問題
職業性疾病の概念と分類に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
誤りはウです。「雇用主が因果関係を争った場合、認定はされない」という部分が誤りです。労災保険給付に関する決定は労働基準監督署長が行うもので、雇用主(事業者)が争ったことだけで認定・不認定が決まるものではありません。決定に不服がある場合は、その決定を行った労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に審査請求ができます。
ア(職業性疾病の定義)・イ(有害要因の4分類)・エ(過重業務による脳・心臓疾患)・オ(職業性がんの例)は正しい内容です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 労働基準法第75条は、業務上の疾病について使用者の療養補償を定め、その範囲を厚生労働省令(労働基準法施行規則別表第1の2)に委ねています。別表第1の2の最後の号は「その他業務に起因することの明らかな疾病」であり、業務との因果関係(業務起因性)が業務上疾病の判断の基本になります。
- イ(正): 別表第1の2は、物理的因子による疾病、身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病、化学物質等による疾病、細菌・ウイルス等の病原体による疾病などに分けて列挙しており、有害要因の4分類と対応しています。
- ウ(誤): 労災保険給付に関する決定は労働基準監督署長が行い、不服があれば労働者災害補償保険審査官に審査請求ができます。雇用主が争ったことだけで認定が否定されることはありません。
- エ(正): 別表第1の2第8号は、長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳出血・くも膜下出血・脳梗塞・心筋梗塞・狭心症などを業務上の疾病として掲げています。
- オ(正): 別表第1の2第7号には、石綿にさらされる業務による肺がん又は中皮腫、ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍、ベンゼンにさらされる業務による白血病などが掲げられています。
【理論的背景】
労働基準法は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合に使用者が療養補償を行うことを定め(第75条第1項)、業務上の疾病の範囲を厚生労働省令で定めるとしています(同条第2項)。この省令が労働基準法施行規則別表第1の2で、厚生労働大臣告示とあわせて「職業病リスト」と呼ばれます。また、労働者災害補償保険法に基づいて災害補償に相当する給付が行われるべき場合には、使用者は補償の責を免れます(労働基準法第84条第1項)。
労働基準法施行規則別表第1の2(職業病リスト)の構成:
| 号 | 内容 |
|---|---|
| 第1号 | 業務上の負傷に起因する疾病 |
| 第2号 | 物理的因子による疾病(紫外線・赤外線・騒音による難聴・高圧室内作業等による潜函病・暑熱による熱中症など) |
| 第3号 | 身体に過度の負担のかかる作業態様に起因する疾病(腰痛、振動工具による末梢循環障害など) |
| 第4号 | 化学物質等による疾病 |
| 第5号 | 粉じんを飛散する場所における業務によるじん肺症等 |
| 第6号 | 細菌、ウイルス等の病原体による疾病 |
| 第7号 | がん原性物質・がん原性因子・がん原性工程における業務による疾病 |
| 第8号 | 長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を著しく増悪させる業務による脳・心臓疾患 |
| 第9号 | 心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害 |
| 第10号 | 厚生労働大臣の指定する疾病 |
| 第11号 | その他業務に起因することの明らかな疾病 |
【実務・条文構造】
業務上疾病と労災保険給付の流れ:
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 請求 | 労働者(または遺族)が労災保険給付を請求する |
| ② 決定 | 労働基準監督署長が保険給付に関する決定を行う(雇用主の意向で決まるものではない) |
| ③ 不服申立 | 決定に不服がある場合、決定を行った労働基準監督署長を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官に審査請求(決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内) |
職業病リストに掲げられた主な職業性疾病と有害要因:
| 疾病 | 有害要因(別表第1の2の記載) |
|---|---|
| 難聴等の耳の疾患 | 著しい騒音を発する場所における業務(第2号) |
| 手指・前腕等の末梢循環障害等 | さく岩機・鋲打ち機・チェーンソー等の使用による振動(第3号) |
| 潜函病・潜水病 | 高圧室内作業又は潜水作業(第2号) |
| じん肺症 | 粉じんを飛散する場所における業務(第5号) |
| 肺がん又は中皮腫 | 石綿にさらされる業務(第7号) |
| 尿路系腫瘍 | ベンジジン・ベーターナフチルアミン等にさらされる業務(第7号) |
| 白血病 | ベンゼンにさらされる業務(第7号) |
| 肝血管肉腫又は肝細胞がん | 塩化ビニルにさらされる業務(第7号) |
【試験での位置づけ】
職業性疾病の問題では「有害要因の4分類(物理的・化学的・生物的・作業態様的)」「労災保険給付の決定は労働基準監督署長(雇用主の意向で否定されない)」「石綿による中皮腫・肺がん」「ベンゼン→白血病」「過重業務→脳・心臓疾患」が頻出事項です。ウのような「雇用主が争えば認定されない」という誤りは、労災保険給付の決定の仕組みを誤解させる典型的な引っかけです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 職業病リストに具体的に掲げられていない疾病でも、第11号「その他業務に起因することの明らかな疾病」に当たれば業務上の疾病となります。
- イ: 生物的要因については、第6号で患者の診療若しくは看護の業務、介護の業務又は研究その他の目的で病原体を取り扱う業務による伝染性疾患などが掲げられています。
- ウ: 審査請求は、労災保険給付の決定があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に行う必要があります。
- エ: 第8号は脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、重篤な心不全、大動脈解離を掲げています。第9号では、人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神及び行動の障害も業務上の疾病とされています。
- オ: 第7号には、ビス(クロロメチル)エーテルにさらされる業務による肺がん、塩化ビニルにさらされる業務による肝血管肉腫又は肝細胞がんなども掲げられています。
【根拠法令】労働基準法第75条・第84条、労働基準法施行規則別表第1の2(職業病リスト)。
【補足】労災保険給付の決定は労働基準監督署長(雇用主が争っても認定が否定されるわけではない)。有害要因4分類: 物理的・化学的・生物的・作業態様的。石綿→肺がん・中皮腫、ベンジジン→尿路系腫瘍、ベンゼン→白血病。
- 労働基準法第75条・第84条e-Govで原文を読む
- 労働基準法施行規則e-Govで原文を読む
- 労働者災害補償保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第75条・第84条、労働基準法施行規則別表第1の2(職業病リスト)、厚生労働省「労災保険審査請求制度」。労災保険給付に関する決定は労働基準監督署長が行い、雇用主が争ったからといって認定が否定されるわけではない。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

