行政書士 憲法 問27:国政調査権・議院の権限・証人喚問
国政調査権(憲法62条)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア国政調査権は国会(両院合同)の権限であり、衆議院と参議院が共同して行使するものである。各議院が単独で国政調査権を行使することは認められない。
- イ国政調査権の行使として、各議院は証人を議院に招致して証言を求めることができるが、証人が虚偽の証言をしても刑事罰を科すことはできない。
- ウ国政調査権は、立法補助機能・行政監督機能を有するが、純粋に司法権の作用(係属中の裁判事項)と直接競合する形で証人喚問・記録提出を命じることについては、司法権の独立の観点から制限を受ける。正答
- エ国政調査権の行使として各議院が証人に証言を求める場合、証人には宣誓義務はなく、自己の意思で任意に証言するか否かを決定する自由が保障される。
- オ国政調査権は、両議院がそれぞれ単独で行使できる権限であり、内閣・行政機関のみならず、裁判所・検察に対しても制約なく行使することができる。
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国政調査権(憲法62条)は「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と規定する、各議院(衆議院・参議院それぞれ単独)の権限です。アの「両院合同のみ行使可能」は誤りです。証人が虚偽の証言をした場合には議院証言法により偽証罪(刑事罰)が科されます(イが誤りである根拠)。国政調査権は司法権に対しても及ぶことがありますが、係属中の裁判事項に直接競合する形での行使は司法権の独立の観点から制限があります(ウが正答)。証人には議院証言法に基づく宣誓義務があります(エが誤りである根拠)。
国政調査権の法的性質について、学説には①補助的権能説(立法・行政監督等の国会本来の権能を補助するための手段的権能)と②独立権能説(国政全般を調査する独自の権能)があり、補助的権能説が通説です。補助的権能説の帰結として、国会本来の職能(立法・行政監督・国政監視)に関連しない調査は許されないことになります。国政調査権の行使にあたり証人を喚問する場合は、議院証言法(議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律)に基づき、証人に宣誓を求め虚偽証言には偽証罪(刑事罰)が科されます(イ・エが誤りである根拠)。司法権との関係(ウの正答根拠)については、①係属中の具体的な裁判事項について、司法権の判断に直接影響を及ぼすような調査は司法権の独立(76条・78条)の観点から許されないとされています(補助的権能説から当然の帰結)。ただし、裁判が確定した事件の事後的調査や、立法資料の収集としての司法制度一般の調査は許容されます。オは「制約なく行使できる」としている点が誤りです(裁判所・検察に対して係属中の事件で直接競合する調査は許されない)。
【理論的背景】
憲法62条は「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と規定しています。この「各々」という文言から、衆議院・参議院それぞれが単独で行使できる権能であることが明らかです(アの「両院合同のみ」が誤りである根拠)。国政調査権の法的性質については、補助的権能説(多数説)と独立権能説が対立します。補助的権能説は「国政調査権は国会の諸権能(立法・行政監督・国政監視等)を補助・実効化するための手段的権能」と解し、国会の職能と無関係な調査は許されないとします。独立権能説は「国政全般を調査する独立した権能」と解し、より広範な調査を許容します。実務・判例は補助的権能説に近い立場をとっています。
【実務・条文構造】
国政調査権の限界(制限を受ける場面)を整理します。①司法権との関係:係属中の刑事事件や民事事件について、裁判所が審理中の事実問題・法的評価に直接介入する形での調査は、司法権の独立(76条3項・裁判官の職権の独立)を侵害するとして許されないとされています(ウが正答の根拠)。ただし立法政策のための司法制度調査・確定事件の事後的調査は許容。②捜査権との関係:検察の捜査中の事件について、捜査の機密に影響を与えるような調査は、捜査権の適正な行使を損なうとして制限を受けます。③プライバシーとの関係:個人のプライバシーに関わる事項については、調査目的に必要な範囲を超えた調査は許されません。議院証言法の主要事項:①宣誓の義務(証人は宣誓しなければならない・エが「宣誓義務はない」としている点が誤り)、②虚偽証言への刑事罰(偽証罪)の適用(イが「刑事罰を科すことができない」としている点が誤り)、③正当な理由のない証言拒否への制裁。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での国政調査権の出題ポイントは次の4つです。①主体:各議院(衆議院・参議院それぞれ単独)であり、両院合同ではない。②手段:証人の出頭・証言要求、記録提出要求。③証人の義務:宣誓義務あり・虚偽証言は偽証罪(刑事罰)の対象。④限界:司法権の独立(係属中の裁判への直接介入禁止)・検察の捜査権(捜査機密への干渉禁止)・プライバシーへの配慮。「国政調査権は万能ではなく、司法権・捜査権との調整において制限を受ける」という点が、本問のウが正答であることを裏付けています。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。「両議院は各々」(62条)という文言から、衆議院・参議院それぞれが単独で行使する権能。両院協議会と混同しないこと。
- イ: 誤り。議院証言法により、虚偽証言をした証人には偽証罪(拘禁刑等)が科される。証人には宣誓義務もある(エとも関連)。
- ウ: 正答。司法権の独立(76条)の観点から、係属中の裁判事項に直接競合する形での国政調査権の行使は制限を受ける。補助的権能説の帰結として重要。
- エ: 誤り。議院証言法は証人に宣誓を義務付けており(任意ではない)、宣誓した上での虚偽証言は偽証罪となる。
- オ: 誤り。「制約なく行使できる」は誤り。裁判所・検察に対しても、係属中の事件への直接介入は司法権の独立・捜査権の適正行使の観点から制限を受ける。
【根拠条文】
日本国憲法 第62条(国政調査権)、第76条第3項(裁判官の職権の独立)
議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)
【補足】
国政調査権の「主体=各議院単独」「手段=証人喚問・記録提出」「限界=司法権の独立・捜査権」を整理。議院証言法による宣誓義務・偽証罪も必須知識。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第62条(国政調査権)、第76条(司法権の独立) 参照: 議院証言法(証人の宣誓・証言等に関する法律) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。