登録販売者 第2章 人体の働きと医薬品 問9:人体の働きと医薬品
医薬品の剤形および投与経路に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア口腔内崩壊錠(OD錠)は、口の中で唾液により速やかに崩壊する錠剤であり、水なしまたは少量の水で服用できるため、嚥下困難な患者や外出先での服用に向いている。
- イカプセル剤は、主薬をゼラチン等のカプセルに充填した剤形で、主薬の苦味・臭いのマスキングや、内容物の安定性確保などのメリットがある。
- ウ坐薬(直腸坐薬)は、直腸粘膜から吸収されるため、経口投与と全く同様に肝臓の初回通過効果を受ける。正答
- エ貼付剤(経皮吸収型製剤)は、皮膚を通じて薬物を全身に吸収させる剤形であり、経口投与に比べて初回通過効果を受けにくい利点がある。
- オ点眼薬は結膜嚢に投与する液剤で、結膜・角膜から局所的に作用するが、鼻涙管を通じて全身循環に吸収される可能性もあるため、添付文書の全身性副作用に関する記載も確認する必要がある。
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正答はウ(誤っているもの)です。
坐薬(直腸坐薬)は、直腸下部から吸収された場合、下腸間膜静脈→下大静脈→全身循環というルートをたどり、肝臓を経由しない(門脈を通らない)ため、初回通過効果を受けにくいのが特徴です。「経口投与と全く同様に肝臓の初回通過効果を受ける」という記述は誤りです。
アは口腔内崩壊錠の特性を正しく述べています。イはカプセル剤のメリットを正確に説明しています。エは貼付剤が初回通過効果を回避できることを正しく述べています。オも正しく、点眼薬が鼻涙管を通じて全身吸収されることを正確に述べています。
各選択肢の解説:
- ア(正): OD錠(Orally Disintegrating tablet)は口腔内でわずかな水分で速やかに崩壊する設計の錠剤です。崩壊後は嚥下しやすい形態になります。嚥下障害のある高齢者・小児・水を持ち歩けない状況での服用に適します。ただし水なしで服用後、薬が食道に残ることがないよう少量の水を飲むことが推奨される場合もあります。
- イ(正): カプセル剤には硬カプセル(粉末・顆粒・小錠剤を充填)と軟カプセル(液体・懸濁液を充填)があります。主な利点は①苦味・異臭のマスキング②吸湿性・光感受性成分の保護③内容物の安定性④正確な用量の供給です。ゼラチンアレルギーがある患者には注意が必要です。
- ウ(誤・正答): 直腸坐薬の吸収経路は直腸粘膜の位置によって異なります。直腸下部(肛門に近い部分)からの吸収:下痔静脈叢→下腸間膜静脈→下大静脈→全身循環(門脈を通らず初回通過効果なし)。直腸上部からの吸収:上痔静脈→上腸間膜静脈→門脈→肝臓(初回通過効果あり)。全体としては経口投与より初回通過効果を受けにくいため「経口投与と全く同様」は誤りです。
- エ(正): 経皮吸収型製剤(貼付剤)は皮膚から吸収→皮下毛細血管→全身循環というルートで、門脈・肝臓を経由しません。初回通過効果がないため、肝臓での初回代謝が大きい薬物(ニトログリセリン等)の全身作用を得るために経皮投与が選択されます。また持続的な血中濃度維持が可能な点も利点です。
- オ(正): 点眼薬は結膜嚢に投与されると結膜・角膜で局所に作用しますが、余剰分は鼻涙管(涙腺→鼻腔を結ぶ管)を経由して鼻咽頭・消化管に移行し、全身循環に吸収されることがあります。これにより、充血除去薬(ナファゾリン等)の全身性副作用(高血圧患者での血圧上昇等)・抗緑内障薬(β遮断薬点眼)の全身性β遮断作用(喘息患者での気管支収縮)が生じることがあります。
【剤形設計の理論と投与経路の選択:製剤学の視点から】
剤形(Dosage Form)は単なる「薬の形」ではなく、薬物動態(吸収速度・バイオアベイラビリティ・作用持続時間)を大きく規定する重要な要素です。
経口剤の種類と特性:
| 剤形 | 崩壊・溶解時間 | 特徴 |
|---|---|---|
| 普通錠(素錠) | 標準 | 最も一般的・安価 |
| フィルムコーティング錠 | 標準〜やや遅め | 苦味マスキング・外観改善 |
| 腸溶性コーティング錠 | 腸で溶解 | 胃酸に不安定な薬物・胃障害軽減 |
| 徐放性(SR)錠・カプセル | 徐々に溶解 | 血中濃度を長時間維持・1日1回投与可能 |
| OD錠(口腔内崩壊錠) | 口腔内で速やかに | 嚥下困難患者・服用利便性向上 |
| 顆粒剤 | 速い(錠剤より) | 用量調節しやすい・小児向け |
| 散剤・細粒剤 | 速い | 小児・高齢者の嚥下困難者向け |
腸溶性製剤の重要性:
一部の薬物(プロトンポンプ阻害薬・一部のNSAIDs)は腸溶性コーティングにより胃での溶解を防ぎ、小腸で溶解・吸収させます。これにより胃粘膜障害を軽減しながら有効な血中濃度を達成できます。
【徐放性製剤の設計原理と臨床的意義】
徐放性製剤(Sustained Release / Controlled Release / Extended Release)は、薬物を一定速度で放出する設計の製剤です。
利点:
- 血中濃度の変動(ピーク↑・トラフ↓)が少ない→副作用と効果不足の時間帯を減らす
- 投与回数減少(1日1〜2回に)→コンプライアンス向上
- 夜間も有効濃度維持(就寝前1回投与で翌朝まで効果)
注意点:
- 徐放錠・徐放カプセルを粉砕・噛み砕くと設計が崩れ、急速に全量が溶解→過量になり危険(特に降圧薬・抗不整脈薬等では命に関わる)
- OD錠でも徐放性を持つものがあり、「OD錠だから噛んでもよい」は誤り
【坐薬の実用的な使用法と初回通過効果の理解】
坐薬の挿入位置と初回通過効果の関係:
- 肛門括約筋から2cm程度までの挿入:下部直腸粘膜で吸収→下痔静脈叢→下大静脈→心臓(初回通過効果なし)
- 2cm以上深く挿入:上部直腸粘膜→上痔静脈→門脈→肝臓(一部初回通過効果を受ける)
OTC坐薬の例:
- 解熱鎮痛坐薬(アセトアミノフェン、ジクロフェナク等):経口服用困難・嘔吐・乳幼児に使用。
- 痔疾患用坐薬:局所作用が主だが全身吸収もある成分あり
【点眼薬の鼻涙管吸収:全身副作用の予防法】
点眼後の鼻涙管経由での全身吸収を低減させる方法(患者への指導):
1. 点眼後に目頭(涙嚢部)を指で数分間押さえる(鼻涙管を圧迫して薬液の流入を防ぐ)
2. 点眼後は目を閉じたまま数分間保持する(まばたきで薬液が排出される)
3. 1回の点眼量は1滴で十分(結膜嚢の容量は約30μL・1滴は約40μL→2滴以上は溢れる)
全身副作用リスクの高い点眼薬:
- ベタキソロール・チモロール(β遮断薬)点眼:喘息患者で気管支収縮誘発リスク→喘息禁忌
- ブリモニジン(α₂アゴニスト)点眼:眠気・血圧低下の全身副作用
【試験での位置づけ】
剤形問題は「坐薬は初回通過効果を受けにくい(経口より)」「貼付剤・舌下も初回通過効果なし」「点眼薬でも全身吸収がある」の3点が頻出ポイントです。「OD錠は水なしで服用できる」「腸溶錠は粉砕禁止(類推)」も出題されます。投与経路と初回通過効果の関係を表で整理しておくことが第2章の薬物動態問題への最短経路です。
【根拠】厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章第6節
<!-- 監修確定 2026-06-06(legal-reviser): 剤形・投与経路を手引き・標準薬剤学と突合。①坐薬(直腸坐薬)は直腸下部から吸収されると門脈を経ず初回通過効果を受けにくいのが核心で、設問ウ「経口と全く同様に初回通過効果を受ける」は明白な誤り→正答ウは一意に確定。②OD錠の特性、カプセル剤のマスキング/安定性、貼付剤が初回通過効果を回避、点眼薬が鼻涙管経由で全身吸収されうる、はいずれも正確。③坐薬の直腸下部→下大静脈/上部→門脈の解剖、点眼後の涙嚢部圧迫、徐放錠の粉砕禁止は教育的補足で正答判定に影響なし。設問・正答の事実誤りなし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(各都道府県が公表する試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(令和8年4月版)第2章 第6節「薬の体内での働き」(剤形・投与経路の特性) 厚生労働省「試験問題の作成に関する手引き」(2026版相当)に準拠し、章節を明記しています。