問題
職場における熱中症の応急処置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはオです。「Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度に関わらず一度でも熱中症を発症したら必ず医療機関を受診」という一律の扱いは、重症度に応じた対応と合いません。Ⅰ度(軽症)は、涼しい場所へ移して体を冷やし、水分・塩分を自分で摂ってもらい、誰かが付き添って見守る「現場での応急処置で対応できる軽症」とされています。意識がおかしい、自分で水分・塩分を摂れない、処置をしても症状が改善しないときはⅡ度以上と判断し、すぐに病院へ搬送します。
判断に迷う場合は、#7119 などで専門機関や医療機関に相談します。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 熱中症を疑ったときにまず行うのは、風通しのよい日陰やクーラーの効いた室内等への避難です。避難させたうえで衣服を緩め、体を冷やします。
- イ(正): 応答が明瞭で意識がはっきりしているなら、冷やした水分を口から与えます。大量に汗をかいた場合は経口補水液やスポーツドリンク等が最適です。一方、呼びかけへの反応がおかしい・答えがない(意識障害がある)ときは水分が気道に流れ込むおそれがあり、口から飲んでもらうのは禁物で、病院での点滴が必要です。
- ウ(正): 氷のう等を前頚部(首の付け根)の両側、腋窩部(わきの下)、鼠径部(大腿の付け根の前面)に広く当てて、皮膚直下を流れている血液を冷やすことが有効とされています。
- エ(正): Ⅰ度は「現場での応急処置で対応できる軽症」と位置づけられ、涼しい場所での安静・冷却・水分と塩分の補給でよくなれば軽症と判断されます。ただし、付き添って見守り、改善しなければ病院へ搬送します。
- オ(誤): Ⅰ度で応急処置により回復した場合まで「必ず受診」とする定めはありません。重症度に応じて対応を分けるのが原則であり、「重症度に関わらず一律に必ず受診」という表現が誤りです。
【理論的背景】
暑いところで体温が上昇すると、体は放熱のために皮膚血管を拡張して皮膚への血流量を増やし、汗が皮膚表面で蒸発するときの気化熱で体温を下げようとします。この調節が追いつかなくなると熱中症が起こります。日本救急医学会は熱中症の重症度を「具体的な治療の必要性」の観点から、Ⅰ度(現場での応急処置で対応できる軽症)、Ⅱ度(病院への搬送を必要とする中等症)、Ⅲ度(入院して集中治療の必要性のある重症)に分類しています。
熱中症の症状と分類(厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」表2より):
| 分類 | 主な症状 | 従来の呼び方 |
|---|---|---|
| Ⅰ度 | めまい・生あくび・失神(立ちくらみ)、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、大量の発汗 | 熱失神・熱痙攣 |
| Ⅱ度 | 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、集中力や判断力の低下 | 熱疲労 |
| Ⅲ度・Ⅳ度 | 意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温 | 熱射病・重度の日射病 |
重症度を判断するポイントは「意識がしっかりしているか」「水を自分で飲めるか」「症状が改善したか」の3点です。少しでも意識がおかしい場合はⅡ度以上と判断して病院へ搬送し、「意識がない」場合はすべてⅢ度として扱います。
【実務・条文構造】
熱中症を疑ったときの応急処置(環境省「熱中症環境保健マニュアル」):
Step 1: 涼しい環境への避難
- 風通しのよい日陰や、できればクーラーが効いている室内等に避難させる
Step 2: 脱衣と冷却
- Ⅰ度・Ⅱ度: 衣服を緩め、皮膚を濡らしてうちわや扇風機で扇ぐ、氷のう等を首の付け根の両側・わきの下・足の付け根に当てる
- Ⅲ度(意識障害がある): 冷却はできるだけ早く行い、救急車を要請する場合も到着前から冷却を開始する。労作性熱射病では全身を氷水(冷水)に浸ける「氷水浴/冷水浴法」が最も体温低下率が高いとされるが、医療有資格者を配置し直腸温を継続的にモニターできる環境で行う。準備がない場合は、水道につないだホースで全身に水をかけ続ける「水道水散布法」が推奨される
Step 3: 水分・塩分の補給
- 意識がはっきりしていれば、冷やした水分を自分で飲んでもらう(経口補水液・スポーツドリンク、食塩水(水1Lに1〜2gの食塩)も有効)
- 意識障害がある、吐き気・嘔吐がある場合は、口から水分を飲ませない
Step 4: 医療機関への搬送
- 自力で水分を摂取できないときは、緊急で医療機関に搬送することが最優先
- 搬送時や応急処置の際は、必ず誰かが付き添う
職場では、事業者は熱中症を生ずるおそれのある作業を行うとき、あらかじめ、熱中症の自覚症状がある場合や他の作業従事者が熱中症の疑いを発見した場合の報告体制を整備して周知し(安衛則第612条の2第1項)、作業場ごとに作業からの離脱・身体の冷却・必要に応じた医師の診察等の措置の内容と実施手順を定めて周知しなければなりません(同条第2項)。また、多量の発汗を伴う作業場には塩及び飲料水を備えなければなりません(安衛則第617条)。
【試験での位置づけ】
熱中症の応急処置問題では「最初の対応は涼しい場所への避難(ア正)」「意識障害がある場合は口から水を与えない(イ正)」「冷却の有効部位は首の付け根・わきの下・足の付け根(ウ正)」「Ⅰ度は現場での応急処置と見守りで対応できる(エ正)」「重症度を問わず一律に扱う選択肢は誤り(オ誤)」が出題パターンです。オのように「重症度に関わらず一律に最大の対処」とする選択肢は、重症度に応じた対応を否定する典型的な誤りです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 熱中症を疑ったときは、放置すれば死に直結する緊急事態であることをまず認識します。重症の場合は救急車を呼ぶとともに、現場ですぐに体を冷やし始めます。
- イ: 「吐き気を訴える」「吐く」という症状も、すでに胃腸の動きが鈍っている証拠であり、口から水分を飲んでもらうのは禁物です。意識障害がある場合と同様に、病院での点滴が必要です。
- ウ: 冷却部位は太い血管が皮膚の近くを通る場所です。冷やした水のペットボトルやかち割氷を使っても構いません。Ⅲ度が疑われる場合は、部位を冷やすだけでなく全身を急速に冷やす方法を優先します。
- エ: Ⅰ度でも、そばに付き添って見守ることが前提です。意識がおかしい、自分で水分・塩分を摂れない、応急処置を施しても症状の改善が見られないときはⅡ度と判断し、すぐに病院へ搬送します。
- オ: 厚生労働省のガイドラインの手順例でも、作業離脱・身体冷却・自力での水分摂取ができ回復した場合は経過観察とし、回復しない・症状が悪化する場合や意識の異常がある場合に医療機関への搬送や救急隊の要請を行う流れが示されています。回復後に体調が急変することもあるため、連絡体制をあらかじめ定めておきます。
【根拠】環境省「熱中症環境保健マニュアル」(令和4年3月改訂)、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」、労働安全衛生規則第612条の2・第617条。
【補足】熱中症の重症度: Ⅰ度=現場での応急処置と見守り・Ⅱ度=医療機関へ・Ⅲ度=入院加療。最初は涼しい場所へ避難。意識障害や嘔吐があれば口からの水分補給は禁物。冷却部位: 首の付け根の両側・わきの下・足の付け根。
- 労働安全衛生規則第612条の2・第617条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 環境省「熱中症環境保健マニュアル」(令和4年3月改訂)「熱中症を疑ったときには何をするべきか」・表2-1(日本救急医学会熱中症診療ガイドライン2015を改変)、厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(6 異常時の措置・表2 熱中症の症状と分類)、労働安全衛生規則第612条の2・第617条。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

