危険物乙四 基礎的な物理学及び基礎的な化学 問74:物質の三態・状態変化
引火性液体の蒸気圧と温度に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア液体の蒸気圧は温度が上昇するにつれて低下する。
- イ引火性液体を低温に保つことで、発生する蒸気の量を減らし引火の危険性を低下させることができる。正答
- ウ温度が引火点以上になっても、換気を十分に行えば蒸気は発生しない。
- エ引火点の低い液体ほど、常温での蒸気圧が低い傾向がある。
- オ引火性液体を密閉容器に保管すると、温度が上がっても蒸気圧は変化しない。
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正しいのはイです。引火性液体を低温に保つと蒸気の発生量が減り、引火の危険性を低下させることができます。
- ア(誤): 蒸気圧は温度上昇とともに上昇する(低下ではない)。
- イ(正): 低温保持→蒸気圧低下→蒸気量減少→引火危険性低下。冷暗所保管の根拠。
- ウ(誤): 引火点以上では換気しても液体から蒸気は発生し続ける(換気は蒸気を拡散させるが発生を止めない)。
- エ(誤): 引火点が低い液体ほど常温での蒸気圧が高い(逆)。
- オ(誤): 密閉容器でも温度が上がると蒸気圧は上昇する(内圧が高まる)。
「温度上昇→蒸気圧上昇→引火危険性増大」は危険物保管の基本原則です。
蒸気圧と温度・引火点の関係(確立した物理学):
液体の飽和蒸気圧は温度が上昇すると増大します(クラウジウス–クラペイロン方程式で定量化)。高温になるほど液体分子が気体に変わりやすく、空間中の蒸気分子が増えます。
引火点の定義: 「発生した蒸気が空気と混合し、外部点火源で引火するのに十分な蒸気濃度(燃焼下限値)に達する最低液体温度」。つまり引火点以上では燃焼に足る蒸気が常に発生しています。
- ア(誤): 蒸気圧は温度とともに増大(減少ではない)。
- イ(正): 低温保持→蒸気圧低下→蒸気発生量減少→引火危険性低下。第4類危険物を冷暗所に保管する根拠。
- ウ(誤): 換気は発生した蒸気を拡散させる効果はあるが、液体からの蒸発そのものは止められない。引火点以上の温度では蒸気は発生し続ける。
- エ(誤): 引火点が低い(常温でも蒸気が多く発生する)物質は常温での蒸気圧が高い。ガソリン(引火点−40℃以下)は常温での蒸気圧が灯油より高い。
- オ(誤): 密閉容器でも温度上昇で蒸気圧は上昇。容器の内圧が高まり、破損・噴出の危険が生じる。
引っかけパターン: 「低温=蒸気圧低下」と「引火点が低い=蒸気圧が高い」は方向性を問う典型的な出題です。
【理論的背景:蒸気圧と温度の関係】
液体の飽和蒸気圧(温度T)はクラウジウス–クラペイロン方程式 ln(P2/P1) = (ΔHvap/R)(1/T1 − 1/T2) に従って増大します(T: 絶対温度、ΔHvap: 蒸発エンタルピー、R: 気体定数)。直感的には「温度が上がると分子の運動エネルギーが増し、液体表面から気体へ飛び出す分子数が増える」と理解できます。この原則は第4類危険物の保管・取扱いすべての基礎です。
【引火点・蒸気圧・温度管理の実務的意味】
引火点とは蒸気濃度が燃焼下限値(LFL)に達する最低液体温度です。液温が引火点以上になると、液体は継続的に十分な量の蒸気を発生させます。この蒸気が空気と燃焼範囲内の混合気を形成し、点火源があれば引火します。したがって:
- 液温を引火点以下に保つ(冷暗所保管)→蒸気濃度を燃焼下限値未満に抑える→引火防止
- 換気は蒸気を拡散させて局所濃度を下げる補助手段だが、液体の蒸発そのものを止めない
- 容器の密閉は蒸気漏れを防ぐが、内部では温度と蒸気圧は上昇する(加熱による容器破損に注意)
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 蒸気圧は温度上昇で増大。減少という記述は完全に逆。ガソリンの引火点(−40℃以下)は低温でも蒸気圧が十分な証左。
- イ(正): 冷暗所保管の物理的根拠はまさに「低温→低蒸気圧→低引火危険性」。危政令・危規則の保管基準(冷暗所・容器密閉)の根拠。
- ウ(誤): 換気は拡散であって蒸発停止ではない。引火点以上の液体は放置すれば再び蒸気濃度が燃焼下限に達する。換気は必要だが万能ではない。
- エ(誤): 引火点が低い物質ほど常温での蒸気圧が高い。ジエチルエーテル(沸点34.6℃・引火点−45℃)は常温での蒸気圧が非常に高く、密閉していない場所では大量の蒸気が発生する。
- オ(誤): 密閉容器内でも蒸気圧は温度に依存して変化する(飽和蒸気圧に達するまで増大)。高温では内圧が過大になり容器が破損・噴出するリスクがある。屋外タンク等で通気弁(ブリーザー)が設置されるのもこのため。
【試験での位置づけ】
乙四試験では「温度管理が危険物保管の基本」という概念から、蒸気圧と温度の関係が物理化学と法令・性質の横断問題として出題されます。「冷暗所保管」「容器密閉」「換気」は引火性液体の三大予防策で、それぞれの物理的根拠(低温、蒸気漏れ防止、局所濃度低下)と接続して理解すると得点が安定します。
【根拠】確立した物理学(飽和蒸気圧・引火点の定義)。
【補足】温度上昇→蒸気圧上昇→引火危険性増大。引火点が低い物質は常温での蒸気圧が高い。低温保管が安全の根拠。
<!-- 監修確定 2026-06-05(legal-reviser): 蒸気圧は温度上昇で増大・低温保持で蒸気量減→引火危険低下・引火点が低い物質ほど常温蒸気圧高い、すべて正確。正答イ一意(ア/ウ/エ/オはすべて方向逆または誤り)。クラウジウス-クラペイロンの定性記述も妥当。確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 確立した物理学(蒸気圧と温度の正比例関係・クラウジウス–クラペイロン方程式の定性的理解)。引火点は「蒸気濃度が燃焼下限値に達する最低液体温度」であり、低温保持は蒸気圧低下→引火危険性低下につながる。 現行の消防法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。