行政書士 憲法 問29:内閣の権限・閣議・行政権の帰属
内閣の権限及び組織に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア憲法65条は「行政権は、内閣に属する」と規定しているが、これは内閣が行政権を直接執行することを意味し、各省庁・外局等の行政機関が独自の権限をもって行政を行うことは憲法上認められない。
- イ内閣は行政権の主体として閣議により意思決定を行うが、閣議の議決方法は憲法上「出席閣僚の過半数による多数決」と明文で定められており、反対する閣僚がいても多数決で閣議決定を成立させることができる。
- ウ憲法73条に列挙されている内閣の職権(法律の誠実執行・外交処理・条約締結・予算案作成等)は、内閣の権限を「限定列挙」したものであり、これ以外の権限を法律で内閣に付与することは憲法上許されない。
- エ政令は内閣が制定する命令であり(憲法73条6号)、法律の委任があればその委任の範囲内で罰則を設けることができるが、法律の委任なしに政令で罰則を設けることはできない。正答
- オ内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名され天皇に任命されるが(憲法67条・6条)、国務大臣については国会議員の中から選任しなければならず、国会議員でない者を国務大臣に任命することは許されない。
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内閣の権限に関して、憲法73条6号は政令について「この憲法及び法律の規定を実施するために政令を制定すること。但し、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」と規定しています。エの「法律の委任なしに政令で罰則を設けることはできない」は正しい内容です。アは「各省庁が独自の権限で行政を行うことが認められない」とする点が誤りです(行政組織法(内閣法・国家行政組織法等)により各省庁に権限が委任されています)。オは「国務大臣は国会議員でなければならない」とする点が誤りです(過半数が国会議員であれば足り、残りは民間人でもよい)。イは「閣議の議決方法は憲法上『出席閣僚の過半数による多数決』と明文で定められている」としている点が誤りです。閣議の議事については憲法に明文規定はなく、慣行として全員一致によるとされています(多数決と明文化されているわけではありません)。エが正答です。
内閣に関する主要条文を整理します。①65条(行政権の帰属):「行政権は、内閣に属する」→ただし内閣は各省庁を通じて行政を執行するのが通常であり、各省大臣・外局等が法定の権限を行使することは65条に反しない(アが誤りである根拠)。②68条(国務大臣の任免):「内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない」→国務大臣の過半数が国会議員であれば足り、残りは民間人(国会議員以外の者)を任命できる(オが誤りである根拠)。68条2項では内閣総理大臣は任意に国務大臣を罷免できると規定(イの「罷免できる」部分は正しいが、選択肢全体の内容確認が必要)。③73条(内閣の職権):列挙されている職権は「例示列挙」(限定列挙ではない)と解されており、法律で内閣に権限を付与することも可能(ウが「限定列挙」としている点が誤りである根拠)。④73条6号(政令):政令には法律の委任がなければ罰則を設けられない(エが正答)。これは法律の留保・罰則法定主義の観点から重要な規定です。
【理論的背景】
内閣は行政権の主体(65条)として、各省庁・独立行政委員会等の行政機関を指揮監督しながら国政を運営します。内閣の意思決定機関は「閣議」であり、内閣法4条により全員一致が慣行的に要求されています。内閣総理大臣の地位については、戦前の「同輩中の首席」という位置づけから、現行憲法では「首長的地位」(66条1項・内閣総理大臣が内閣を代表する)が与えられており、国務大臣の任免権(68条)や閣議の主宰権を通じた強力なリーダーシップが制度的に保障されています。
【実務・条文構造】
各選択肢の条文上の根拠を精査します。アについて、65条の「行政権は内閣に属する」という命題は、行政権の最終的な帰属先を定めるものであり、内閣が「直接執行」することを意味しません。国家行政組織法・各省設置法により各省大臣に権限が分配され、内閣は総理大臣を通じた指揮監督権によって行政統一性を確保します。オについて、68条但書は「国務大臣の過半数は国会議員から選ばれなければならない」と規定しており、少数(過半数未満)の国務大臣は国会議員でない者から任命することが許容されています(「全員が国会議員でなければならない」という解釈は誤り)。ウについて、73条の列挙は「例示列挙」と解するのが通説であり、法律により内閣に付加的な権限を与えることも可能です(内閣府設置法等により内閣の所掌事務が拡充されています)。もし「限定列挙」と解すると、内閣の職務を列挙された7号以外に拡充する内閣府設置法等は全て違憲となってしまい、実務と相容れない解釈です。エについて、73条6号但書「政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」は、法律の委任なき政令への罰則設置を禁止しており、エの記述はこれを正確に再現しています(正答)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での内閣の権限に関する出題ポイントは次の4つです。①行政権(65条):内閣が「最終的な帰属先」であり、各省庁への権限委任は認められる。②国務大臣(68条):過半数が国会議員であれば足り、残りは民間人でも可。③政令(73条6号):法律の委任がなければ罰則設置不可。④内閣の職権列挙(73条):例示列挙(限定列挙ではない)。本問のエ(政令の罰則・法律の委任が必要)は行政書士試験でも行政法(命令の種類・法規命令)と絡めて出題されることが多く、確実に押さえるべき知識です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。65条は行政権の最終的帰属を内閣に定めるものであり、内閣が直接執行することまでは要求していない。国家行政組織法・各省設置法等により各省庁が権限を行使することは合憲。内閣は指揮監督権(72条)で統合。
- イ: 誤り。閣議の議事については憲法上の明文規定はなく、慣行として全員一致によるとされている。「憲法上『出席閣僚の過半数による多数決』と明文で定められている」とするイは、明文規定の存在と議決方法(多数決)の双方を誤っており誤り。
- ウ: 誤り。73条の列挙は例示列挙(限定列挙ではない)。「これ以外の権限を法律で付与することは許されない」という解釈は現行の内閣府設置法等と矛盾し誤り。
- エ: 正答。73条6号但書の文言どおり。法律の委任がなければ政令に罰則を設けることはできない(罰則法定主義・法律の留保の観点から重要)。
- オ: 誤り。68条但書「国務大臣の過半数は国会議員から選ばれなければならない」が正しい。「全員が国会議員でなければならない」という断定は68条の規定と異なる。
【根拠条文】
日本国憲法 第65条(行政権の帰属)、第68条(国務大臣の任免・過半数が国会議員)、第73条第6号(政令・罰則の委任必要)
国家行政組織法(各省庁への権限配分)
【補足】
「政令の罰則=法律の委任が必要」「国務大臣=過半数が国会議員で足りる(全員は不要)」「73条列挙=例示列挙」の3点が行政書士試験での頻出誤解ポイント。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本国憲法 第65条(行政権)、第73条(内閣の職権)、第73条第6号(政令) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。