行政書士 憲法 問30:衆議院の解散・7条解散・69条解散
衆議院の解散に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア憲法69条は、衆議院が内閣不信任の決議案を可決した場合または信任の決議案を否決した場合に、内閣は30日以内に衆議院を解散するか総辞職しなければならないと規定している。
- イ衆議院解散の要件は憲法69条の場合(不信任決議等)に限られており、それ以外の理由で内閣が衆議院を解散することは一切許されない。
- ウ憲法7条(天皇の国事行為)にいう「衆議院を解散すること」は、形式的・儀礼的な天皇の行為にとどまり、実質的な解散決定権は内閣にあると解するのが通説であり、69条の場合以外にも内閣の助言と承認に基づく解散が許容されると解されている。正答
- エ衆議院が解散された後は、参議院も同時に閉会となるため、国会の機能は完全に停止し、緊急の必要が生じても参議院が単独で集会することはできない。
- オ衆議院が解散されてから総選挙が行われるまでの間、内閣は総辞職しなければならず、選挙管理内閣として最小限の職務を行うにとどまる。
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衆議院の解散については、憲法69条(不信任決議等に基づく解散)のほかに、憲法7条(天皇の国事行為)を根拠とする7条解散が通説・実務で認められています。内閣の助言と承認を経て天皇が「衆議院を解散する」行為(7条3号)は形式的なもので、実質的な解散決定権は内閣にあるというのが通説であり、7条解散(政策選択的解散)は現行憲法下で慣行として定着しています(ウが正答)。イは「69条の場合に限る」としている点が誤りです。エは「参議院も同時に閉会・緊急集会もできない」としている点が誤りです(参議院の緊急集会が54条2項で認められています)。オは「解散後に内閣が総辞職する」としている点が誤りです(解散後の総辞職は総選挙後・新議会召集時です)。
衆議院解散の根拠と手続を整理します。①69条解散(必然的解散):衆議院が不信任決議案を可決または信任決議案を否決した場合、内閣は10日以内に①衆議院解散または②総辞職のいずれかを選択しなければなりません(アは「30日以内」としている点が誤り。正しくは10日以内)。②7条解散(政策選択的解散):憲法7条3号「内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」における「衆議院を解散すること」を根拠に、内閣が政策判断として衆議院を解散することができると解されています(ウが正答の根拠)。イは「69条の場合に限られる」としており、7条解散を否定する見解(少数説)の立場ですが、通説・実務(歴代内閣のほぼすべてが7条解散を行使)はこれを認めており、行政書士試験では通説を正しいとして出題されます。エについて、衆議院の解散・総選挙の間(40日以内に行われる総選挙から30日以内に特別国会を召集)に緊急の必要がある場合には、参議院の緊急集会(54条2項)が開催されます(エが「緊急集会もできない」としている点が誤り)。オについて、内閣が総辞職するのは総選挙後の初めての国会召集の際です(71条)。解散中も内閣はそのまま職務を続行します(オが「解散後に直ちに総辞職」としている点が誤り)。
【理論的背景】
衆議院解散の根拠をめぐっては、①69条限定説と②7条解散許容説が対立してきました。69条限定説は「解散という重大な権限行使には憲法上の明示的根拠が必要であり、69条のみが解散根拠」とします。7条解散許容説(通説・実務)は「7条3号の『衆議院を解散すること』は内閣の助言と承認(3条・4条)に基づく行為であり、実質的な解散決定権は内閣にある。議院内閣制の本質から内閣は議会との信任関係が変化したと判断した場合に民意を問う(解散)ことができる」とします。高度な政治問題であるため、警察予備隊事件(最大判昭27.10.8)の統治行為論が適用され、裁判所は解散の実質的判断には立ち入らないとされています(苫米地事件・最大判昭35.6.8)。
【実務・条文構造】
苫米地事件(最大判昭35.6.8)は、昭和27年の7条解散の効力を争った事件で、最高裁は「衆議院の解散は、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある行為であって、裁判所の審査権の外にある(統治行為論)」と判示し、解散の実体的当否については判断しませんでした(エの「解散そのものを違憲と断じる」アプローチを裁判所は採らないという判例の立場)。この判例からも、7条解散が実務上認められていることが示唆されます。参議院の緊急集会(54条2項)について整理します:衆議院が解散されたとき、国に緊急の必要がある場合には内閣は参議院の緊急集会を求めることができます。緊急集会でとられた措置は臨時のものとして効力を持ちますが、次の国会召集後10日以内に衆議院の同意がなければ効力を失います(エが「参議院が集会できない」としている点は誤り)。内閣の総辞職(71条)について、内閣が総辞職するのは①衆議院で不信任決議が可決され解散もしない場合、②衆議院議員総選挙後の初めての国会召集時(両者)、③内閣総理大臣が欠けたとき、の場合です。解散直後の総辞職は規定されておらず(オが誤りである根拠)、解散から総選挙・特別国会召集まで内閣はそのまま職務を継続します。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での衆議院解散の出題ポイントは次の4つです。①7条解散:通説・実務が認める。69条限定説は少数説。②69条の要件:不信任可決または信任否決から10日以内に解散または総辞職。③解散後の参議院緊急集会(54条):衆議院解散中に緊急の必要があるときに内閣が求めることができる。④解散後の内閣総辞職:解散後ではなく総選挙後の初の国会召集時(71条)。これらの数字(10日・40日・30日・10日)は混同しやすいため表で整理して覚えることが有効です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。69条は不信任可決・信任否決の場合に内閣は「10日以内」に解散か総辞職を選択しなければならないと規定しており、「30日以内」とするアは期間を誤っている。
- イ: 誤り。7条解散は通説・実務で認められており、「69条の場合に限られる」という69条限定説は少数説。
- ウ: 正答。7条3号を根拠とする内閣の助言と承認に基づく解散(7条解散)は通説・実務が認める。天皇の行為は形式的・儀礼的なものにとどまり実質的決定権は内閣にある。
- エ: 誤り。衆議院解散中は参議院が閉会(54条1項前段「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる」)となるが、緊急の必要がある場合には参議院の緊急集会(54条2項)が開催される(内閣が求めることができる)。
- オ: 誤り。内閣の総辞職は解散後ではなく総選挙後の初めての国会召集時(71条)。解散中も内閣はそのまま職務を継続(選挙管理内閣的運用であることは事実だが、法的には総辞職まで内閣の権能は維持される)。
【根拠条文】
日本国憲法 第7条第3号(天皇の国事行為・衆議院の解散)、第54条(参議院の緊急集会)、第69条(不信任と解散・総辞職)、第71条(内閣総辞職後の職務続行)
【参照判例】
苫米地事件(最大判 昭和35年6月8日):高度な政治問題として違憲審査権の外(統治行為論)
【補足】
「7条解散=通説が認める」「解散後の内閣総辞職は総選挙後の国会召集時(解散直後ではない)」「衆議院解散中の参議院緊急集会(54条)」の3点を確実に押さえること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第7条(天皇の国事行為)、第54条(参議院の緊急集会)、第69条(内閣不信任と解散・総辞職) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。