ITパスポート 令和6年度 問53:system_auditに関する問題
IT ガバナンスに関する次の記述中の a に入れる字句として、最も適切なものはどれか。「経営者は、[a] の事業の目的を支援する観点で、効果的、効率的かつ受容可能な [a] の IT の利用について評価する。」
- a過去と現在
- b現在
- c現在と将来正答
- d将来
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答えは c「現在と将来」 です。
ITガバナンスとは、経営者が「会社のITの使い方、これでいい?」をしっかり見て方向づけすること。ポイントは、今うまく回っているか(現在)だけでなく、これから先も役に立つか(将来)の両方を見ること。だから「現在と将来」が入ります。
👉 覚え方:経営者がITを見るときは“今”と“これから”の両方をセットで。
ほかの選択肢:a 過去と現在/b 現在だけ/d 将来だけ=どれも片方しか見ておらず、未来志向の経営の考え方に合わないので×。
なぜこれが正解か
正解は c「現在と将来」。ITガバナンスは、経営者が事業目的の達成を支援する観点から、現在と将来のITの利用について「評価・指示・モニタリング」する仕組み。現在の運用が適切かに加え、将来の事業環境やニーズに合致するITの方向づけを行う点が本質なので、空欄には「現在と将来」が入る。
各選択肢の解説
- a 過去と現在:過去の検証は監査的視点で、ガバナンスの“方向づけ”は未来志向。
- b 現在のみ:将来を見据えた経営判断が抜け落ちる。
- d 将来のみ:現在の利用状況の評価が抜け落ちる。
覚え方・ひっかけ注意
ITガバナンスの定義(ISO/IEC 38500)にある「評価(Evaluate)・指示(Direct)・モニタ(Monitor)」の3動詞をセットで押さえる。評価対象は常に現在と将来のIT利用。ITマネジメント(現場の管理)との違いは、ガバナンスが経営者による統治・方向づけである点。「経営者が」「事業目的を支援」とあればガバナンスの問題と判断する。
理論的背景
ITガバナンス(IT Governance)はコーポレートガバナンスの一部として位置づけられ、「経営陣が情報技術の利用について評価・指示・モニタリングを行う仕組み」と定義される。ISO/IEC 38500(IT Governanceの国際規格)は「経営者によるITの方向付け・評価・モニタリング」という3機能をITガバナンスの核心として規定し、CobiTフレームワークはこれを「EDM(Evaluate-Direct-Monitor)」と体系化している。
正解cの「現在と将来」が入ることの理由:ISO/IEC 38500:2015に基づくITガバナンスの定義において、経営者は「現在の事業目的を支援するITの利用」だけでなく「将来の事業目標達成に向けたIT戦略の方向付け」も担う。ITへの投資は長期的性格を持ち(多年度にわたる費用対効果)、技術的変化のスピードが事業計画を超えて進むため、「現在の最適化」だけでは不十分で「将来への対応設計」が不可欠である。
「現在のみ(b)」では長期的IT戦略の策定・将来の技術変化への対応が視野に入らない。「過去と現在(a)」は過去を踏まえた現在の評価には有効だが、将来指向のITガバナンスの本質を欠く。「将来のみ(d)」では現在進行中のITサービスの評価・コントロールが機能しない。「現在と将来(c)」の組み合わせが経営者によるITの「評価(今)・指示(今と将来)・モニタリング(今)」という包括的責務を最適に表現する。
実務での使われ方
ITガバナンスの実務的フレームワークとして最も広く使われるCOBIT 2019は、5つのガバナンスドメイン(EDM:Evaluate-Direct-Monitor)と5つの管理ドメイン(APO・BAI・DSS・MEA)で構成される。このフレームワークの採用企業は経営レベルのIT関与(取締役会・IT委員会によるIT戦略の承認・KPIモニタリング)を制度化しており、内部監査・外部監査の判断尺度としても機能する。
デジタルトランスフォーメーション(DX)時代のITガバナンスは「現在の基幹システムの安定運用(SoR管理)」と「将来の新規デジタル事業への投資判断(SoE・DX投資)」の両立というバイモーダルIT管理の難題に直面している。経産省の「DX推進指標」にもITガバナンス評価項目が含まれており、2025年崖問題(レガシーシステムの2025年問題)への対応という「将来指向の戦略的ITガバナンス」が日本企業の喫緊課題となっている。
試験での位置づけ
ITガバナンスの定義問題はITパスポートのシステム監査・ITガバナンス分野で出題される。本問の「穴埋め選択」形式は「a(過去と現在)vs c(現在と将来)」の区別が最大の判断ポイントであり、「ガバナンスは前向き(将来指向)か後ろ向き(過去評価)か」という問いに答えることが正解への鍵。「ガバナンス=方向付け・評価・モニタリング」という機能はすべて「現在の状況を把握し将来の目標達成のために行動する」という前向きな性格を持つ点を理解する。
基本情報技術者ではITガバナンスと「コーポレートガバナンス(企業全体の統治)」「内部統制(財務報告の信頼性確保)」「システム監査(独立した評価)」の役割分担と相互関係が問われる。ITストラテジスト・ITガバナンスの上位試験ではCOBIT・ISO/IEC 38500・ISACA GEiT(IT Governance and Enterprise IT)の詳細実装が出題される。
選択肢の発展補足
aの「過去と現在」の限界:経営者が「過去と現在のITを評価する」だけであれば、それは後追い的なレビューに留まり、戦略的投資意思決定・技術選択の方向付けという「前向きなガバナンス」機能が失われる。監査・コントロールのみのガバナンスは反応的(Reactive)であり、ITガバナンスの本来機能(Proactive・戦略的)とは区別される。
bの「現在のみ」の問題:多くのITプロジェクト・IT投資は複数年にわたる「将来へのコミットメント」を伴う。現在時点の評価だけでは「3年後・5年後の技術的陳腐化リスク」「AIクラウド等の将来技術への移行計画」という長期的ガバナンスの責務を果たせない。「現在の最適化が将来の最適解とは限らない」という技術的不確実性への対応がITガバナンスの重要課題。
dの「将来のみ」の非現実性:将来指向のIT戦略策定も重要だが、「現在稼働中のシステムの品質・セキュリティ・コストのモニタリング」「現在進行中のプロジェクトの進捗評価」という現時点のコントロール機能なしには実効的なガバナンスが機能しない。経営者のITガバナンス責務は「現在のパフォーマンス担保」と「将来への戦略的投資」の両方にあるという点が正解cの根拠。
出典:IPA(情報処理推進機構)公式 ITパスポート試験 令和6年度 問53/ 公的機関配布資料につき出典明記の上引用。解説は合格ナビによる独自AI解説です。