労働衛生(有害業務以外)39食中毒・感染症

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問39:食中毒・感染症

腸管出血性大腸菌O157による食中毒に関する記述として、**誤っているものを1つ**選べ。

  • 腸管出血性大腸菌O157はベロ毒素(志賀毒素)を産生し、溶血性尿毒症症候群(HUS)を引き起こすことがある。
  • 感染に必要な菌量は100個程度と少なく、少量の菌でも感染が成立しやすい。
  • 主な症状は激しい腹痛と血便であり、発熱を伴うことは少ない。正答
  • 潜伏期間は通常3〜8日であり、細菌性食中毒の中では比較的長い。
  • O157は75℃・1分間の加熱で死滅するため、食肉は十分に加熱して喫食することが重要である。
正答:主な症状は激しい腹痛と血便であり、発熱を伴うことは少ない。

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腸管出血性大腸菌O157は、感染すると激しい腹痛・血便に加え、発熱(38℃前後)も多くみられます。選択肢ウは「発熱を伴うことは少ない」としており、これが誤りです。ベロ毒素が腸管を傷害して出血性腸炎を起こし、重症例では溶血性尿毒症症候群(HUS)に進行します。感染菌量が100個程度と少ないため、加熱不十分な食肉や、二次汚染された食品を介して集団感染が起きやすい点も覚えてください。

標準試験対策の基準レベル

O157食中毒の臨床像を整理します。潜伏期間は3〜8日(平均4日)で、初期症状は水様下痢ですが、やがて激しい腹痛と血便(出血性腸炎)に移行します。発熱(37〜38℃台)も高頻度で認められるため、「発熱を伴うことは少ない」とするウが誤りです。ベロ毒素(Vero toxin, VT)は志賀毒素とも呼ばれ、VT1・VT2の2型が知られます。VT2はHUSとの関連が強く、小児・高齢者では透析や生命予後に影響します。感染菌量が約100個と極めて少ない(他の大腸菌性食中毒は10^6〜10^8個必要)点が流行の拡大要因です。加熱(75℃・1分)で不活化されるため、食肉の中心部まで加熱することが最も有効な予防策です。調理器具の洗浄・消毒と手洗いによる二次汚染防止も重要です。

上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

#### 1. 病原体の分子機構

腸管出血性大腸菌(EHEC)O157:H7はグラム陰性桿菌であり、大腸菌(Escherichia coli)の一血清型です。病原性の中核はファージ(λ型バクテリオファージ)に組み込まれたstx1・stx2遺伝子がコードするベロ毒素(志賀毒素)にあります。VT2(stx2)はリボソーム60Sサブユニットの28S rRNAに作用してタンパク質合成を不可逆的に阻害し、血管内皮細胞や腎糸球体の傷害を招きます。このため本毒素が腸管外病変である溶血性尿毒症症候群(HUS)の主たる原因となります。

#### 2. 臨床像と発熱の位置づけ

感染初期の主症状は水様下痢・腹痛であり、1〜3日後に血便(出血性腸炎)へ移行します。発熱は37〜38℃台が多く、感染者の大多数に認められることから、「発熱を伴うことは少ない」という選択肢ウは明確な誤りです。HUSへの進行は感染者の5〜10%(小児はやや高率)に起こり、溶血性貧血・血小板減少・急性腎不全の三徴を呈します。抗菌薬(特にニューキノロン系・ST合剤)の使用はベロ毒素の遊離を促進しHUSリスクを高める可能性があるとして、わが国の治療ガイドラインでは抗菌薬投与に慎重な立場をとっています。

#### 3. 感染経路と感染菌量の意義

O157の最小感染量は約100個(一部の報告では10個以下)と、サルモネラ(10^5個)・カンピロバクター(500個)などと比較しても際立って少ない。このため、食品だけでなく人→人の糞口感染や、牧場・プール・河川水を介した集団感染も起きやすい特徴があります。主要感染源は牛の腸管であり、食肉(特にひき肉・牛レバー刺し)・野菜(浅漬け・スプラウト)・飲料水が媒体となります。2012年の法改正により生食用牛レバーの提供が禁止されたことも重要な法規知識です。衛生管理者としては、食品取扱者の手洗い・器具の次亜塩素酸ナトリウム消毒・加熱基準(中心部75℃・1分)の周知徹底が実務上の対策の柱となります。

#### 4. 衛生管理者試験での頻出ポイントと類似菌との区別

試験では「O157=ベロ毒素=HUS」「少量感染(約100個)」「潜伏期3〜8日(比較的長い)」が頻出の正しい肢として提示されます。一方で「発熱が少ない」「加熱で死滅しない」「潜伏期が短い」などが誤肢として登場します。類似点が問われる病原体として、腸管侵入性大腸菌(EIEC)や腸管病原性大腸菌(EPEC)との区別も押さえておくとよいでしょう。EIECは細胞侵入性で赤痢に類似した症状を示しますが、ベロ毒素は産生しません。O157の届出義務(感染症法3類感染症)も衛生管理者が知っておくべき法令知識です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 食品衛生法および厚生労働省「食中毒統計資料」・腸管出血性大腸菌感染症に関する確立した感染症学的事実。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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