問題
産業医の職務・権限および選任要件に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤りはエです。産業医の職場巡視(作業場等の巡視)は、原則として少なくとも毎月1回ですが、産業医が事業者から毎月1回以上、衛生管理者が行う巡視の結果等の情報提供を受けている場合であって、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2か月に1回とすることができます(安衛則第15条)。
「いかなる事情があっても毎月の巡視を優先」という表現は誤りであり、条件付きで2か月に1回への緩和が認められています。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 産業医は、安衛則第14条第2項の要件を備えた医師でなければなりません(安衛法第13条第2項)。要件は、①厚生労働大臣の指定する者(法人に限る)が行う研修の修了、②厚生労働大臣が指定する産業医科大学その他の大学で産業医養成の正規課程を修めて卒業し、その大学が行う実習を履修、③労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)合格、④大学で労働衛生に関する科目を担当する常勤の教授・准教授・講師(またはその経験者)、⑤その他厚生労働大臣が定める者、のいずれかです。
- イ(正): 常時1,000人以上の労働者を使用する事業場、または深夜業を含む業務・多量の高熱物体を取り扱う業務などの安衛則第13条第1項第3号に掲げる業務に常時500人以上を従事させる事業場では、専属の産業医を選任しなければなりません。
- ウ(正): 産業医は、必要があると認めるときは事業者に勧告でき、事業者はこれを尊重しなければなりません(安衛法第13条第5項)。勧告を受けたときは、その内容等を衛生委員会または安全衛生委員会に報告しなければなりません(同条第6項・安衛則第14条の3第3項・第4項)。
- エ(誤): 巡視は「少なくとも毎月1回」が原則ですが、毎月1回以上の情報提供と事業者の同意があれば少なくとも2か月に1回にできます(安衛則第15条)。
- オ(正): 医師は、正当な理由がないのに業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは処罰されます(刑法第134条)。また、健康診断・面接指導・ストレスチェック等の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはなりません(安衛法第105条)。
【理論的背景】
産業医制度は、職場における労働者の健康管理を医学的・専門的な観点から支援するための制度です。労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)は、政令で定める規模の事業場ごとに医師のうちから産業医を選任し、労働者の健康管理等を行わせることを事業者に義務付けています(第13条第1項)。さらに、事業者から産業医への情報提供(同条第4項)、産業医の勧告と事業者の尊重義務(同条第5項)、勧告内容の衛生委員会等への報告(同条第6項)が定められており、産業医が専門的立場から実効的に関与できる仕組みになっています。
【実務・条文構造】
産業医の選任義務と専属要件(安衛法第13条・施行令第5条・安衛則第13条):
| 事業場の規模 | 選任形態 | 人数 |
|---|---|---|
| 常時50人以上 | 選任義務(専属でなくてよい) | 1人以上 |
| 常時1,000人以上 | 専属産業医 | 1人以上 |
| 常時3,000人超 | 専属産業医 | 2人以上 |
| 安衛則第13条第1項第3号の業務に常時500人以上従事 | 専属産業医 | 1人以上 |
選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に行い(安衛則第13条第1項第1号)、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告します(同条第2項)。
産業医の職務(安衛則第14条第1項、医学に関する専門的知識を必要とするもの):
1. 健康診断の実施及びその結果に基づく措置
2. 長時間労働者等に対する面接指導及び必要な措置の実施並びにその結果に基づく措置
3. ストレスチェックの実施並びに面接指導の実施及びその結果に基づく措置
4. 作業環境の維持管理
5. 作業の管理
6. その他労働者の健康管理
7. 健康教育、健康相談その他健康の保持増進のための措置
8. 衛生教育
9. 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置
職場巡視の頻度(安衛則第15条):
- 原則: 少なくとも毎月1回
- 次の情報の提供を毎月1回以上受けており、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2か月に1回
①安衛則第11条第1項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
②労働者の健康障害の防止・健康保持に必要な情報であって、衛生委員会等の調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
- 巡視の結果、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない
勧告に関する手続:
1. 産業医は、勧告をしようとするときは、あらかじめ勧告の内容について事業者の意見を求める(安衛則第14条の3第1項)
2. 事業者は、勧告の内容と勧告を踏まえて講じた措置の内容(措置を講じない場合はその旨及びその理由)を記録し、3年間保存する(同条第2項)
3. 衛生委員会等への報告は、勧告を受けた後遅滞なく行う(同条第3項)
【試験での位置づけ】
産業医の問題では「専属産業医の基準(1,000人以上・特定の業務500人以上)」「職場巡視の頻度(原則毎月・条件を満たせば2か月に1回)」「産業医の勧告と衛生委員会への報告義務」「産業医の要件(安衛則第14条第2項)」が頻出です。エのように「いかなる事情があっても毎月巡視」とする選択肢は、2か月緩和の規定を知らない受験者を引っかける典型的なパターンです。緩和の条件が「産業医の判断」ではなく「事業者の同意」である点も問われます。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 要件を備えない医師を産業医として選任しても、安衛法第13条第2項の要件を満たしません。産業医は、労働者の健康管理等を行うために必要な医学に関する知識及び能力の維持向上に努めなければなりません(安衛則第14条第7項)。
- イ: 専属が必要となる業務(安衛則第13条第1項第3号)には、多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務、有害放射線にさらされる業務、強烈な騒音を発する場所における業務、坑内における業務、深夜業を含む業務、鉛・水銀・クロム等の有害物のガス・蒸気・粉じんを発散する場所における業務などが列挙されています。深夜とは原則として午後10時から午前5時までの時間帯をいいます(労働基準法第37条)。
- ウ: 事業者は、産業医が勧告をしたことなどを理由として、産業医に対し解任その他不利益な取扱いをしないようにしなければなりません(安衛則第14条第4項)。また、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければなりません(安衛則第13条第4項)。
- エ: 2か月に1回とするには、毎月1回以上の情報提供と事業者の同意の両方が必要です。巡視の頻度を緩めても、有害のおそれがあるときに直ちに必要な措置を講じる義務は変わりません。
- オ: 医師の秘密漏示罪(刑法第134条)は6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です。安衛法第105条は、健康診断・面接指導・ストレスチェック等の実施の事務に従事した者に秘密保持を義務付けており、違反は6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象です(安衛法第119条)。
【根拠】労働安全衛生法第13条(産業医の選任・勧告等)・第105条(健康診断等に関する秘密の保持)・第119条、施行令第5条、安衛則第13条〜第15条(選任・職務・勧告等・定期巡視)、刑法第134条。
【補足】専属産業医: 1,000人以上・特定の業務500人以上。職場巡視: 原則毎月1回、毎月の情報提供と事業者の同意があれば2か月に1回(「いかなる事情でも毎月」は誤り)。産業医の勧告は衛生委員会等への報告義務あり。産業医は安衛則第14条第2項の要件が必要。
- 労働安全衛生規則第15条・第14条・第13条・第14条の3・第11条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法第13条・第105条・第119条e-Govで原文を読む
- 刑法第134条e-Govで原文を読む
- 労働基準法第37条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第13条・第105条・第119条、同法施行令第5条、安衛則第13条〜第15条、刑法第134条。産業医の選任要件・職務・権限・巡視頻度に関する規定。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

