衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問41:救急処置
成人に対する一次救命処置(BLS)に関する記述として、**誤っているものを1つ**選べ。
- ア反応がなく正常な呼吸がない(または判断に迷う)場合は、直ちに胸骨圧迫を開始する。
- イ胸骨圧迫は胸の真ん中(胸骨の下半分)に手を重ねて置き、1分間に100〜120回のペースで行う。
- ウ胸骨圧迫の深さは少なくとも5cmとし、6cmを超えないように圧迫する。
- エ人工呼吸が実施できる場合は、胸骨圧迫30回に対して人工呼吸を3回の割合で行う。正答
- オAEDは電源を入れた後、音声ガイダンスに従って操作し、電気ショックを行う際は傷病者に触れないようにする。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。
心肺蘇生の人工呼吸の比率は「胸骨圧迫30回:人工呼吸2回」が正しい比率です。選択肢エは「3回」としており、これが誤りです。胸骨圧迫は胸の真ん中(胸骨下半分)に手を置き、1分間に100〜120回のテンポで深さ5〜6cmを目安に強く・速く・絶え間なく押します。AEDは音声に従って操作し、ショック前は傷病者から離れることが安全上の大原則です。脈の確認は行わず、呼吸の確認のみで胸骨圧迫を開始します。
JRCガイドライン2020に基づく成人BLSの手順を確認します。倒れている人を発見したら、肩を叩きながら「大丈夫ですか」と呼びかけ、反応と正常呼吸を同時に10秒以内で確認します。反応なし・呼吸なし(または死戦期呼吸)と判断したら、119番・AED手配を依頼してただちに胸骨圧迫を開始します。圧迫対換気の比率は30:2であり、選択肢エの「3回」は誤りです。圧迫の深さは5〜6cm(過去の「少なくとも5cm」から上限6cmが明示)、テンポ100〜120回/分、胸壁の完全な弛緩を意識します。訓練を受けていない場合や疲労時は「胸骨圧迫のみのCPR」も推奨されており、絶え間ない圧迫が血流維持の鍵です。AED到着後はパッドを装着し、解析・ショックを音声ガイダンス通りに実施します。ショック直前は「離れてください」と声をかけ全員が傷病者から離れることを徹底します。
#### 1. BLSの生存連鎖における位置づけ
一次救命処置(BLS)は「生存連鎖(Chain of Survival)」の第1〜3リンク——早期認識と通報・早期CPR・早期除細動——を担います。病院外心停止(OHCA)の生存率は、目撃者によるCPRが行われた場合と行われない場合で2〜3倍の差があることがエビデンスとして確立しており、職場の衛生管理者が全従業員にBLSを教育する意義はここにあります。JRCガイドライン2020はAHA(米国心臓協会)ガイドライン2020と同時改訂されており、成人・小児・新生児のアルゴリズムが整理されました。
#### 2. 胸骨圧迫の要件と圧迫:換気比
JRCガイドライン2020が示す成人CPRの要件は次の通りです。圧迫部位は胸骨下半分の中央、手掌基部を重ねて置く。深さは5〜6cm(6cmを超えると肋骨骨折・内臓損傷リスクが上昇)。速さは100〜120回/分(120回超では深さが浅くなる傾向)。毎圧迫後に胸壁を完全に弛緩させて心室への血液還流を確保する。圧迫中断時間は10秒以内に収める。圧迫対換気比は30:2——これが国際標準です。「3回」とする選択肢エはいずれのガイドラインとも一致せず、明確な誤りです。人工呼吸1回の吹き込みは約1秒、胸が上がる程度の量を目安とします。
#### 3. AED操作と安全確認
AEDは電源を入れると音声が解析〜ショックの全手順を誘導します。パッドの貼付位置は右鎖骨下・左側胸部(脇の下)が基本です。ペースメーカー植込み部位・貼り薬(ニトログリセリンパッチ等)・水濡れ・胸毛の多い場合はそれぞれ対応が必要です。電気ショック実施前には「離れてください、離れます、ショックを行います」と宣告し、全員が傷病者から完全に離れていることを目視確認してからボタンを押します。ショック後はただちに胸骨圧迫を再開し、2分(5サイクル)後に再解析します。AEDがない場合や充電中でも胸骨圧迫を止めないことが重要です。
#### 4. 職場での普及と衛生管理者の実務
労働安全衛生規則では救急用具の備え付けを義務づけており(安衛則第634条等)、AED設置義務は法令上は施設種別によって異なりますが、厚生労働省通達で職場への設置が強く推奨されています。衛生管理者は定期的なBLS訓練(年1回以上が望ましい)の企画・実施、AEDの設置場所周知・点検(毎月のバッテリー・パッド有効期限確認)、救急対応フロー(119番通報担当・CPR担当・AED搬送担当の役割分担)の整備を担います。試験では「圧迫30:換気2」「100〜120回/分」「5〜6cm」「ショック前に全員離れる」「脈確認は行わない」が頻出の正しい肢です。誤肢には「換気3回」「脈確認を必ず行う」「AED到着まで圧迫を止める」等が登場します。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 日本蘇生協議会(JRC)「JRC蘇生ガイドライン2020」および厚生労働省の一次救命処置に関する確立した医学的手順。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。