問題
担保物権の特色と物権変動に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
イが正しいです。担保物権の随伴性とは、被担保債権が譲渡等で第三者に移転した場合に担保物権もそれに伴って移転するという性質です。Aの抵当権付き貸付債権をBに譲渡すれば、抵当権もBに移転します。アは誤りで、付従性は「担保物権が被担保債権に従属する(債権がなければ担保物権も存在しない)」という性質です。ウは誤りで、抵当権には不可分性があり(民372条・296条準用)、一部弁済があっても目的物の全部に効力が及びます。エは誤りで、民304条1項ただし書は払渡し又は引渡しの前の差押えを要求しています。オは誤りで、296条は先取特権(305条)・質権(350条)・抵当権(372条)に準用されています。
イが正解です。担保物権の随伴性とは、「被担保債権が第三者に譲渡・移転した場合、担保物権(例:抵当権)も当然にその第三者に移転する」という性質です。例えば、AがBに対して抵当権付きの貸付債権を有し、これをCに譲渡した場合、抵当権もCに移転します。これに対し根抵当権については、民398条の7第1項が「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない」と定め、随伴性が否定されています。
ア:誤りです。付従性とは「担保物権は被担保債権に付従する(被担保債権の発生・消滅に連動する)」という性質です。被担保債権がなければ担保物権は発生せず(発生における付従性)、被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅します(消滅における付従性)。「同一の債権者に帰属しなければならない」という内容は随伴性(債権と担保権が一緒に移転)のことを指しており、付従性の正確な説明ではありません。
ウ:誤りです。民法296条は「留置権者は、債権の全部の弁済を受けるまでは、留置物の全部についてその権利を行使することができる」と規定し、372条はこれを抵当権に準用しています。被担保債権の一部弁済があっても、抵当権は目的物の全部について存続し、残債権に応じて縮小することはありません。
エ:誤りです。民法304条1項本文は、先取特権は目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても行使できるとしますが、同項ただし書は「先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定しています。「差押えをする必要はない」とする点が誤りです。
オ:誤りです。留置権の不可分性を定める296条は、先取特権(305条「第二百九十六条の規定は、先取特権について準用する」)、質権(350条)、抵当権(372条)にそれぞれ準用されています。「いずれにも準用していない」とする点が誤りです。
【理論的背景】
担保物権には共通して認められる性質が複数あります。学説・判例が整理する主な性質は次の4つです。①付従性:被担保債権なければ担保物権なし(被担保債権への従属性)。②随伴性:被担保債権が移転すれば担保物権も移転(被担保債権の移転への追随)。③不可分性:債権全部の弁済があるまで目的物全体に効力(目的物の一部でも債権全体を担保)。④物上代位性:目的物の価値変形物にも効力が及ぶ(抵当権・先取特権等に認められる・留置権には原則認められない)。これらは「担保物権の通有性」とも呼ばれます。
ただし、各担保物権によって認められる性質やその程度に差異があります。特に物上代位性は留置権には認められない(留置権は目的物の「留置」によってのみ機能する)という点が重要です。
【条文構造】
担保物権の通有性と根拠条文:
[付従性]
- 発生:被担保債権が成立しなければ担保物権も成立しない
- 消滅:被担保債権の消滅(弁済・時効・相殺等)→担保物権消滅
- 根拠:各担保物権の条文の構造(明文規定は個々の条文)
[随伴性]
- 被担保債権の譲渡・包括承継→担保物権も移転
- 根拠:担保物権の付従性の帰結
- 例外:根抵当権(民398条の7第1項・元本の確定前に債権を取得した者は根抵当権を行使できない)
[不可分性]
- 債権の全部の弁済を受けるまで目的物の全部に効力
- 留置権:民296条
- 先取特権:民305条(民296条準用)
- 質権:民350条(民296条準用)
- 抵当権:民372条(民296条準用)
[物上代位性]
- 目的物の売却・賃貸・滅失・損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に効力が及ぶ
- 先取特権:民304条(払渡し又は引渡しの前の差押えが必要)
- 質権:民350条(民304条準用)
- 抵当権:民372条(民304条準用)
- 留置権:304条の準用規定がない。留置権は留置物の占有を失うことによって消滅する(民302条本文)
【試験での位置づけ】
行政書士試験の担保物権総論問題では、4つの通有性の意味・根拠条文・例外の理解が求められます。典型的な出題は「随伴性の意味は何か」「不可分性があれば一部弁済で担保が縮小するか(しない)」「物上代位に差押えは必要か(払渡し・引渡しの前に必要)」「不可分性の規定はどの担保物権に準用されるか(先取特権・質権・抵当権のすべて)」です。根抵当権の随伴性の例外(元本確定前)も出題対象です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 付従性の正確な定義:被担保債権に従属(ついていく)という性質。被担保債権が消滅→担保消滅(消滅における付従性)・被担保債権が成立しない→担保も成立しない(発生における付従性)。「同一の債権者に帰属」は随伴性の議論であり、付従性の定義として不正確。
- イ: 正しい(正答)。随伴性の典型例:抵当権付き貸付債権の譲渡(債権譲渡)→抵当権も移転。根抵当権については398条の7第1項が元本確定前の債権取得者による根抵当権の行使を否定しており、随伴性がない。
- ウ: 誤り。不可分性(民296条・372条準用)により、残債権がわずかになっても抵当権は目的物の全部について存続する。被担保債権の全部の弁済を受けるまで、債権者は目的物の全部について権利を行使できる。
- エ: 誤り。物上代位(民304条1項)には「払渡し又は引渡しの前に差押え」が必要。価値変形物(保険金等)が債務者に支払われ、債務者の一般財産に混入した後では、どの財産に担保権が及ぶか特定できなくなるためと説明される。同条2項は、債務者が目的物につき設定した物権の対価にも物上代位を認める。
- オ: 誤り。296条は305条・350条・372条により、先取特権・質権・抵当権のすべてに準用されている。不可分性は留置権を含む4つの担保物権に共通する性質である。
【根拠条文】
民法 第296条(留置権の不可分性)、第302条(占有の喪失による留置権の消滅)、第304条(物上代位)、第305条(先取特権の不可分性)、第350条(留置権及び先取特権の規定の準用)、第372条(留置権等の規定の準用)、第398条の7(根抵当権の被担保債権の譲渡等)
【補足】
担保物権の通有性4つ(付従性・随伴性・不可分性・物上代位性)の正確な意味と根拠条文。「不可分性の296条は305条・350条・372条で準用」「物上代位には払渡し・引渡し前の差押えが必要(304条1項ただし書)」「根抵当権(元本確定前)には随伴性がない(398条の7)」が頻出論点。
- 民法第304条・第296条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第296条(留置権の不可分性)、第304条(物上代位)、第305条(先取特権の不可分性)、第350条(留置権及び先取特権の規定の準用)、第372条(留置権等の規定の準用) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

