衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問42:救急処置
骨折の応急処置に関する記述として、**正しいものを1つ**選べ。
- ア開放骨折(骨が皮膚を貫通している状態)では、露出した骨を手で整復してから副木固定を行う。
- イ副木を当てるときは、骨折した部位のみを固定し、隣接する関節は固定の範囲に含めない。
- ウ前腕の骨折では、副木を当てて肘関節と手関節の両方を含む範囲を固定する。正答
- エ副木固定後は、患肢を心臓より低い位置に下げて血流を促進させる。
- オ副木固定に際してはできるだけ強く縛り、骨折部の固定を確実にする。
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骨折の副木固定では「骨折部位を挟む上下2つの関節を含む範囲」を固定するのが原則です。前腕の場合、骨折部の上が肘関節・下が手関節ですから、両方を含めて固定する選択肢ウが正解です。アは開放骨折で骨を手で整復することは感染リスクと追加損傷のため禁止。イは「隣接関節を含めない」としており誤り。エは患肢は心臓より高く(挙上)して腫脹を抑えるが正しく、低くする記述は誤りです。オは強く縛りすぎると血行障害を招くため誤りです。
骨折応急処置の基本原則を整理します。副木固定の目的は骨折端の動揺を防いで痛みを軽減し、血管・神経への2次損傷を防ぐことです。固定範囲の原則は「骨折部を挟む2関節を含む」ことです。前腕(橈骨・尺骨)骨折では肘関節から手関節まで、下腿(脛骨・腓骨)骨折では膝関節から足関節まで固定します。これが選択肢ウの内容であり、正解です。各選択肢の誤りの根拠は次の通りです。ア:開放骨折での骨の整復は二次感染と神経・血管損傷のリスクがあり、露出した骨は清潔なガーゼで覆うにとどめる。イ:「隣接関節を含めない」は固定原則に反する。エ:腫脹・内出血を防ぐため患肢は心臓より高く挙上するのが正しい。オ:強く縛りすぎると末梢の血行障害(コンパートメント症候群の誘因)が生じる。縛る強さは指が1〜2本入る程度が目安です。固定後は末梢の感覚・色調・温度・脈拍を定期的に確認します。
#### 1. 骨折の分類と応急処置の方向性
骨折は皮膚損傷の有無により閉鎖骨折(単純骨折)と開放骨折(複雑骨折)に大別されます。開放骨折は骨端が皮膚外に露出または骨折端が皮膚を内側から穿破した状態であり、創部からの細菌侵入・骨髄炎リスクが高いため、救急現場での整復(元の位置に戻す操作)は絶対禁忌です。露出骨は清潔なガーゼや布で覆い、搬送を優先します。閉鎖骨折では骨折部の動揺防止が最優先であり、副木固定がその主手段です。
#### 2. 副木固定の原則と前腕骨折への適用
副木固定の3原則は、(1)「骨折部を挟む2関節を固定」、(2)「患肢をできる限り動かさずに固定する」、(3)「縛り強さは末梢血流を妨げない程度(指1〜2本が入る余裕)」です。前腕骨折に適用すると、肘関節(近位)と手関節(遠位)の両方を副木の範囲に含める必要があります。選択肢ウはこの原則を正確に述べており正解です。副木の素材は板・傘・折りたたんだ雑誌・段ボールなど現場にある硬質なものが代用できます。固定後は三角巾やスリングで患肢を胸の前に吊るし、心臓より高く挙上(患肢挙上の原則:RICE原則のE=Elevation)して腫脹・内出血を最小化します。
#### 3. コンパートメント症候群と神経・血管確認の重要性
過度な縛り付けや骨折後の急激な腫脹は、筋膜で囲まれた閉鎖腔内圧が上昇するコンパートメント症候群を引き起こす危険があります。前腕のコンパートメント症候群では6時間以内に減張切開を行わないと筋壊死・神経障害(フォルクマン拘縮)が不可逆的に進行します。応急処置後は5P(Pain・Pallor・Pulselessness・Paresthesia・Paralysis:疼痛・蒼白・無脈・知覚異常・麻痺)を定期的に確認することが重要です。固定後に末梢部のチアノーゼや冷感があれば締め付けを緩め、直ちに救急搬送します。
#### 4. 試験頻出ポイントと職場教育への応用
衛生管理者試験では「副木固定=骨折部を挟む2関節」「開放骨折の整復は禁忌」「患肢挙上(心臓より高く)」「縛りすぎると血行障害」が繰り返し出題されます。誤肢として「骨折部だけ固定」「患肢を低くする」「できるだけ強く縛る」が定番です。職場救急教育では、副木固定の実習(身近な素材での代用固定)と骨折疑い時の判断フロー(動かさない・固定・搬送・経過観察)を訓練に組み込むことが衛生管理者の実務上の責務です。労働安全衛生規則第634条が定める救急箱への副木・三角巾の備え付け義務も確認しておきましょう。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 救急救命に関する確立した医学的原則(骨折固定の原則:骨折部を挟む2関節の固定)および厚生労働省の救急処置指針。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。