民法71遺言の効力・遺贈

行政書士 民法 問71:遺言の効力・遺贈

遺贈に関する次のア〜オの記述のうち、現行民法の規定に照らして**正しいもの**はどれか。

  • 特定遺贈を受けた者(受遺者)は、遺言者の死亡後であればいつでも遺贈の放棄をすることができ、遺贈の放棄は遡及効を持たない。
  • 包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するため、遺産分割協議に参加しなければならない。正答
  • 受遺者が遺言者より先に死亡した場合、遺贈は当然に受遺者の相続人に承継される。
  • 遺言によって、推定相続人の廃除をすることはできるが、廃除の取消しをすることはできない。
  • 遺言は被相続人が生前に取り消すことができず、遺言の撤回は相続開始後に共同相続人全員の合意によってのみ行うことができる。
正答:包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同一の権利義務を有するため、遺産分割協議に参加しなければならない。

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包括遺贈を受けた受遺者は、相続人と同一の権利義務を有すると定められており(民法990条)、遺産分割協議に参加する必要があります。これがイの根拠で正答です。アは誤りで、特定遺贈の放棄は遡及効を持ちます(民法986条2項・遺言者の死亡時に遡る)。ウは誤りで、受遺者が遺言者より先に死亡した場合、遺贈は効力を生じません(民法994条1項・目的物は相続財産に帰属)。エは誤りで、遺言で廃除の取消しをすることも可能です(民法893条)。オは誤りで、遺言者は生前いつでも遺言の全部または一部を撤回できます(民法1022条)。

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正答はイです。民法990条は「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と規定します。これにより、包括受遺者は遺産分割協議に参加し、相続人と同様に相続財産の共有持分を主張する立場となります。相続放棄に相当する遺贈放棄も、相続放棄と同様の手続き(家庭裁判所への申述・熟慮期間3か月)に服します(民法987条)。

各選択肢を確認します。ア(誤):特定遺贈の放棄は民法986条に基づき、放棄の効力は遺言者の死亡時に遡ります(遡及効あり)。また、遺言者の死亡後「いつでも」ではなく、相続人はいつでも催告でき、期間内に意思表示がない場合は承認とみなされる規律があります(民法987条準用)。ウ(誤):民法994条1項は「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない」と規定します。遺贈は受遺者の相続人には承継されず、目的物は相続財産に戻ります。エ(誤):民法893条は遺言による廃除の申請を認めており、廃除の取消しも遺言でできます(民法894条2項準用)。オ(誤):民法1022条は「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる」と規定し、生前いつでも撤回できます。

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【理論的背景】

遺贈とは、遺言による財産の無償の処分です。特定の財産を特定して与える「特定遺贈」と、相続財産の全部または一定割合を与える「包括遺贈」があります。包括遺贈では受遺者が相続人に準じた立場となるため、遺産分割協議への参加義務が生じます。遺言の撤回自由の原則(民法1022条)は、遺言者の最終意思を尊重するための重要な原則です。被相続人の生前の意思はいつでも変更できなければ、遺言作成の自由が事実上制約されることになるためです。

【実務・条文構造】

遺贈に関する主要条文を整理します。民法986条:特定遺贈の放棄は遺言者の死亡後いつでも可(ただし催告・承認のみなし規定あり)。放棄の遡及効(遺言者の死亡時に遡る)。民法987条:包括遺贈の放棄は相続放棄の規定を準用(家庭裁判所への申述・3か月の熟慮期間)。民法988条:受遺者が遺贈を承認・放棄すると撤回できない。民法990条:包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する(遺産分割協議参加義務)。民法994条1項:受遺者が遺言者より先に死亡した場合は遺贈の効力不発生(失効)。民法994条2項:停止条件付きの遺贈で条件成就前に受遺者が死亡した場合は遺贈失効。民法1022条:遺言の撤回自由(方式に従って)。民法1025条:遺言の撤回の撤回(再撤回による元の遺言の効力回復なし)。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では、特定遺贈と包括遺贈の違い(放棄方法・受遺者の義務)、受遺者が先に死亡した場合の処理(失効・遺言者の相続財産へ)、遺言の撤回の自由(民法1022条)が問われます。「遺言は一度作ったら撤回できない」(オ)や「受遺者が先死した場合に相続人が承継する」(ウ)は典型的な誤りの引っかけです。包括受遺者が遺産分割協議に参加しなければならない(イ)は実務上も重要で、包括遺贈があることを知らずに遺産分割協議を締結した場合は無効となりえます。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。特定遺贈の放棄は遡及効を持ちます(民法986条2項)。遡及効がないとする点が誤り。「いつでも」については、相続人が期間を定めて催告でき(民法987条参照)、期間内に意思表示がない場合は承認とみなされる。放棄の絶対的自由とも言い切れない点に注意。
  • イ: 正しい(正答)。民法990条の文言通り。包括受遺者は相続人と同一の権利義務を持つため、遺産分割協議に当然参加する。包括受遺者が参加しない遺産分割協議は無効。包括受遺者が放棄する場合は相続放棄と同様の手続き(民法987条)。
  • ウ: 誤り。民法994条1項が根拠。受遺者の先死による遺贈失効は法律上明確に規定される。遺言者は「補充遺贈」(受遺者の先死に備えて代替の受遺者を指定すること)を設けることで対応できる。
  • エ: 誤り。民法893条は「遺言で廃除の意思を表示したとき」に推定相続人の廃除請求ができると規定する。民法894条2項は「廃除の取消しの遺言」についても規定しており、取消しも遺言で可能。
  • オ: 誤り。民法1022条が明確に「いつでも撤回できる」と規定する。撤回は新しい遺言・抵触する行為(財産の処分等)によっても生じる(民法1023条・1024条)。生前撤回の自由は遺言制度の根幹。

【根拠条文】

民法 第986条(特定遺贈の放棄)、第987条(包括遺贈の放棄)、第990条(包括受遺者の権利義務)、第994条(遺贈の失効)、第1022条(遺言の撤回)

【補足】

「包括受遺者は遺産分割協議に参加しなければならない」(民法990条)は実務上のトラブルにも直結する最重要論点。遺贈の失効(民法994条)と補充遺贈の関係も押さえておくこと。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法 第986条・第987条・第990条・第994条・第1022条・第1025条 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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