問題
不動産の取得時効に関する次のア〜オの記述のうち、判例の趣旨に照らして正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
イが正しいです。民法162条1項は、20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得すると規定し、善意・悪意を問いません。アは誤りで、10年の取得時効には占有開始時の「善意であり、かつ、過失がなかった」ことが必要です(162条2項)。ウは誤りで、不動産に関する物権の「得喪」は登記をしなければ第三者に対抗できません(177条)。エは誤りで、時効の効力は「その起算日にさかのぼる」とされています(144条)。オは誤りで、145条の「保証人、物上保証人、第三取得者その他…」の括弧書きは「消滅時効にあっては」と限定されています。
イが正解です。民法162条1項は「二十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する」と規定しています。占有開始時の善意・悪意は要件ではないため、悪意の占有者でも20年の占有で所有権を取得します。
ア:誤りです。民法162条2項は「十年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その占有の開始の時に、善意であり、かつ、過失がなかったときは、その所有権を取得する」と規定しています。10年で取得するには善意に加えて無過失が必要であり、過失がある占有者は20年の時効(同条1項)によるしかありません。
ウ:誤りです。民法177条は「不動産に関する物権の得喪及び変更は…その登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定しています。時効による所有権の取得も物権の「得喪」にあたるため、「いかなる第三者に対しても登記なしで対抗できる」という絶対的な記述は条文と矛盾します。
エ:誤りです。民法144条は「時効の効力は、その起算日にさかのぼる」と規定しています。取得時効の場合、占有者は占有開始の時から所有者であったものと扱われ、完成時から将来に向かってのみ効力が生じるのではありません。
オ:誤りです。民法145条は「時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と規定しています。括弧書きは「消滅時効にあっては」と限定されており、取得時効について保証人等を援用権者として明記してはいません。
【理論的背景】
取得時効(民162条)は、一定期間の継続的な占有という事実状態を尊重し、占有者に所有権を取得させる制度です。長期間続いた事実状態を覆すと社会の法律関係が不安定になること、時間の経過で真の権利関係の証明が難しくなることが、制度の根拠とされます。
取得時効が完成しても、裁判所は当事者の援用がなければこれによって裁判をすることができません(145条)。援用されると、時効の効力は起算日にさかのぼり(144条)、占有者は占有開始の時から所有者であったものと扱われます。不動産の場合、時効による所有権の取得も物権の「得喪」であり、第三者への対抗には登記が問題になります(177条)。
【条文構造】
取得時効の要件(民162条):
- 1項(長期):20年間・所有の意思・平穏・公然・他人の物の占有。善意・悪意を問わない
- 2項(短期):10年間・所有の意思・平穏・公然・他人の物の占有+占有開始時に善意かつ無過失
時効の効力と援用:
- 民144条:時効の効力は、その起算日にさかのぼる
- 民145条:時効は当事者が援用しなければ裁判できない。括弧書きの保証人・物上保証人・第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者は「消滅時効にあっては」と限定
登記との関係:
- 民177条:不動産に関する物権の得喪及び変更は、登記をしなければ第三者に対抗できない
【試験での位置づけ】
行政書士試験の取得時効論点では、①10年と20年の要件の違い(善意・無過失は占有開始時に判断)、②時効の遡及効(144条)、③援用の要否と援用権者(145条)、④時効取得と登記(177条)が組み合わせて問われます。特に「悪意でも20年で取得できる」「10年は善意だけでなく無過失も必要」「145条の括弧書きは消滅時効に限る」の3点は、条文の文言どおりに覚えておくと確実に得点できます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 誤り。162条2項は「善意であり、かつ、過失がなかったとき」と善意・無過失の両方を要求する。善意でも過失があれば、20年の時効(同条1項)によるしかない。
- イ: 正しい(正答)。162条1項は善意・悪意を区別しない。悪意の占有者でも、所有の意思・平穏・公然の要件を満たして20年占有すれば所有権を取得する。
- ウ: 誤り。177条は「得喪及び変更」と規定し、時効による取得も含む。「いかなる第三者に対しても登記なしで対抗できる」という絶対的な表現は、登記を対抗要件とする177条と両立しない。時効が完成したら速やかに登記を備えることが実務上重要。
- エ: 誤り。144条により時効の効力は起算日にさかのぼる。「完成時から将来に向かってのみ」とする点が条文と正反対。
- オ: 誤り。145条の括弧書きは「消滅時効にあっては」と明記しており、取得時効について保証人・物上保証人・第三取得者を援用権者として列挙してはいない。
【根拠条文】
民法 第144条(時効の効力)、第145条(時効の援用)、第162条(所有権の取得時効)、第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
【補足】
「20年=善意悪意を問わない」「10年=占有開始時の善意・無過失」「効力は起算日にさかのぼる」「145条括弧書きは消滅時効に限る」「時効による取得も177条の得喪にあたる」の5点を条文の文言で押さえること。
- 民法第145条・第162条・第177条・第144条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第144条(時効の効力)、第145条(時効の援用)、第162条(所有権の取得時効)、第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

