問題
事務所・建築物の室内空気汚染に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはエです。エは2つの誤りを含んでいます。①「常温(5℃以下または60℃以上)に保つことで繁殖が抑制される」の「または」以下が誤解を生む表現ですが、主要な誤りは②「冷却塔の水を常に5℃以下に維持することが法令で義務付けられている」という点です。冷却塔の水を5℃以下に維持することは現実的ではなく、そのような法令規定も存在しません。
厚生労働省の技術上の指針が冷却塔に求めているのは、使用開始時と使用期間中の1か月に1回以上の汚れの点検、1年に1回以上の清掃及び完全換水、必要に応じた殺菌剤の添加などです。水温を5℃以下に保つという対策は示されていません。なお、レジオネラ属菌は60℃では5分間で殺菌されるとされています。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): シックビル症候群(SBS)は、特定の建物で過ごす在室者に非特異的な症状が生じる現象で、原因としてVOC・カビ・換気不足等が挙げられます。
- イ(正): ホルムアルデヒドは建築基準法のシックハウス対策で規制対象とされる化学物質です(クロルピリホスとともに建築基準法施行令第20条の5で指定)。モデルSDSでは眼刺激性・発がん性区分1Aに分類され、IARC(国際がん研究機関)はグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類しています。
- ウ(正): 平成15年7月1日施行のシックハウス対策の概要として正確です。居室を有する建築物ではクロルピリホスを添加した建築材料の使用が禁止され(施行令第20条の6)、ホルムアルデヒドを発散する建築材料は居室の種類及び換気回数に応じて内装仕上げの使用面積が制限されます(F☆☆☆☆は制限なし、F☆☆☆は床面積の2倍まで)。換気回数0.5回/時の24時間換気システムの設置も求められています。
- エ(誤): 「冷却塔の水を常に5℃以下に維持することが法令で義務付けられている」という内容が誤りです。厚生労働省の「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」が冷却塔の維持管理として示すのは、冷却塔に供給する水を水道法の水質基準に適合させる措置、使用開始時及び使用期間中1か月に1回以上の汚れの点検と必要に応じた清掃・換水、1年に1回以上の清掃及び完全換水、必要に応じた殺菌剤の添加です。水温を5℃以下に保つことは求められていません。
- オ(正): 2020年4月1日に全面施行された改正健康増進法では、事務所・工場等の第二種施設は原則屋内禁煙で、喫煙を認める場合は喫煙専用室(喫煙のみ)等の設置が必要です。
【理論的背景】
事務所・建築物の室内空気汚染は、建材や家具から発散する化学物質、水を使う設備で繁殖する微生物、たばこ煙など、発生源の異なる複数の要因で起こります。それぞれを規制・管理する法令や指針が異なる点を押さえることが重要です。
主な室内空気汚染物質と関係する法令・指針:
1. 化学物質(シックハウス対策): 建築基準法第28条の2と施行令第20条の5により、クロルピリホスとホルムアルデヒドが規制対象物質とされています。
- クロルピリホス: 居室を有する建築物には、これを添加した建築材料の使用が禁止(施行令第20条の6)。建築物の部分として5年以上使用したものは除外。
- ホルムアルデヒド: 内装仕上げの面積制限(施行令第20条の7)、換気設備の基準(同第20条の8)。
2. 建築物環境衛生管理基準(建築物衛生法): 空気調和設備を設けている特定建築物では、浮遊粉じん0.15mg/m³以下、一酸化炭素6ppm以下(令和4年4月1日以降)、二酸化炭素1000ppm以下、相対湿度40%以上70%以下、気流0.5m/秒以下、ホルムアルデヒド0.1mg/m³以下(=0.08ppm以下)などの基準があります。
3. レジオネラ属菌: 入浴設備、空気調和設備の冷却塔、給湯設備、加湿器等の水を使用する設備に付着する生物膜に生息する微生物の細胞内で大量に繁殖し、これらの設備から発生したエアロゾルを吸入することで感染します。ヒトからヒトへは感染しません。
4. たばこ煙: 改正健康増進法により、多数の者が利用する施設は類型ごとに喫煙が規制されています。
【実務・条文構造】
冷却塔の維持管理(厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」平成15年厚生労働省告示第264号):
1. 冷却塔に供給する水を水道法第4条の水質基準に適合させるため必要な措置を講ずる
2. 使用開始時及び使用期間中は1か月に1回以上、冷却塔及び冷却水の汚れの状況を点検し、必要に応じ清掃及び換水等を実施する
3. 1年に1回以上、清掃及び完全換水を実施する
4. 必要に応じ殺菌剤等を冷却水に加えて微生物や藻類の繁殖を抑制する
5. 冷却塔からの排気に含まれるエアロゾルが外気取入口や窓から侵入しないよう、外気取入口・居室の窓・人が活動する場所から十分距離を置くなどして飛散を抑制する
指針には「水温を5℃以下に保つ」という措置はなく、選択肢エの「冷却塔の水は常に5℃以下に維持することが法令で義務付けられている」は誤りです。給湯設備や貯湯槽については、湯温を60℃以上に保つなど槽内でレジオネラ属菌が繁殖しないようにすることが示されており、厚生労働省のQ&Aでも「60℃では5分間で殺菌される」と説明されています。
【試験での位置づけ】
室内空気汚染の問題では「シックビル症候群の概念(在室者の非特異的症状)」「ホルムアルデヒドの発生源と健康影響」「建築基準法シックハウス対策(クロルピリホス添加建材の禁止・ホルムアルデヒド発散建材の面積制限・換気設備)」「レジオネラ属菌の感染経路(エアロゾル)と冷却塔の点検・清掃」「健康増進法による受動喫煙防止」が頻出です。エのように実際の管理方法と異なる「温度維持の法令義務」を作り出す記述は典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: シックビル症候群と「建物関連疾患(Building-Related Illness: BRI)」は区別されます。SBSは症状が非特異的で原因が特定できないのに対し、BRIは特定の原因(レジオネラ・過敏性肺炎等)が同定された建物関連の疾患です。
- イ: 建築物衛生法の建築物環境衛生管理基準では、ホルムアルデヒドの量は0.1mg/m³以下(=0.08ppm以下)とされています。モデルSDSでは、ホルムアルデヒドは鼻咽頭がん及び白血病を生じることが疫学研究から報告されているとして、IARCがグループ1に分類したことが記載されています。
- ウ: ホルムアルデヒド発散建築材料の内装仕上げへの使用は、居室の種類及び換気回数に応じて面積が制限されます。国土交通省の概要資料では、F☆☆☆☆は制限なし、F☆☆☆は床面積の2倍までとされ、換気回数0.5回/時の24時間換気システムの設置、天井裏等の下地材の制限・換気なども示されています。
- エ: 建築物衛生法では、特定建築物維持管理権原者は建築物環境衛生管理基準に従って特定建築物を維持管理しなければならず、特定建築物以外でも多数の者が使用・利用する建築物は同基準に従って維持管理するよう努めなければなりません(法第4条第3項)。冷却塔の具体的な衛生上の措置は上記の技術上の指針に示されており、5℃以下の維持は含まれていません。
- オ: 改正健康増進法の体系では、学校・病院・児童福祉施設・行政機関の庁舎等の第一種施設は敷地内禁煙(屋外で受動喫煙を防止するために必要な措置がとられた場所に喫煙場所を設置することは可能。2019年7月1日施行)、事務所・工場・飲食店等の第二種施設は原則屋内禁煙(喫煙を認める場合は喫煙専用室(喫煙のみ)等の設置が必要。2020年4月1日施行)とされています。喫煙可能部分には20歳未満は客・従業員ともに立ち入れません。
【根拠】建築基準法第28条の2・同法施行令第20条の5〜第20条の9(国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」・「シックハウス対策の概要」)、厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」、厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」・「レジオネラ症」Q&A、厚生労働省「改正健康増進法の体系」、職場のあんぜんサイト モデルSDS(ホルムアルデヒド)。
【補足】冷却塔対策は1か月に1回以上の点検・1年に1回以上の清掃及び完全換水・必要に応じた殺菌剤(5℃以下維持の法令義務なし)。レジオネラ属菌は60℃では5分間で殺菌される。シックハウス対策: クロルピリホス添加建材の禁止・ホルムアルデヒド発散建材の面積制限・換気0.5回/h。
- 建築基準法第28条の2e-Govで原文を読む
- 健康増進法e-Govで原文を読む
- 建築基準法施行令第20条の5e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 建築基準法第28条の2・同法施行令第20条の5〜第20条の9(シックハウス対策、平成15年7月1日施行。国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」)、健康増進法(平成30年改正、厚生労働省「改正健康増進法の体系」)、厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)・「レジオネラ症」Q&A、厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

