商法・会社法44合同会社の設立・内部関係・業務執行

行政書士 商法・会社法 問44:合同会社の設立・内部関係・業務執行

合同会社に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 合同会社は一人の社員(一人合同会社)で設立・運営することが可能であり、法人も社員になることができる。
  • 合同会社の社員全員が業務を執行するのが原則であるが、定款で業務執行社員を定めた場合は、その者のみが業務を執行する権限を持つ。
  • 合同会社の社員は、定款に別段の定めがない限り、各社員が会社を代表する権限を有するが、業務執行社員が定款で定められた場合は業務執行社員が代表社員となる。
  • 合同会社から株式会社への組織変更は、組織変更後の株式会社の定款・役員等を定めた上で、会社法の定める組織変更の手続(総社員の同意等)によって行うことができる。
  • 合同会社においては、社員が新たに加入する場合、必ず既存社員全員の同意が必要であり、定款で異なる要件を定めることはできない。正答
正答:合同会社においては、社員が新たに加入する場合、必ず既存社員全員の同意が必要であり、定款で異なる要件を定めることはできない。

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合同会社の運営に関する問題です。オが誤りです。合同会社への社員の新規加入については、定款の変更が必要ですが(604条1項)、604条2項は「定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款を変更することができる」と定めています。つまり定款で加入の要件(例:過半数の社員の同意で足りる)を別に定めることができ、「必ず全員の同意が必要・定款で変更不可」というオの記述は誤りです。ア(一人合同会社・法人社員の可能性)・イ(業務執行の原則と定款による変更)・ウ(代表権の原則)・エ(株式会社への組織変更)はいずれも正しい内容です。

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オが誤りの根拠(604条の定款自治)

604条1項:持分会社が新たな社員を加入させる場合は、定款を変更することで行います(加入 = 定款変更)。定款変更の要件(604条2項):原則として「総社員の同意」で定款変更を行いますが、「定款に別段の定め」がある場合はその定めに従うことができます。

つまり定款で「新たな社員の加入には社員の3分の2以上の同意があれば足りる」等と定めることが可能であり、「必ず全員の同意が必要であり定款で変更できない」とするオは誤りです。

合同会社の人的会社としての特性(社員の個性を重視)は「社員全員同意を要求する」方向に働きますが、定款自治の観点から「緩和」が許容されています。

他の選択肢の確認

  • ア: 正しい。会社法は「一人持分会社」を認めており(641条4号が社員が欠けた場合の解散事由であり、逆に言えば一人社員の存在を前提とする)、法人も持分会社の社員になれます(575条2項等には制限なし)。
  • イ: 正しい。590条1項・591条1項。
  • ウ: 正しい。599条1項(各社員が代表)・599条3項(業務執行社員を定めた場合はその者が代表)。ただし代表社員の定めは定款の定めが必要(599条3項)。
  • エ: 正しい。781条(組織変更の手続)・782条(組織変更計画の内容)・総社員の同意(583条1項・781条4項等・組織変更手続の一部)。
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【理論的背景:合同会社とLLCの比較・日本での利用実態】

合同会社(LLC: Limited Liability Company in Japan)は2005年の会社法制定時に新設されました。有限責任でありながら定款自治の自由度が高く、設立コストが安い(公証人の定款認証不要・資本金1円可・決算公告義務なし)という特徴があります。外資系企業の日本法人・スタートアップの共同事業体・特定目的投資ビークル(SPC)等に利用されています(例:Apple Japan合同会社・Amazon Japan合同会社等の外資系企業の多くが合同会社形態)。

日本のLLCは「定款で内部関係を自由に設計できる」という点でアメリカのLLCに類似していますが、日本の合同会社は「持分の自由譲渡」(株式のような流動性)がなく(585条1項の譲渡制限)、「社員の個性」を重視する人的会社の性格を残しています。

【実務・条文構造:合同会社の設立手続と株式会社との比較】

合同会社の設立は株式会社に比べて手続が簡素です。

| 手続 | 合同会社 | 株式会社(公証人認証不要な非公開会社) |

|---|---|---|

| 定款認証 | 不要(公証人の認証不要) | 必要(公証人の認証が必要・30〜50万円程度) |

| 出資 | 設立時に全額払込必要(578条) | 払込取扱機関への払込み |

| 最低資本金 | 制限なし(1円可) | 制限なし(1円可) |

| 業務執行 | 社員が直接行う(取締役不要) | 取締役が必要 |

| 決算公告 | 義務なし(大会社を除く) | 義務あり(440条) |

| 設立費用 | 安い(登録免許税6万円) | 高い(公証人費用+登録免許税) |

【試験での位置づけ:持分会社の解散事由と清算の頻出論点】

641条の持分会社の解散事由(7つ)は頻出です。①定款で定めた存続期間の満了、②定款で定めた解散事由の発生、③総社員の同意(株式会社の「特別決議」と異なり全員の同意)、④社員が欠けた(一人になって解散というわけではなく「欠けた」=社員ゼロ)こと、⑤合併(合併後消滅する場合)、⑥破産手続開始決定、⑦裁判所の命令・決定。

③「総社員の同意」という解散要件は、持分会社の人的色彩の強さを示します(一人でも反対があれば解散できない)。対して株式会社の解散は特別決議(309条2項11号)で足ります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 一人合同会社の典型例として、個人事業主が法人化する際に「一人で合同会社を設立する」ケースがあります。社員が死亡・除名等によって欠けた場合は解散事由になりますが(641条4号)、一人の状態そのものは適法です。法人が社員になる場合、法人は業務執行社員の職務を「代表者(自然人)」が行います(598条1項)。
  • ウ: 599条3項は「業務執行社員のうちから定款の定めによって代表社員を定めることができる」とします。定款で特定の業務執行社員を「代表社員」と定めた場合は、その者のみが対外的に会社を代表します。定めがない場合は業務執行社員が各自代表(599条1項)。
  • エ: 持分会社から株式会社への組織変更(781条以下):①組織変更計画を作成(781条1項)、②総社員の同意(583条1項の定款変更に相当する全員同意)、③債権者保護手続(781条2項・802条)、④株式会社の設立に準じた登記。組織変更後は株式会社として存続し(新たな設立ではない)、組織変更前の権利義務は組織変更後の会社に承継されます。

【根拠条文】

会社法 第578条(社員の出資の全額払込義務・設立時)

会社法 第585条第1項(社員の持分の譲渡制限)

会社法 第590条第1項・第591条第1項(業務執行の原則・定款による業務執行社員の定め)

会社法 第599条第1項・第3項(代表社員・定款による代表社員の定め)

会社法 第604条第1項・第2項(社員の加入・定款変更の要件)

会社法 第641条(持分会社の解散事由)

会社法 第781条(持分会社から株式会社への組織変更の手続)

【補足】

604条2項「新社員加入は原則総社員同意だが定款で別段の定め可」がオの誤りの核心。合同会社の設立コストの低さ(定款認証不要・640条)と持分の譲渡制限(585条1項)の対比を理解する。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第604条・第607条(社員の加入・退社)・第641条(持分会社の解散事由)・第781条(持分会社の株式会社への組織変更) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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