行政書士 憲法 問34:地方自治・議会と長の関係・不信任議決・再議
地方公共団体の議会と長の関係に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア地方公共団体の長は、議会の議決(予算以外の議決)に対して異議がある場合は、20日以内に理由を示して再議に付することができるが(地方自治法176条1項)、再議においても3分の2以上の多数で同じ議決がなされた場合は、その議決が確定する。
- イ地方公共団体の議会は、長に対して不信任の議決を行うことができ、不信任議決が可決された場合は長は直ちに失職する。
- ウ地方公共団体の長は、議会から不信任の議決を受けた場合、10日以内に議会を解散しない限り、失職する。正答
- エ議会が長の不信任を議決した後に長が議会を解散し、その解散後の総選挙で再び選ばれた議会が再度不信任を議決した場合、長は10日以内に議会を解散するか失職するかを選択できる。
- オ地方公共団体の長は、議会が成立しないとき・議会が議決すべき事件を議決しないとき等の緊急の場合に、議会の議決を経ずに専決処分(長の専権による処分)を行うことができ、この専決処分は議会の承認を要しない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。
地方自治法178条は、議会が長の不信任を議決した場合の手続を定めています。長は不信任議決後10日以内に議会を解散することができ、解散しない場合は失職します(ウが正答)。イは「不信任議決で直ちに失職する」としている点が誤りです(解散する機会が10日与えられます)。エは「再度不信任議決があった場合に解散か失職かを選択できる」としている点が誤りです。再度不信任議決が可決されると長は自動的に失職します(二度目は解散の機会なし)。オは「専決処分は議会の承認を要しない」としている点が誤りです(専決処分後、長は次の議会に報告し承認を求めなければなりません)。アは再議に付すことができる期間を「20日以内」としている点が誤りです。地方自治法176条1項では、長は議決の送付を受けた日から「10日以内」に再議に付すことができます(再議で出席議員の3分の2以上の同意で同じ議決がされれば確定するという後段は正しい)。正答はウです。
地方公共団体の議会と長の関係は、国会と内閣の議院内閣制と類似した構造をもちますが、内容が異なる部分があります。重要な手続を整理します。①再議(176条1項):長は議会の議決に異議がある場合、議決後10日以内に再議に付することができます(ア・「20日以内」が誤り。正しくは10日以内)。再議において出席議員の3分の2以上の多数で同じ議決をしたときはその議決が確定します(アの再議の結果確定の説明部分は正しい)。②不信任議決と解散・失職(178条):議会が長に対する不信任議決を行うには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の同意が必要です。不信任議決後、長は10日以内に議会を解散できます(ウが正答の根拠)。解散しない場合は失職します(イが「直ちに失職」としている点が誤り・10日間の猶予があります)。③解散後の再議決(178条3項):解散後の選挙による議会が再び不信任を議決した場合(過半数の同意で足りる・要件が緩和)、長は自動的に失職します(エが「再度解散か失職かを選択できる」としている点が誤り)。④専決処分(179条):緊急の必要がある場合に長が議会の議決なしに処分を行う制度ですが、処分後に議会に報告し承認を求めなければなりません(オが「承認を要しない」としている点が誤り)。
【理論的背景】
地方公共団体の議会と長の関係は「二元代表制」(議会も長も住民が直接選挙する)と「議院内閣制的要素」(議会が長を不信任でき、長が議会を解散できる)の組み合わせという独特の制度設計です。国の議院内閣制(内閣の連帯責任・衆議院の解散と不信任の連動)と比較して、地方自治では「長の直接選挙」という要素が加わることで、不信任・解散の手続に独自のルールが設けられています。
【実務・条文構造】
178条の手続を時系列で精確に整理します。第1段階:議会が長に対する不信任議決を行う(要件:議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上が賛成)。第2段階:不信任議決を受けた長は、議決後10日以内に議会を解散することができます(ウが正答の根拠)。この10日間解散しなければ、長は失職します(イが「直ちに失職」としている点が誤り)。第3段階:長が議会を解散した場合、解散後の総選挙により新しい議会が成立します。第4段階:新しい議会が(最初の議会召集日から)再び不信任議決を行った場合(要件:出席議員の過半数の賛成・要件が最初より緩和)、長は10日以内に解散するか失職するかを選べるのではなく、自動的に失職します(エが「再び解散か失職かを選択できる」としている点が誤り)。これは「一度民意を問うて(選挙後の議会で)なお不信任ならば長は辞するべき」という制度趣旨からの帰結です。再議(176条)については、長が議会の議決に異議を申し立てる権限(拒否権的機能)として重要です。一般の議決には10日以内の再議付与が可能で、再議において3分の2以上の多数で同じ議決がなされた場合は確定します(アは「20日以内」と誤記しており誤り。正しくは「10日以内」)。専決処分(179条・180条)には義務的専決(緊急事態で議会が招集できない場合・179条)と任意的専決(議会があらかじめ指定した軽微事項・180条)の2種類があります。義務的専決(179条)は議会への報告・承認が必要です(オが「承認を要しない」としている点が誤り)。
【試験での位置づけ】
行政書士試験での議会と長の関係のポイントは次の4つです。①不信任議決の要件:出席議員3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意。②不信任後の手続:10日以内に解散(できる)か失職。③再不信任(解散後の新議会による):長は自動失職(二度目の解散権なし)。④専決処分(179条):事後に議会の承認が必要(承認不要ではない)。再議の期間(10日以内・ウとセットで覚える)と、不信任の要件数字(3分の2出席・4分の3同意)と、再不信任の要件(過半数同意・要件緩和)の対比も重要です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り(「20日以内」が誤り・正しくは10日以内)。再議の結果が「3分の2以上の多数で確定」という点は正しい。しかし「20日以内」という誤りがあるため不正解。
- イ: 誤り。不信任議決後に「直ちに」失職するのではなく、長には10日間の解散権(選択の機会)が与えられる(178条1項)。
- ウ: 正答。178条1項の内容を正確に表現。不信任議決後10日以内に解散しない限り失職するという手続が正しい。
- エ: 誤り。解散後の新しい議会が再度不信任を議決した場合、長には二度目の解散権は与えられず、自動的に失職する(178条3項)。
- オ: 誤り。専決処分(179条)は事後に議会に報告し承認を求めることが必要(179条3項)。承認が得られなかった場合でも専決処分の効力に影響はないが、承認を求める義務自体は存在する。
【根拠条文】
地方自治法 第176条第1項(再議・長の異議申し立て・10日以内)、第176条第3項(再議での3分の2以上での確定)、第178条第1項(不信任議決後10日以内の解散・解散しない場合は失職)、第178条第3項(解散後の再不信任→失職)、第179条(専決処分・事後の議会承認)
【補足】
「不信任→10日以内に解散できる(しなければ失職)」「二度目の不信任→解散権なし・自動失職」「専決処分→事後に議会の承認が必要」の3点が試験頻出。数字(3分の2出席・4分の3同意・10日)を必ず暗記すること。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 地方自治法 第176条(再議・拒否権)、第178条(不信任議決と解散・失職)、第179条(専決処分) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。