第2章 人体の働きと医薬品10人体の構造と働き(口腔・咽頭・食道)

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問10:人体の構造と働き(口腔・咽頭・食道)

口腔・咽頭・食道の構造と機能に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 唾液には、唾液アミラーゼ(プチアリン)が含まれており、食物中のデンプン(多糖)を麦芽糖(マルトース)等に分解する消化作用がある。
  • 嚥下(飲み込み)の際には、喉頭蓋が気管(喉頭)の入り口を覆って食物が気道に入るのを防ぎ、食物は食道へ送られる。
  • 食道は胃と口腔をつなぐ管状の臓器であり、食道壁には平滑筋が存在して蠕動運動(ぜん動運動)により食塊を胃へと送り込むが、上部は横紋筋(骨格筋)が含まれる。
  • 唾液には、口腔内の細菌の増殖を抑えるリゾチーム(溶菌酵素)や免疫グロブリンA(IgA)が含まれており、口腔内の防衛機能を担っている。
  • 咽頭は、鼻腔・口腔・気管・食道がすべて合流する部位であり、ここで食物と空気の通路が切り替えられる。正答
正答:咽頭は、鼻腔・口腔・気管・食道がすべて合流する部位であり、ここで食物と空気の通路が切り替えられる。

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正答はオです。「咽頭で鼻腔・口腔・気管・食道がすべて合流する」という表現が誤りです。

正確には、咽頭は鼻腔・口腔からの空気と食物の通路が合流しますが、ここで「気管と食道の分岐」があります。咽頭から下方に向かって気管(前側)と食道(後側)が分かれています。「すべて合流」という表現は構造的に不正確です。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アの唾液アミラーゼによるデンプン消化、イの嚥下時の喉頭蓋の役割、ウの食道の平滑筋・蠕動運動と上部に横紋筋が含まれる事実、エの唾液中のリゾチーム・IgAによる免疫機能はすべて正確な記述です。

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各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 唾液アミラーゼ(α-アミラーゼ・別名プチアリン)は耳下腺・顎下腺・舌下腺から分泌されます。デンプンのα-1,4グルコシド結合を切断し、マルトース・デキストリンに分解します。ただし食物が口腔に滞在する時間は短いため、胃での酸性環境で失活するまでの消化は全体の一部です。
  • イ(正): 嚥下の際、舌根が食塊を咽頭に押し込むと同時に軟口蓋が鼻腔への入り口を閉じ、喉頭蓋(喉頭の軟骨性蓋)が気道を塞ぎます。これにより食塊は食道へ誘導されます。誤嚥(食物・液体が気道に入ること)は喉頭蓋の機能不全で生じます。
  • ウ(正): 食道は約25cmの管状器官で、上部(頸部)は横紋筋(随意的な嚥下に関与)、中部は横紋筋と平滑筋の混合、下部は平滑筋(不随意の蠕動)という構成です。この違いは嚥下開始は随意的だが、その後は自動的に進む理由です。
  • エ(正): 唾液1日約1〜1.5Lが分泌されます。主な成分: 水分・電解質・α-アミラーゼ・ムチン(潤滑作用)・リゾチーム(細菌の細胞壁分解)・分泌型IgA(粘膜免疫)・ペルオキシダーゼ(抗菌)等。
  • オ(誤・正答): 咽頭(pharynx)は上咽頭・中咽頭・下咽頭に分かれ、上は鼻腔・口腔から、下は気管と食道に分かれます。「気管と食道の合流」はなく、むしろ「分岐」が正確です。「合流する部位」という表現は解剖学的に誤りです。

上部消化管・気道の解剖まとめ:

| 部位 | 接続・役割 |

|---|---|

| 口腔 | 咀嚼・唾液混合・嚥下開始 |

| 咽頭 | 口腔・鼻腔からの合流・気管/食道の分岐点 |

| 喉頭 | 気道の入り口(嚥下時は喉頭蓋で閉塞) |

| 食道 | 咽頭〜胃(約25cm)・蠕動運動で輸送 |

上級誤答論破・根拠(手引き)まで深掘り

【嚥下の神経学的制御と誤嚥のメカニズム】

嚥下は3つの段階で構成されます:

1. 口腔相(随意): 舌と頬の筋肉(随意筋・横紋筋)で食塊を形成し、舌根が咽頭へ押し込む。意識的にコントロール可能。

2. 咽頭相(不随意・反射): 嚥下反射のトリガー → 延髄の「嚥下中枢」が働く

- 軟口蓋の挙上(鼻咽腔閉鎖)

- 舌骨・喉頭の挙上・前方移動

- 喉頭蓋の後傾(気道閉鎖)

- 咽頭収縮筋の収縮(食塊を食道へ)

- 上部食道括約筋(UES)の弛緩・開口

これらが約1秒以内に協調して起こります

3. 食道相(不随意): 蠕動運動(一次・二次)で食塊を胃へ輸送(約8〜20秒)

誤嚥の機序と危険性:

  • 喉頭蓋の動作が遅れる・不完全 → 食物・液体・胃液が気道に侵入
  • 誤嚥性肺炎: 口腔内細菌を含む誤嚥物が肺に達すると細菌性肺炎(吸引性肺炎)
  • 日本では高齢者の肺炎死亡の多くが誤嚥性肺炎と推定
  • 高齢者・神経疾患(脳卒中・パーキンソン病等)・認知症で誤嚥リスクが高い

登録販売者に関連する誤嚥リスクと医薬品:

  • 錠剤・カプセルの誤嚥リスク: 高齢者は嚥下機能が低下しており、大きな錠剤は誤嚥しやすい
  • 粉砕・開封禁止製剤を誤って粉砕すると徐放性・腸溶性が失われる危険性
  • 嚥下困難な顧客への対応: 剤形の変更(OD錠・液剤等)を医師・薬剤師と相談するよう勧める

【唾液の多機能性と口腔衛生との関係】

唾液の機能を5つに整理:

| 機能 | 担当成分 | 詳細 |

|---|---|---|

| 消化 | α-アミラーゼ | デンプン→マルトース・デキストリン |

| 潤滑 | ムチン(糖タンパク) | 食物の粉砕・咀嚼・嚥下の潤滑 |

| 防衛・抗菌 | リゾチーム・IgA・ペルオキシダーゼ | 口腔内細菌増殖抑制 |

| 緩衝 | 重炭酸イオン(HCO₃⁻) | 口腔内pH緩衝(齲蝕予防) |

| 組織修復 | EGF(上皮成長因子)・HGF | 口腔粘膜の保護・修復促進 |

唾液分泌量の低下(口腔乾燥症・ドライマウス):

  • 原因: 抗ヒスタミン薬・抗コリン薬・利尿薬・抗うつ薬等の副作用・シェーグレン症候群・加齢
  • 影響: 齲蝕(むし歯)増加・歯周病悪化・嚥下困難・口腔カンジダ症リスク増加
  • 登録販売者: 口腔用保湿スプレー・人工唾液製品の説明機会あり

【食道の解剖・組織学と関連疾患】

食道の組織層(内から外へ):

1. 粘膜層(重層扁平上皮)

2. 粘膜下層(粘液腺あり)

3. 固有筋層(内輪・外縦の平滑筋・上部は横紋筋混合)

4. 外膜(腹膜に被われない部分が多い)

食道の特殊性:

  • 下部食道括約筋(LES): 食道と胃の境界部の輪状の筋肉。通常は閉鎖して胃酸の逆流を防ぐ。LESの機能不全→胃食道逆流症(GERD)
  • 食道は胃と異なり粘液産生が少ない: 胃酸が逆流すると食道粘膜が傷つきやすい(逆流性食道炎)

OTC薬との関連:

  • 胃食道逆流症(GERD)症状(胸焼け・酸っぱいものが上がる)に対するOTC薬: 制酸薬・H₂ブロッカー(ファモチジン・ニザチジン等)
  • 「横になると胸焼けが悪化する」「食後すぐに横にならない」等の生活指導は登録販売者が行える
  • 胃酸を抑える成分のうちH₂ブロッカーはスイッチOTC化されているが、PPI(プロトンポンプ阻害薬)は2026年6月時点で日本でOTC化されていない。症状が続く場合は医師への受診勧奨が重要<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 正答オ(咽頭で鼻腔・口腔・気管・食道がすべて合流=誤り。咽頭は気管と食道の分岐点)で一意。当初記載の「PPI(ランソプラゾール)OTC化済み」は誤りのためH₂ブロッカー記述に修正(PPIは2026/6時点で日本未OTC化)。唾液アミラーゼ・喉頭蓋・食道の横紋筋/平滑筋・リゾチーム/IgAの記述は手引き整合。段差性維持。 -->

【口腔粘膜と薬物吸収(舌下・バッカル投与)】

口腔粘膜は薬物吸収部位としても機能します:

  • 舌下投与(Sublingual): ニトログリセリン錠等。舌下静脈叢から直接体循環に入る→初回通過効果を受けない→迅速な効果発現
  • バッカル投与(Buccal): 頬粘膜からの吸収。一部の鎮痛薬・ホルモン製剤
  • OTC薬での例: 舌下タイプの口腔内崩壊錠(OD錠)は厳密には「舌下吸収」でなく胃腸管吸収が主だが、崩壊が速く嚥下しやすい剤形

嚥下・消化器系の知識は、「なぜ食前・食後に服用するか」「なぜ錠剤を噛まずに飲み込むか」「なぜ横になって服用してはいけないか」等の服薬指導の根拠となります。この解剖生理の理解が、顧客への分かりやすい説明力に直結します。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第1節「消化器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

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