労働衛生(有害業務以外)54健康管理

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問54:健康管理

産業医の職務・権限および選任要件に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた医師でなければならず、産業医の資格がない一般の医師を産業医として選任することはできない。
  • 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または常時500人以上の労働者を使用し一定の有害業務(深夜業その他特定業務)に常時500人以上を従事させる事業場では、専属の産業医を選任しなければならない。
  • 産業医は、労働者の健康管理について必要と認める場合に事業者に対して勧告を行うことができ、事業者は産業医の勧告を受けたときはその内容を衛生委員会等に報告しなければならない(2019年改正)。
  • 産業医の職務のうち「作業の見学(職場巡視)」は、毎月1回以上行うことが義務付けられており、産業医が希望する場合はいかなる事情があっても毎月の巡視を優先して実施しなければならない。正答
  • 産業医は、その職務を行う場合において、労働者の個人情報を知ることがある。産業医は、正当な理由がなく、業務上知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない(守秘義務)。
正答:産業医の職務のうち「作業の見学(職場巡視)」は、毎月1回以上行うことが義務付けられており、産業医が希望する場合はいかなる事情があっても毎月の巡視を優先して実施しなければならない。

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誤りはエです。産業医の職場巡視(作業の見学)は、原則として毎月1回以上が義務ですが、一定の条件を満たす場合(産業医が事業者から衛生管理者の業務の実施状況・職場環境等の情報提供を受けており、産業医が2か月に1回以上で差し支えないと判断した場合)は2か月に1回以上に緩和することができます(2017年安衛則改正)。

「いかなる事情があっても毎月の巡視を優先」という表現は誤りであり、条件付きで2か月に1回への緩和が認められています。

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各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 産業医は安衛則第14条に定める資格要件を満たす医師でなければなりません。資格要件として、①産業医科大学の産業医学基本講座の修了、②産業医の研修(産業医学の基礎研修50時間以上)の修了、③厚生労働大臣の指定する者による産業医研修の修了、④大学での医学の教育または研究に従事した者等、のいずれかを満たす必要があります。一般の医師を産業医として選任することは法的要件を満たしません。
  • イ(正): 専属産業医の選任要件: 常時1,000人以上の事業場(業種を問わず)、または有害業務(深夜業・多量の高熱物体を取り扱う業務等・安衛則第13条第1項第2号各号列挙の業務)に常時500人以上が従事する事業場では、専属産業医が必要です。専属産業医は当該事業場の属する会社の役員・労働者等でなければならず、他の事業場との兼任が原則禁止されます。
  • ウ(正): 2019年(令和元年)の安衛法改正により、産業医の権限が強化されました。産業医が事業者に対して勧告を行った場合、事業者はその勧告の内容を「衛生委員会または安全衛生委員会に報告する義務」が課されました(安衛法第13条第6項)。この改正前は勧告の内容を衛生委員会に報告する義務はありませんでした。
  • エ(誤): 産業医の職場巡視は「毎月1回以上」が原則ですが、一定の条件(産業医への情報提供体制の整備・産業医の判断)を満たす場合は2か月に1回以上に緩和できます(安衛則第15条改正・平成29年6月施行)。「いかなる事情があっても毎月の巡視を優先しなければならない」という絶対的な義務はなく、条件を満たした場合の緩和が認められています。
  • オ(正): 産業医は業務上労働者の個人的な健康情報・医療情報を知ることがあります。医師として「医師の守秘義務(刑法第134条)」を負うとともに、安衛法上も同様の守秘義務(安衛法第105条)があります。守秘義務に違反した場合は刑事罰(1年以下の懲役または50万円以下の罰金)が科されます。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

産業医制度は、職場における労働者の健康管理を医学的・専門的な観点から支援するために設けられた制度です。1972年の労働安全衛生法制定時に法的根拠が整備され、その後2019年の大幅改正(産業医・産業保健機能の強化)により権限・役割が拡充されました。

産業医制度の変遷:

  • 1972年: 安衛法制定・産業医選任義務が法定
  • 2018年: 労働安全衛生法改正(働き方改革関連法):産業医の独立性強化・権限拡大・情報提供義務の創設
  • 2019年: 改正法施行・産業医勧告の衛生委員会報告義務・労働者の健康情報の提供体制整備義務

【実務・条文構造】

産業医の選任義務と専属要件(安衛法第13条・安衛則第13条):

| 事業場の規模 | 選任形態 | 人数 |

|---|---|---|

| 常時50人以上 | 選任義務(非専属可) | 1人 |

| 常時1,000人以上 | 専属産業医 | 1人 |

| 常時3,000人超 | 専属産業医 | 2人 |

| 常時500人以上(有害業務従事) | 専属産業医 | 1人 |

産業医の主な職務(安衛法第13条・安衛則第14条):

1. 健康診断の実施・その結果に基づく措置

2. 面接指導(長時間労働者・高ストレス者・産業医が必要と認める者)

3. 心理的負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)

4. 作業の見学(職場巡視)

5. 健康教育・健康相談・労働者の健康保持増進

6. 衛生教育

7. 労働者の健康障害の原因調査・再発防止措置

8. 事業者への勧告・意見申述

職場巡視の頻度(安衛則第15条・平成29年改正):

  • 原則: 毎月1回以上
  • 条件を満たせば2か月に1回以上に緩和可能

緩和の条件:

①産業医が事業者から毎月1回以上、安衛則第11条第2項の書面(衛生管理者が行った巡視結果・有害業務の実施状況等)の情報提供を受けること

②産業医が、上記情報に基づいて2か月に1回以上の巡視で差し支えないと判断すること

2019年改正の主要ポイント:

1. 事業者から産業医への情報提供義務の拡大: 長時間労働者の情報・高ストレス者の情報等を産業医に提供する義務が明確化

2. 産業医の勧告の衛生委員会等への報告義務: 事業者は産業医から勧告を受けた場合、その内容を衛生委員会または安全衛生委員会に報告する義務

3. 産業医の業務上知り得た情報の守秘義務の法的明確化

【試験での位置づけ】

産業医の問題では「専属産業医の基準(1,000人以上・有害業務500人以上)」「職場巡視の頻度(原則毎月・条件満たせば2か月に1回可)」「産業医の勧告と衛生委員会への報告義務(2019年改正)」「産業医の資格要件(産業医資格必要・一般医師不可)」が頻出です。エのように「いかなる事情があっても毎月巡視義務」とする選択肢は、平成29年改正で2か月緩和規定が追加されたことを知らない受験者を引っかける典型的なパターンです。改正法の内容(2017年・2019年の安衛法改正)を意識した問題への備えが重要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 産業医の資格要件(安衛則第14条)として実務で重要なのは「産業医科大学の医学部を卒業した者」または「産業医の研修(50時間以上)を修了した者」です。多くの一般開業医や病院勤務医は産業医研修を修了して産業医資格を取得しています(日本医師会の認定産業医制度が代表的)。資格なしの医師を産業医として選任すること自体は「選任の法的要件を満たさない」というだけで、その医師が医師法上の診察行為を行うことの可否とは別問題です。
  • イ: 有害業務の定義(安衛則第13条第1項第2号): 深夜業(22時〜5時の業務)・多量の高熱物体を取り扱う業務・鉛・水銀・クロム・ヒ素・黄りん・弗化水素・塩素・塩酸等の有害物質を取り扱う業務・強烈な騒音を発する場所での業務等が列挙されています。これらに500人以上が従事する場合に専属産業医が必要です。
  • ウ: 産業医の「勧告」は、2019年改正前は「意見申述」という弱い表現でしたが、改正後は「勧告」という強い表現に変更されました。事業者は勧告の内容を十分参考にした上で、実施しない場合はその旨・理由を産業医に通知する義務を負います。また、勧告内容の衛生委員会報告義務により、産業医の意見が透明化・記録化される仕組みが整備されました。
  • エ: 職場巡視頻度の2か月への緩和は、産業医が多数の事業場を掛け持ちしている(非専属)場合の実態に配慮した改正です。月1回が困難な小規模事業場において、衛生管理者からの情報提供を充実させることを条件に、産業医の巡視頻度を緩和することで実質的な安全衛生管理の質を維持する意図があります。
  • オ: 医師の守秘義務(刑法第134条)は「正当な理由なく」業務上知り得た秘密を漏らした場合の刑事罰(6か月以下の懲役または10万円以下の罰金)を定めています。安衛法第105条は同様の義務を産業保健スタッフ全般に課しており、健康情報を取り扱う全ての者が守秘義務を負う体制が整備されています。

【根拠】労働安全衛生法第13条(産業医の選任・職務・権限)・安衛則第13条〜第15条の2(選任要件・職務・巡視頻度)・安衛法第105条(守秘義務)。2019年改正(産業医・産業保健機能の強化)。

【補足】専属産業医: 1,000人以上・有害業務500人以上。職場巡視: 原則毎月1回、条件を満たせば2か月に1回(「いかなる事情でも毎月」は誤り)。産業医勧告は衛生委員会への報告義務あり(2019年改正)。産業医は産業医資格が必要。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第13条・安衛則第13条〜第15条の2。産業医の選任要件・職務・権限・巡視頻度に関する規定。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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