商法・会社法43持分会社(合名・合資・合同会社

行政書士 商法・会社法 問43:持分会社(合名・合資・合同会社

持分会社(合名会社・合資会社・合同会社)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 合名会社の社員は全員が無限責任社員であり、会社の債務について直接・連帯・無限の責任を負うところ、会社債権者は、会社財産による弁済の有無を問わず、いつでも直ちに各社員に対して債務の全額の弁済を請求することができる。
  • 合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方を置かなければならず、合名会社または合同会社への変更は、定款変更により社員の種類を変更することで行うことができる。正答
  • 合同会社の社員は全員が有限責任社員であり、会社の設立にあたって出資の全額の払込みが必要とされ、設立後も社員の出資義務の履行がない場合は設立無効となる。
  • 持分会社は、原則として各社員が業務を執行する権限を持ち、定款に別段の定めがある場合を除いて、各社員が会社を代表する権限を持つ。
  • 合同会社は内部自治(社員間の契約自治)の自由度が高く、定款によって利益・損失の分配割合を出資比率と異なる割合で定めることはできない。
正答:合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方を置かなければならず、合名会社または合同会社への変更は、定款変更により社員の種類を変更することで行うことができる。

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持分会社の基本的な特徴に関する問題です。イが正しい。合資会社は「無限責任社員と有限責任社員の両方を持つ」ことがその本質的な定義であり(575条1項・576条3項)、これがなくなると合資会社ではなくなります。無限責任社員のみになれば合名会社、有限責任社員のみになれば合同会社への変更となります(639条)。これはイの記述と一致します。アは誤り:合名会社(無限責任)社員の責任は「補充的(二次的)」責任であり、会社財産で会社の債務を完済できない場合、または会社財産への強制執行が効を奏しなかった場合に初めて生じます(580条1項1号・2号)。「会社財産による弁済の有無を問わずいつでも直ちに全額請求できる」とするアは補充性を否定する点で誤りです。ウは誤り:出資の全額払込みが必要なのは合同会社(578条)に関する正しい内容ですが「設立無効となる」の部分が不正確。エは誤り:定款に別段の定めがない場合に各社員が代表権を持つが、定款で特定の社員を業務執行社員とした場合はその者が代表(599条)。オは誤り:合同会社は出資比率と異なる割合で利益分配を定めることができます(622条1項・定款自治)。

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イが正答の根拠(合資会社の定義と変更の仕組み)

合資会社は「無限責任社員と有限責任社員の双方を有する」持分会社(576条3項)です。この二種類の社員の共存が合資会社の本質であり、どちらかがいなくなると合資会社ではなくなります(577条:社員の種類が変わった場合の種類変更)。

639条は「合資会社から合名会社または合同会社への変更」を定款変更によって行えると規定しており、これはイの「定款変更により社員の種類を変更することで行うことができる」という記述と合致します。

各選択肢の誤りの核心

  • ア: 合名会社の社員の責任(580条1項)は「直接・連帯・無限」の責任ですが、同時に「補充的(二次的)」責任でもあります。すなわち、①会社財産で会社の債務を完済できない場合(1号)、または②会社財産への強制執行が効を奏しなかった場合(社員が会社の弁済資力と強制執行の容易性を証明したときを除く・2号)に限り、社員が弁済責任を負います。したがって「会社財産による弁済の有無を問わず、いつでも直ちに各社員に全額請求できる」とするアは、この補充性を否定する点で誤りです(直接責任とは「債権者が社員に直接請求できる」という意味であり、補充性の要件を不要とする意味ではありません)。
  • ウ: 合同会社の設立には出資の全額払込みが必要(578条)という点は正しいですが、「履行がない場合は設立無効」という効果の記述は不正確。設立無効については設立の無効の訴え(828条1項1号)によりますが、出資未履行の場合は設立無効とはならず、社員への履行請求や除名等の問題となります。
  • エ: 正しくは「定款に別段の定めがない場合に各社員が業務執行・代表権を持つ」(590条1項・599条1項)。定款で業務執行社員を定めた場合はその者のみが業務執行・代表権を持ちます(591条1項・599条3項)。
  • オ: 621条(定款に別段の定めがない場合は出資比率に応じた分配)・622条1項(定款で別段の定めが可能)により、出資比率と異なる割合を定めることが可能です。
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【理論的背景:持分会社の人的会社としての性格と定款自治の広さ】

持分会社(合名・合資・合同会社)は、株式会社と異なる「人的会社」の性格を持ちます。株式会社が「資本」の集まりを中心とした物的会社であるのに対し、持分会社は「社員(人)」の結合を中心とした会社です。このため持分会社の規律は、社員間の「契約自治」(定款による合意)が最大限尊重され、会社法の規定の多くが「別段の定めがあれば従う」という任意規定として設けられています。特に合同会社(Japanese LLC)は、アメリカのLLC(有限責任会社)を参考に2005年の会社法制定時に新設され、有限責任でありながら定款自治の自由度が高い形態として、スタートアップ企業や共同事業体に利用されています。

【実務・条文構造:三種の持分会社の比較】

| 項目 | 合名会社 | 合資会社 | 合同会社 |

|---|---|---|---|

| 社員の種類 | 無限責任社員のみ | 無限責任社員+有限責任社員 | 有限責任社員のみ |

| 対外責任 | 直接・無限(580条1項) | 無限責任社員:直接・無限/有限責任社員:出資額限度(580条2項) | 出資額を限度(580条2項) |

| 設立時の出資払込 | 不要(金銭以外・信用・労務出資も可、設立時全額払込義務なし) | 不要(信用・労務出資も可、設立時全額払込義務なし) | 設立の登記時までに全額払込・全部給付が必要(578条) |

| 業務執行 | 各社員(定款で業務執行社員を定めた場合はその者) | 同左 | 同左 |

| 利益分配 | 出資比率による(定款で変更可・621条・622条) | 同左 | 同左 |

【試験での位置づけ:持分会社の変更・解散・清算の頻出ポイント】

行政書士試験の持分会社関連では「持分の譲渡」「社員の退社」「組織変更」が頻出です。

持分の譲渡:持分会社の社員は、他の社員全員の承認がなければ持分の全部または一部を他人に譲渡することができません(585条1項)。これは人的会社として社員の個性が重視されるためです(株式会社の株式の自由譲渡原則と対照的)。

社員の退社:任意退社(606条)・法定退社(607条)・除名(859条)。社員が退社すると、会社は退社した社員に「持分の払戻し」(611条)を行います。

持分会社の株式会社への組織変更:781条以下の組織変更手続(総社員の同意等が必要)によって持分会社から株式会社に組織変更できます(このとき株主となる者を決め、設立時の種々の手続が必要)。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 580条1項は、無限責任社員が連帯して会社の債務を弁済する責任を負う場合として、①会社財産をもって会社の債務を完済することができない場合(1号)、②会社財産に対する強制執行がその効を奏しなかった場合(社員が、会社に弁済の資力があり、かつ強制執行が容易であることを証明したときを除く)(2号)を定めています。つまり社員の責任は、第一次的に会社財産による弁済を尽くしてもなお不足する場合に生じる「補充的・第二次的責任」です。アはこの補充性を正確に述べており、その意味で正しい説明です(誤りはアではなく、本問の他の肢にはなく、正答は別途イ)。なお無限責任社員に対しても、上記1号・2号の要件を満たさない限り直接の弁済請求はできない点に注意。
  • イ: 639条1項(社員の種類の変更による持分会社の種類変更)は実務上、合資会社から有限責任社員が退社して無限責任社員のみになった場合の合名会社への変更等に適用されます。変更の登記が必要(915条)。
  • オ: 合同会社の定款自治の典型が「利益分配比率の自由設定」(622条1項)です。たとえば出資額が同じ二人のうち、業務を担当する社員に多くの利益分配を定めることが可能です。これはスタートアップの共同出資において「資本と労働の分離」を可能にします。

【根拠条文】

会社法 第575条第1項・第576条第3項(持分会社の定義・合資会社の定義)

会社法 第578条(設立時出資の履行義務)

会社法 第580条第1項・第2項(社員の責任)

会社法 第585条第1項(持分の譲渡制限)

会社法 第599条第1項・第3項(持分会社の代表)

会社法 第621条・第622条第1項(利益分配・損失分担の割合)

会社法 第639条(持分会社の種類変更)

【補足】

合資会社は「無限責任社員+有限責任社員の両方必須」(576条3項)。種類が変わると639条で別の持分会社に変更。合同会社の定款自治の広さ(利益分配比率の自由設定・622条)も覚える。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第576条(持分会社の定款)・第580条(社員の責任)・第590条(業務の執行)・第599条(持分会社の代表) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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