登録販売者
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問12|呼吸器系・鼻腔〜肺胞・繊毛・ガス交換の構造

問題

登録販売者 | 第2章 人体の働きと医薬品 | (手引き令和8年4月版・令和8年5月施行改正反映)

呼吸器系の構造と機能に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。

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答え合わせ

正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はイです。「末梢の細気管支に至るまで全区間に軟骨が存在する」は誤りです。

気管・気管支の上〜中位まで(主気管支・葉気管支・区域気管支)には軟骨が存在しますが、細気管支(直径約1mm以下)では軟骨がなくなります。細気管支は平滑筋と弾性組織で管径を調節しています。喘息では気管支(特に細気管支)の平滑筋が収縮して気道が狭くなります。

他の選択肢はすべて正しい記述です。アの鼻腔の加温・加湿・防御機能、ウの肺胞でのガス交換、エの繊毛運動による粘液輸送(粘液繊毛クリアランス)、オの右肺3葉・左肺2葉の解剖はすべて正確な記述です。

各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 鼻腔粘膜の血管は「海綿体様」の構造を持ち、空気の温度・湿度を調整します。鼻毛(鼻腔前庭部)と粘液(鼻粘膜腺からの分泌)が10μm以上の粒子をトラップします。鼻腔通過時に吸入空気はほぼ37℃・100%湿度に整えられます。
  • イ(誤・正答): 気管(trachea)から主気管支・葉気管支・区域気管支(直径約4mm程度まで)には気管軟骨が存在しますが、細気管支(bronchiole、内径約1mm以下)では軟骨がなくなります。軟骨がある気管支=「気管支(bronchus)」、軟骨のない部位=「細気管支(bronchiole)」の区別は解剖学的に重要です。
  • ウ(正): 肺胞(alveolus)の上皮は2種類の細胞で構成されます。Ⅰ型肺胞上皮細胞(扁平・ガス交換担当・約95%を占める)とⅡ型肺胞上皮細胞(肺サーファクタント産生・表面張力低下)。ガス交換は分圧差による拡散で行われます(O₂: 肺胞→血液、CO₂: 血液→肺胞)。
  • エ(正): 粘液繊毛輸送(mucociliary clearance)は気道の重要な防御機構です。繊毛は毎秒10〜15回程度打動し、粘液層(ゾル層+ゲル層の二層構造)とともに異物・細菌を上方(口腔方向)へ輸送します。タバコ煙・大気汚染物質はこの繊毛機能を障害します。
  • オ(正): 右肺3葉(上・中・下)、左肺2葉(上・下)は基本的な解剖です。左肺は心臓の左偏在から心切痕があり、より小さい(右肺より容量が少ない)。

呼吸器系の区分:

区分解剖学的構造軟骨の有無
上気道鼻腔・咽頭・喉頭あり(喉頭軟骨等)
下気道(伝導部)気管〜区域気管支〜細気管支気管〜区域気管支まであり / 細気管支なし
下気道(呼吸部)呼吸細気管支〜肺胞管〜肺胞なし

【ガス交換の物理化学的基盤:拡散とヘモグロビンの役割】

肺胞でのガス交換は「拡散(受動輸送)」で行われ、フィックの拡散法則に従います:

J = A × D × (P₁ - P₂) / d

  • J: 単位時間のガス拡散量
  • A: 拡散面積(肺胞の総面積: 約70〜100m²)
  • D: 拡散係数(CO₂の方がO₂より約20倍高い→CO₂の方が拡散しやすい)
  • P₁-P₂: 分圧差
  • d: 拡散距離(肺胞上皮+基底膜+毛細血管内皮: 約0.5〜2μm)

酸素の分圧(mmHg):

  • 大気: 約159mmHg(O₂ 21% × 760mmHg)
  • 肺胞内空気: 約100mmHg(換気・水蒸気での希釈)
  • 静脈血(肺毛細血管入口): 約40mmHg
  • 動脈血(肺毛細血管出口): 約100mmHg(肺胞と平衡)

O₂輸送とヘモグロビン(Hb):

  • 血中O₂の約97%はHbと結合(HbO₂: オキシヘモグロビン)・約3%が血漿溶解
  • 酸素解離曲線(シグモイド型): O₂分圧が低いほどHbからO₂が解離しやすい
    • ボーア効果(Bohr effect): CO₂増加・pH低下・温度上昇でHbのO₂親和性低下→組織へのO₂供給増加
  • CO₂の輸送: 重炭酸イオン(HCO₃⁻)として70%・HbCO₂(カルバミノ化合物)として20〜25%・溶解型5〜10%

【繊毛機能とその障害:OTC薬の喀痰溶解薬との関連】

繊毛運動の詳細:

  • 繊毛は単一細胞に約200本存在(1cm²当たり数億本)
  • 動力源: ATP(ダイニンATPアーゼが軸糸を動かす)
  • 9+2構造(微小管): 外周9対の二連微小管+中心2本
  • 打動パターン: 能動期(速い打動・異物を口側へ)と回復期(遅い復位運動)

繊毛機能を障害する要因:

要因機序
タバコ煙アクロレイン等が繊毛を直接傷害・粘液産生過多
乾燥した空気粘液ゾル層の水分蒸発→繊毛打動障害
ウイルス感染繊毛上皮細胞の破壊
一次繊毛ジスキネジア(PCD)遺伝性の繊毛構造異常(ダイニンアームの欠損等)→慢性気道感染

OTC薬「去痰薬」の作用機序と繊毛との関係:

  • ブロムヘキシン: 気道分泌腺を刺激してサラサラした分泌物を増やす→繊毛輸送を助ける
  • アセチルシステイン(海外のOTC・日本は処方): ジスルフィド結合を切断→粘液のジェル構造を壊す→粘液を液化
  • カルボシステイン(ムコダイン等): 杯細胞から産生される粘液の組成を改善→繊毛輸送を正常化

登録販売者実務: 「たんがからむ」訴えに対して、喫煙者・加齢・感染後等の背景を聞き、長引く場合は受診勧奨を行う。OTC去痰薬(鎮咳去痰薬)の適切な情報提供が求められます。

【肺サーファクタントと呼吸窮迫症候群(RDS)の原理】

肺サーファクタント(界面活性物質):

  • 産生: Ⅱ型肺胞上皮細胞(肺胞の表面を覆う単分子層)
  • 成分: DPPC(ジパルミトイルホスファチジルコリン)等のリン脂質が主成分
  • 機能: 肺胞の表面張力を低下させ、小さい肺胞が虚脱するのを防ぐ

ラプラスの法則との関係: 球形の膜の内圧 = 4T/r (T=表面張力、r=半径)

→ 半径が小さい肺胞ほど大きな圧力が必要→サーファクタントなしでは小さい肺胞が虚脱し、大きい肺胞に空気が逃げる(無気肺の形成)

新生児呼吸窮迫症候群(nRDS/IRDS):

  • 原因: 早産児(妊娠34週未満)でサーファクタント産生が不十分
  • 症状: 生後数時間以内の呼吸困難・チアノーゼ
  • 治療: 人工的サーファクタントの気管内投与・人工呼吸

この知識は登録販売者試験の範囲を超えますが、「なぜ鼻呼吸が重要か」「なぜ去痰薬が粘液の性状を変えるか」「なぜ早産児は呼吸が苦しいか」という背景理解として、実務での説明力向上に役立ちます。

【呼吸器系OTC薬の選択と気管支・細気管支の薬理学的背景】

気管支の緊張(攣縮 vs 弛緩)の調節:

  • 交感神経(β₂受容体): 気管支拡張(喘息薬: β₂刺激薬の標的)
  • 副交感神経(ムスカリン受容体): 気管支収縮(抗コリン薬で拡張できる)
  • ヒスタミン(H₁受容体): 気管支収縮(アレルギー性気道炎症の主役の一つ)

OTC鎮咳薬・去痰薬選択の考え方:

  • 空咳(痰のない咳): 咳中枢を抑制する鎮咳薬(コデイン・ジヒドロコデイン・デキストロメトルファン等)
  • 湿性咳(痰がらみ): 去痰薬(粘液の溶解・排出促進)を中心に使用
  • 喘息様の息苦しさ・ゼーゼー: OTC薬の限界・受診勧奨が必要

これらの判断の根拠として、呼吸器系の解剖・生理の正確な理解が登録販売者の実務力の基盤となります。

この問題の根拠根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-1-2)「呼吸器系」
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章Ⅰ-1-2)「呼吸器系」 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。出題範囲・法令・手引きは改正されることがあるため、最新の内容は各都道府県・厚生労働省の公式情報をご確認ください。