登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問11:人体の構造と働き(消化器系・胆嚢・膵臓)
胆嚢および膵臓の構造と機能に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア胆汁は胆嚢で産生・分泌され、食事の摂取に関わらず一定量が小腸(十二指腸)に常時分泌されている。
- イ膵液には消化酵素が含まれず、膵臓の役割は重炭酸塩によって胃酸を中和することのみであり、脂質やデンプンの分解には関与しない。
- ウ膵臓のランゲルハンス島(膵島)のβ細胞からはグルカゴンが分泌され、血糖値が低下したときに肝臓でのグリコーゲン分解を促進して血糖値を上昇させる。
- エ胆汁には消化酵素が含まれており、脂肪を直接分解する強い消化作用がある。
- オ総胆管は膵管と合流して十二指腸乳頭(ファーター乳頭)に開口し、胆汁と膵液が十二指腸に分泌される。正答
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正答はオです。
総胆管(肝臓・胆嚢からの胆汁の管)と膵管(膵液の管)は合流して十二指腸乳頭(ファーター乳頭・大十二指腸乳頭)に開口します。ここから胆汁と膵液が十二指腸に分泌されます。
誤りの選択肢を整理します。アは「胆汁は胆嚢で産生」が誤りで、胆汁は肝臓で産生され胆嚢で濃縮・貯蔵されます。イは「膵液には消化酵素が含まれず胃酸中和のみ」が誤りで、膵液はリパーゼ・アミラーゼ・トリプシン等の消化酵素を豊富に含みます。ウは「β細胞からグルカゴン」が誤りで、グルカゴンはα細胞から分泌されます(β細胞からはインスリン)。エは「胆汁に消化酵素が含まれる」が誤りで、胆汁は酵素でなく界面活性剤(胆汁酸塩)として脂肪を乳化します。
各選択肢の詳細解説:
- ア(誤): 胆汁は肝臓の肝細胞で産生(1日約600〜1000mL)し、胆管を通じて胆嚢に貯蔵・濃縮されます。胆嚢で約10倍に濃縮された胆汁は、食事(特に脂肪)摂取の刺激(CCK: コレシストキニン分泌)により十二指腸に排出されます。「常時分泌」ではなく「食事に応答して」が正確です。
- イ(誤): 膵液は膵臓の外分泌腺から分泌され、消化酵素を豊富に含みます。主要な消化酵素: リパーゼ(脂肪を脂肪酸とモノグリセリドに分解)・アミラーゼ(デンプン分解)・トリプシン/キモトリプシン(タンパク質分解・膵臓内ではトリプシノーゲン等の不活性型として存在)。重炭酸塩による胃酸中和も行いますが「酵素を含まず中和のみ」は誤りです。
- ウ(誤): ランゲルハンス島(膵島)には複数の細胞が存在します。α細胞(A細胞)→グルカゴン分泌(血糖上昇作用)、β細胞(B細胞)→インスリン分泌(血糖低下作用)。「β細胞からグルカゴン」は完全な誤りです。
- エ(誤): 胆汁は消化酵素を含みません。胆汁の主成分は胆汁酸塩(胆汁酸+タウリン/グリシン)で、界面活性剤(乳化剤)として脂肪を細かい粒子(乳化)にして膵リパーゼが働きやすくします。直接的な分解酵素はありません。
- オ(正): 総胆管(胆嚢管+総肝管が合流)は膵管(主膵管)と合流してファーター乳頭(大十二指腸乳頭)を形成し、十二指腸の下行部に開口します。この開口部はオッジ括約筋で制御されています。
胆嚢・膵臓・肝臓の関係図(概念的):
| 臓器 | 主な機能 |
|---|---|
| 肝臓 | 胆汁産生・物質代謝・解毒 |
| 胆嚢 | 胆汁の貯蔵・濃縮 |
| 膵臓(外分泌) | 膵液(消化酵素・重炭酸塩)産生 |
| 膵臓(内分泌・ランゲルハンス島) | インスリン(β細胞)・グルカゴン(α細胞)産生 |
【膵臓の内分泌・外分泌の詳細とインスリンの作用機序】
膵臓の二面性:
1. 外分泌機能(腺房細胞・導管):
- 産生: 膵液(1日約1〜2L)
- 組成: 水・重炭酸塩(胃酸中和)・タンパク質分解酵素(トリプシノーゲン・キモトリプシノーゲン・プロエラスターゼ)・リパーゼ・アミラーゼ・ヌクレアーゼ
- 活性化: トリプシノーゲンは小腸粘膜のエンテロキナーゼで活性化→トリプシン→他の酵素前駆体を活性化(カスケード)
- 意義: タンパク質分解酵素を不活性型で分泌する理由→膵臓自身のタンパク質を消化しないための防御機構
2. 内分泌機能(ランゲルハンス島・全膵臓の約1〜2%):
| 細胞型 | 分泌ホルモン | 主な作用 | 刺激 |
|---|---|---|---|
| α細胞(A細胞) | グルカゴン | 血糖上昇(グリコーゲン分解促進・糖新生) | 低血糖・アミノ酸 |
| β細胞(B細胞) | インスリン | 血糖低下(グルコース取り込み促進・グリコーゲン合成) | 高血糖・消化管ホルモン |
| δ細胞(D細胞) | ソマトスタチン | インスリン・グルカゴン分泌を抑制 | 高血糖・高アミノ酸 |
| PP細胞 | 膵ポリペプチド | 膵外分泌・胆嚢収縮の調節 | 食事 |
インスリンの詳細な作用機序:
1. 高血糖→β細胞のグルコーストランスポーター(GLUT2)がグルコースを取り込む
2. グルコース代謝→ATP産生→ATP感受性Kチャネル閉鎖
3. 細胞膜脱分極→電位依存性Ca²⁺チャネル開口
4. Ca²⁺流入→インスリン含有顆粒の開口分泌(エキソサイトーシス)
5. インスリンが血中へ→標的臓器(肝臓・筋肉・脂肪組織)のインスリン受容体(チロシンキナーゼ型)に結合
6. 筋肉・脂肪組織でGLUT4輸送体が細胞膜へ移動→グルコース取り込み増加
【胆汁の成分と脂肪吸収の連携機序】
胆汁の主要成分:
- 胆汁酸塩: 一次胆汁酸(コール酸・ケノデオキシコール酸)が腸内細菌で二次胆汁酸(デオキシコール酸・リトコール酸)に変換
- コレステロール: 水に溶けないコレステロールを胆汁酸塩・レシチンとミセルを形成して可溶化
- ビリルビン: ヘモグロビン由来の色素(胆汁の黄色・糞便の褐色の原因)
- 電解質: Na⁺・K⁺・HCO₃⁻等
脂肪消化・吸収の流れ:
1. 食事の脂肪(主にトリグリセリド)→胃で部分的な乳化
2. 十二指腸でCCK分泌→胆嚢収縮→胆汁放出
3. 胆汁酸塩が脂肪を乳化(細かい脂肪滴=乳化ミセルに)
4. 膵リパーゼが乳化ミセルに作用→脂肪酸+モノグリセリドに分解
5. 胆汁酸塩と分解産物が混合ミセルを形成→小腸絨毛の微絨毛に近接
6. 脂肪酸・モノグリセリドが小腸上皮細胞に拡散吸収
7. 小腸上皮内でカイロミクロン(リポタンパク質)に再合成→リンパ管(乳糜管)→体循環
胆汁酸の腸肝循環:
- 95%以上の胆汁酸が回腸末端で再吸収→門脈→肝臓で再利用(腸肝循環)
- この効率的な再利用機構により肝臓での胆汁酸新規合成の負担が軽減される
【OTC薬との関連:消化器系への影響と注意点】
登録販売者として知るべき胆嚢・膵臓と薬の関係:
1. 消化薬・胆汁補充薬: 胆汁分泌を促進する利胆薬(ウルソデオキシコール酸:ウルソ等)は胆汁中コレステロールを溶解させる作用を持つ(コレステロール系胆石の溶解)
2. NSAIDs・アスピリン: 胃・十二指腸潰瘍リスクがあり、膵臓にも影響する場合がある
3. アルコールと膵臓: 市販薬ではなくアルコール飲料だが、顧客への情報提供として「大量飲酒は急性膵炎・慢性膵炎のリスク」を知っておくと有用
4. 糖尿病患者へのOTC薬選択: インスリン分泌・血糖調節に関わる基礎疾患がある顧客への対応では、医師・薬剤師への確認を必ず促す(一部のOTC薬が血糖に影響する可能性)
胆嚢・膵臓の知識は「胃腸薬・消化薬」分野の理解の基盤となり、登録販売者試験第3章の「胃腸薬」問題でも関連知識として活用されます。
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 【二重正答を修正】当初は正答オ(総胆管と膵管がファーター乳頭に開口)と選択肢イ(膵液リパーゼ・アミラーゼ)が両方とも正しく、「正しいものを1つ選ぶ」設問で二重正答だった。選択肢イを「膵液には消化酵素が含まれず胃酸中和のみ」と誤りに変更して誤肢化し、正答をオに一意化(解説beginner/standardも整合修正)。胆汁=肝臓産生/胆嚢で濃縮、α細胞グルカゴン/β細胞インスリン、胆汁=酵素でなく乳化、の記述は手引き整合。段差性維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第1節「消化器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。