労働衛生(有害業務以外)78職業性疾病の一般知識

衛生管理者 労働衛生(有害業務以外) 問78:職業性疾病の一般知識

職業性疾病の概念と分類に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 職業性疾病とは、業務に関連した有害要因(物理的・化学的・生物的・作業態様的要因等)への暴露によって引き起こされた疾病であり、労働者の業務遂行との相当因果関係(業務起因性)が認められることが業務上疾病として認定される要件の一つである。
  • 職業性疾病の有害要因は、①物理的要因(騒音・振動・温度・放射線等)②化学的要因(有害化学物質・粉じん等)③生物的要因(感染性微生物・アレルゲン等)④作業態様的要因(重量物取扱い・反復動作・不良姿勢等)に分類される。
  • 業務上疾病として認定された疾病に対しては、労働者災害補償保険(労災保険)による療養補償・休業補償・障害補償等の補償が行われるが、雇用主が業務と疾病の因果関係を争った場合、認定はされない。正答
  • 一般疾病(業務との関連がない疾病)でも、就業中に発症したり、業務への従事が疾病の増悪に寄与したりする場合は、業務起因性が認められる場合がある(例:脳血管疾患・心臓疾患の過重労働との関連)。
  • 職業性がんとは、職業上の発がん物質への暴露によって生じるがんであり、石綿(アスベスト)による中皮腫・肺がん・ベンジジンによる膀胱がん・ベンゼンによる白血病等が代表的な職業性がんの例として挙げられる。
正答:業務上疾病として認定された疾病に対しては、労働者災害補償保険(労災保険)による療養補償・休業補償・障害補償等の補償が行われるが、雇用主が業務と疾病の因果関係を争った場合、認定はされない。

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誤りはウです。「雇用主が因果関係を争った場合、認定はされない」という部分が誤りです。業務上疾病の認定は、労働基準監督署長が行う行政処分であり、雇用主(事業者)の意向や争いによって認定・不認定が左右されるものではありません。労働者またはその遺族が労災申請を行い、監督署が調査・判断して認定します。雇用主が「業務との因果関係はない」と主張しても、認定に必要な証拠・状況が揃っていれば認定されます。

ア(職業性疾病の定義)・イ(有害要因の4分類)・エ(一般疾病の業務起因性)・オ(職業性がんの例)はすべて正しい内容です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 職業性疾病(Occupational Disease)の定義として「業務との相当因果関係(業務起因性)」が認められることが労働基準法(第75条)・労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく業務上疾病認定の要件です。業務起因性とは「業務に内在するリスクが具体的に顕在化したこと」です。
  • イ(正): 職業性疾病の有害要因の4分類(物理的・化学的・生物的・作業態様的)は産業衛生の基本的な分類体系です。各要因に対応した具体的な疾病(騒音→騒音性難聴・振動→振動障害・有機溶剤→肝障害等)の理解が重要です。
  • ウ(誤): 業務上疾病の認定は労働基準監督署長(国の行政機関)が行う行政処分であり、雇用主(事業者)が因果関係を争ったとしても、それだけで認定が否定されることはありません。認定は証拠・調査結果に基づいて行われ、雇用主の主張は証拠の一つとして扱われますが、最終判断は監督署・場合によっては不服申立・裁判所が行います。
  • エ(正): 「過労死」「過労による心臓疾患・脳血管疾患」は、一般的な疾病(心筋梗塞・脳出血等)であっても業務上の過重な負荷(長時間労働・強いストレス)が増悪に寄与したことが認められれば業務上疾病として認定されます。厚生労働省の「過労死等の労災認定基準」に基づいて判断されます。
  • オ(正): 職業性がんの代表例として、石綿(アスベスト)→中皮腫・肺がん・ベンジジン→膀胱がん・ベンゼン→白血病(急性骨髄性白血病)・ビス(クロロメチル)エーテル→肺がん・塩化ビニル→肝血管肉腫等が確立した職業性がんとして知られています。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

職業性疾病(Occupational Disease)は、業務上疾病(Work-Related Disease)・職業病(Occupational Disease in a narrow sense)・作業関連疾患(Work-Related Disorder)という概念が重なり合いながら使用されています。

これらの概念の区分:

  • 職業病(狭義): 特定の職業・業務にほぼ特異的に発生する疾病(じん肺・振動障害・潜函病等)
  • 作業関連疾患(广義): 業務が発症・悪化の一因となっているが、業務外の要因も関与する疾病(腰痛・高血圧・心疾患の一部)
  • 業務上疾病(法的概念): 労災保険法・労基法による補償の対象となる疾病(業務起因性が認められた疾病)

業務起因性の判断基準(労働基準法施行規則別表第1の2):

労基法施行規則別表第1の2には「業務上の疾病」として23の業務・疾病の類型が列挙されており、これらに該当する場合は原則として業務上疾病として認定されます(例外的に業務起因性がないことが明らかな場合を除く)。

【実務・条文構造】

業務上疾病の認定手続きの流れ:

| ステップ | 内容 |

|---|---|

| ① 療養・休業の開始 | 傷病者が医療機関を受診・治療開始 |

| ② 労災申請 | 労働者(または遺族)が労働基準監督署に「業務上疾病の療養・休業補償給付」等を申請 |

| ③ 調査・判定 | 監督署が医療記録・業務内容・職場環境等を調査して業務起因性を判断 |

| ④ 認定・不認定 | 監督署長が業務上疾病の認定/不認定を判断(雇用主の意向に依存しない) |

| ⑤ 不服申立 | 不認定の場合、審査請求→再審査請求→行政訴訟の手続きが可能 |

職業性がんの認定と補償(石綿を例に):

  • 石綿による中皮腫・肺がんは石綿ばく露から発症まで潜伏期間が長い(中皮腫: 平均30〜40年)
  • 労災時効(疾病の場合、症状の発生を知った日から5年)の問題→石綿被害は特別立法(石綿健康被害救済法)で対応
  • 既に廃業した企業・死亡した従業員に関するケースも処理される

主要な職業性疾病とその有害要因:

| 疾病 | 主要有害要因 |

|---|---|

| 騒音性難聴 | 強い騒音(長期暴露) |

| 振動障害(白ろう病) | 振動工具(チェーンソー・削岩機等) |

| 潜函病(減圧症) | 高気圧→急激な減圧 |

| じん肺 | 粉じん(石英・石綿・石炭等)の吸入 |

| 中皮腫・肺がん | 石綿(アスベスト)の吸入 |

| 膀胱がん | ベンジジン・4-アミノビフェニル等 |

| 白血病 | ベンゼンの長期暴露 |

【試験での位置づけ】

職業性疾病の問題では「有害要因の4分類(物理的・化学的・生物的・作業態様的)」「業務上疾病の認定は監督署長(雇用主の意向で否定されない)」「石綿による中皮腫・肺がん」「ベンゼン→白血病」「過重労働→心臓疾患・脳血管疾患」が頻出事項です。ウのような「雇用主が争えば認定されない」という誤りは、行政処分としての業務上疾病認定の仕組みを誤解させる典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 「業務起因性」と「業務遂行性(業務中に発生したこと)」の両方が業務上疾病認定の要件として求められます。業務遂行性(業務中であること)が確認できても業務起因性(業務が原因であること)が認められなければ業務外疾病となります(例:業務中に発症した脳卒中が業務と無関係な基礎疾患によるものであれば業務外)。
  • エ: 過労死・過労による心疾患・脳血管疾患の労災認定基準(厚生労働省・令和3年改正)では、時間外労働だけでなく「業務の量・質・心理的負荷」も総合的に評価することとされており、精神障害(うつ病等)の労災認定基準とも整合した体系になっています。
  • オ: 職業性がんの潜伏期間は非常に長いという特性があります(石綿中皮腫30〜40年・ベンゼン白血病5〜10年等)。このため「現在の職場での暴露」だけでなく「数十年前の職場での暴露」が原因である場合があり、詳細な職歴調査が業務上疾病認定に不可欠です。

【根拠法令】労働者災害補償保険法・労働基準法第75条以降・労働基準法施行規則別表第1の2。

【補足】業務上疾病の認定権限は労働基準監督署長にある(雇用主が争っても認定が否定されるわけではない)。有害要因4分類: 物理的・化学的・生物的・作業態様的。石綿→中皮腫・ベンゼン→白血病。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法(労災保険法)・労働基準法(労基法)第75条以降。業務上疾病の認定は「業務と疾病の相当因果関係(業務起因性)」によって行われ、雇用主が争ったからといって認定が否定されるわけではない。認定権限は労働基準監督署長にある。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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