導入することで、中小会社の計算書類の信頼性を高め、金融機関への信用力向上・融資条件の改善等に役立てることを意図しています。実務では、会計参与を設置することで金融機関との関係で「会計参与報告書」を活用できるケースがあります。
【実務・条文構造:会計参与と会計監査人の比較表】
| 項目 | 会計参与 | 会計監査人 |
|---|---|---|
| 資格 | 公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人 | 公認会計士・監査法人のみ |
| 主な機能 | 取締役と「共同作成」(374条) | 計算書類等の「監査」(396条) |
| 設置義務 | なし(任意) | 大会社・委員会型等では義務 |
| 任期 | 2年(定款で10年まで非公開会社で可) | 1年(毎年再任確認が原則) |
| 選任機関 | 株主総会(329条1項) | 株主総会(329条1項・監査役会等の同意が必要・344条) |
| 独立記録の保管 | 会計参与は計算書類等の独自保管義務(378条1項・5年間) | なし(会社が保管) |
| 報酬決定 | 定款または株主総会決議(379条1項) | 定款または株主総会決議(399条1項)・監査役(会)等の同意 |
【試験での位置づけ:機関設計の選択肢と機関間の関係】
行政書士試験では「どの機関を組み合わせて設置できるか」という機関設計の問題も出題されます。会社法の機関設計の原則は「株主総会+取締役」の二機関が基本で、他の機関(取締役会・監査役等)は法定義務または任意で設置します。委員会型(指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社)では監査役を置けない一方、会計監査人の設置が義務付けられます(327条5項)。会計参与はいずれの機関設計でも任意に設置可能です。会計監査人の選任議案・解任・不再任の議案については、監査役(複数なら各々)・監査役会・監査等委員会・監査委員会が同意権を持つ(344条1項)という点が頻出の引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 会計参与が「取締役と共同して」計算書類を作成することから、取締役(または取締役会)の意向に左右されないよう、会計参与は独自に計算書類等を保管する義務を負います(378条1項)。株主・債権者は会計参与に直接計算書類の閲覧等を求めることができます(378条2項)。
- ウ: 大会社への会計監査人義務に加え、指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社も会計監査人の設置が義務(327条5項・399条の2第1項)。大会社でなくとも委員会型設置会社は義務があります。
- エ: 344条の同意権は「監査役(会・複数なら各々の監査役)が選任議案の内容に同意しなければ当該議案を提出できない」という強力な拒否権です。単なる「意見付記」ではなく、選任自体のブロックが可能な実効的な権限です。
【根拠条文】
会社法 第328条(大会社における機関設置義務)
会社法 第333条第1項(会計参与の資格)
会社法 第337条第1項(会計監査人の資格)
会社法 第344条第1項(会計監査人の選任等に関する監査役の関与)
会社法 第374条第1項・第2項(会計参与の権限)
会社法 第378条第1項・第2項(会計参与の計算書類の保管・開示)
【補足】
会計参与は「共同作成」(税理士も可)、会計監査人は「監査」(公認会計士・監査法人のみ)という機能の違いが最重要。344条の選任同意権は試験でよく問われる。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第326条(機関の設置)・第333条(会計参与の資格)・第337条(会計監査人の資格)・第328条(大会社における機関) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。