民法31債務不履行・履行遅滞の要件

行政書士 民法 問31:債務不履行・履行遅滞の要件

AはBに対して、2026年3月1日を履行期として金銭債権を有していた。履行遅滞に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 履行期が到来しても、Aが催告をしなければ、Bは履行遅滞に陥らない。
  • Bが履行遅滞に陥るためには、Bに故意または過失があることが必要である。
  • AはBの履行遅滞を理由として損害賠償を請求するにあたり、損害の発生および損害額を具体的に証明しなければならない。
  • 金銭債務の不履行の場合、損害賠償の額は法定利率によって定め、AはBがその不履行につき故意または重大な過失がある場合に限り、法定利率を超える損害の賠償を請求できる。
  • 確定期限がある債務の場合、債務者は期限到来の時から遅滞の責任を負う。正答
正答:確定期限がある債務の場合、債務者は期限到来の時から遅滞の責任を負う。

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確定期限のある債務(履行期が日付で確定している債務)では、民法412条1項により「期限到来の時から」遅滞の責任を負います。催告は不要です。よってオが正しい記述です。アは誤りで、確定期限のある債務では催告なしで遅滞となります。イについて、履行遅滞の成立に債務者の帰責事由は要件ですが、「故意または過失」という表現は不正確であり(「責めに帰すべき事由」=帰責事由)、また遅滞の成立の要件としてではなく損害賠償の問題です。エは金銭債債務不履行の損害賠償の特則(民419条)を誤って記述しています。

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民法412条は履行遅滞の時期を定めます。第1項は確定期限のある債務について「その期限の到来した時から」遅滞の責任を負うとし、催告を要件としません(アは誤り)。第2項は不確定期限の場合「期限到来後に履行の請求を受けた時またはその期限の到来したことを知った時」から遅滞となります。第3項は期限の定めのない債務について「履行の請求を受けた時から」遅滞となります。イについて、債務不履行に基づく損害賠償の要件(民415条)として「債務者の責めに帰すべき事由」が必要ですが、これは履行遅滞の成立要件ではなく損害賠償の免責要件として機能する点(2020年改正で文言整理)に注意が必要です。エの金銭債務の特則(民419条)では、損害賠償額は法定利率によるが、法定利率を超える損害であっても「故意または重大な過失」があればその賠償を請求できる、という規律ではありません。民419条3項は「不可抗力をもって抗弁とすることができない」とするのみで、高額損害への特例はなく、エは誤りです。

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【理論的背景】

債務不履行は、(1)履行遅滞、(2)履行不能、(3)不完全履行(給付の内容が債務の本旨に従わない場合)の3類型に分類されてきました。2020年施行の改正民法(以下「現行法」)では、これらを包括的に「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるとき」(415条1項)として規律し、損害賠償の要件としての「帰責事由」を明文化しました。改正の重要ポイントは、帰責事由の不存在が「免責事由」として機能する構造に変わったことです(証明責任は債務者側に転換)。

【条文構造の精密な理解】

履行遅滞に関する412条の構造を正確に把握することが本問の核心です。

  • 第1項(確定期限): 期限到来の時から当然に遅滞→催告不要。本問の正答根拠。
  • 第2項(不確定期限): 期限到来後に「①請求を受けた時」または「②期限到来を知った時」の早い方から遅滞。
  • 第3項(期限の定めなし): 履行の請求(催告)を受けた時から遅滞。

金銭債務の特則(419条)は、損害賠償の額を法定利率(現行:年3%の変動制・404条)によって定め、「損害の証明を要しない」点(419条2項)が重要です(ウが誤りの根拠)。また419条1項は「不履行につき故意・過失がなくても」賠償義務を負う点で特則であり、債権者が超過損害を主張する特例規定はありません(エは誤り)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験における本論点の典型的な出題パターンは、(a)412条3つの場合分けのうち「不確定期限」や「期限の定めなし」の場合の遅滞開始時期を問うもの、(b)金銭債務の特則(419条)と通常の損害賠償規律の混同を問うもの、(c)2020年改正による「帰責事由の証明責任の転換」の理解を問うものです。改正前は「債権者が債務者の故意・過失を証明する」とも読めましたが、改正後は債務者が「自己の責めに帰することができない事由」を主張・立証して免責を求める構造になっています。この転換を正確に理解することが高得点につながります。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 確定期限がある場合は412条1項により催告不要で遅滞。催告が必要なのは「期限の定めのない債務」(412条3項)の場合。受験生が混同しやすい典型的誤り。
  • イ: 「故意または過失」という要件は改正前の旧規律的な表現。現行法では「責めに帰すべき事由」(帰責事由)が用いられ、これは故意・過失に限定されず、履行補助者の過失なども含む広い概念。また、これは損害賠償の免責事由であり、遅滞「成立」の要件ではない。
  • ウ: 金銭債務の不履行では民419条2項により「損害の証明をすることを要しない」。法定利率による損害が擬制されるため、損害発生・損害額の具体的証明は不要。
  • エ: 民419条は金銭債務の「特則」だが、「故意・重過失の場合のみ法定利率超過分を請求できる」という規律は存在しない。金銭債務では不可抗力を抗弁にできないこと(3項)が特則の核心であり、超過損害の特則はない。
  • オ: 正答。民法412条1項の文言通り。

【根拠条文】

民法 第412条第1項(確定期限のある債務の履行遅滞)

民法 第415条第1項(債務不履行による損害賠償)

民法 第419条第1項〜第3項(金銭債務の特則)

民法 第404条(法定利率・変動制)

【参照判例】

(本問は条文問題のため省略)

【補足】

2020年改正により法定利率が年5%固定から年3%スタートの変動制(3年ごと見直し)に変更された。「年5%」を正答にする問題は現行法では誤り。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第412条第1項・第415条・第419条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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