衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問14:健康診断
雇入れ時の健康診断に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア雇入れ時の健康診断は、常時使用する労働者を雇い入れる際に行わなければならず、雇入れ後3か月以内に定期健康診断を実施する予定がある場合でも、省略することはできない。
- イ雇入れ時の健康診断において、医師による診察を経て医師が必要でないと認めた項目については、省略することができる。正答
- ウ雇入れ時の健康診断の実施に要した費用は、事業者が負担しなければならない。
- エ雇入れ時の健康診断の項目として、既往歴および業務歴の調査が含まれる。
- オ雇入れ時の健康診断の結果の記録は、5年間保存しなければならない。
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誤りはイです。雇入れ時の健康診断(安衛則第43条)は、定期健康診断(安衛則第44条)と異なり、医師が必要でないと認めた場合でも項目を省略することができません。雇入れ時健康診断の全項目は必須実施が原則です。「医師が必要でないと認めた項目は省略できる」は定期健康診断の一部項目に認められる規定であり、雇入れ時には適用されません。
ア(雇入れ後の定期健診があっても省略不可)、ウ(事業者が費用負担)、エ(既往歴・業務歴の調査が含まれる)、オ(5年保存)はいずれも正しい記述です。
雇入れ時健康診断の全体像(安衛則第43条):
雇入れ時健康診断は、採用時に労働者の健康状態を把握し、適切な就業配置を行うための健診です。定期健康診断(1年ごと)とは別建てで、雇入れ時に一度実施する義務があります。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 雇入れ時健康診断は雇入れ後すぐに実施する必要があり、「3か月以内に定期健診あるから不要」という省略は認められません(安衛則第43条但書なし)。
- イ(誤): 安衛則第43条は、医師が必要でないと認める場合の省略規定を設けていません(定期健診の第44条と異なる)。雇入れ時健康診断の全項目は必ず実施しなければなりません。
- ウ(正): 健康診断の費用は事業者が負担します(労働安全衛生法上の義務として実施するため)。通達でも費用負担は事業者とされています。
- エ(正): 安衛則第43条第1号に「既往歴(業務歴を含む)の調査」が項目として明示されています。
- オ(正): 安衛則第51条第1項により、健康診断結果の記録は5年間保存が必要。
雇入れ時健康診断の11項目(安衛則第43条・第44条共通項目):
既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の検査、身長・体重・視力・聴力・血圧の測定、胸部エックス線検査、尿検査(糖・蛋白)、血糖検査、肝機能検査、血中脂質検査、貧血検査、心電図検査
いずれも雇入れ時には省略不可(定期健診と異なる最重要ポイント)。
【理論的背景】
雇入れ時健康診断(安衛則第43条)は採用時点での労働者の健康状態把握を目的とした健診です。定期健康診断(安衛則第44条)が「継続的な健康管理・経年変化の把握」を目的とするのに対し、雇入れ時健診は「就業開始時の基礎データ収集・初期配置の適正化」を主目的とします。
この目的の違いが「省略規定の有無」に反映されています。定期健康診断では年齢・医師の判断による省略が認められるのは、「継続的管理の観点から毎年全項目実施する医学的必要性が低い場合がある」ためです。一方、雇入れ時健診は「入社時に一回限り」であり、この機会を逃すと「雇入れ時の健康状態記録」が欠落します。したがって省略を認めない設計になっています。
【実務・条文構造】
雇入れ時健康診断(安衛則第43条)の11項目と、定期健康診断(安衛則第44条)との省略可否の比較:
| 項目 | 雇入れ時(第43条) | 定期健診(第44条) |
|------|----------------|----------------|
| 既往歴・業務歴の調査 | 省略不可 | 省略不可 |
| 自覚症状・他覚症状の検査 | 省略不可 | 省略不可 |
| 身長・体重・視力・聴力・血圧 | 省略不可(身長・聴力は一部緩和規定あり) | 一部省略可(身長は20歳以上等) |
| 胸部エックス線検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等の条件) |
| 尿検査(糖・蛋白) | 省略不可 | 省略不可 |
| 血糖検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等) |
| 肝機能検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等) |
| 血中脂質検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等) |
| 貧血検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等) |
| 心電図検査 | 省略不可 | 省略可(40歳未満等) |
「雇入れ後3か月以内に定期健診がある場合の省略」について:
安衛則第44条第1項ただし書には「雇入れ後3か月以内に定期健康診断を受けた者は…省略できる」という規定がありますが、これは定期健康診断の実施義務を省略できるというものであり、雇入れ時健康診断(第43条)そのものは省略できません(選択肢アの正しさの根拠)。
費用負担の根拠(通達・行政解釈):
健康診断の実施は事業者の義務(安衛法第66条)であるため、実施費用は事業者が負担するのが当然とされています。なお費用負担に関して安衛法に明示的な条文はないものの、行政解釈(通達)により事業者負担が確認されています。
【試験での位置づけ】
雇入れ時健康診断と定期健康診断の「違い」を問う問題は非常に頻出です。最重要の違いは「省略規定の有無」です。定期健診では医師が必要でないと認めれば一定の項目を省略できますが、雇入れ時健診では全項目が必須です。「入社後3か月以内に定期健診があれば雇入れ時健診を省略できる」という誤りは最も頻出のパターンの一つです。試験では「雇入れ時健診の特徴(省略不可・雇入れ時に実施)」と「定期健診の特徴(1年ごと・省略可項目あり)」を対比して整理することが高得点への最短ルートです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「雇入れ後3か月以内の定期健診があれば省略できない」という規則の背景には、雇入れ時健診が採用時の健康状態記録として独自の意義を持つためです。定期健診との互換性はなく、それぞれ別の目的で実施されます。
- イ: 省略規定の誤りは「雇入れ時健診を定期健診と同じルールで考える」という混同から生じます。安衛則第43条(雇入れ時)と第44条(定期)を並べて読むと、第44条にある「医師が必要でないと認めるとき省略可」の但書が第43条にはないことが確認できます。
- ウ: 健診費用の事業者負担は、健診を業務義務として位置づけるための規制の一環です。実務では就業規則や採用条件に「健康診断費用は会社負担」と明記するケースが多いです。費用の一部を労働者に転嫁することは通達上問題とされます。
- エ: 既往歴・業務歴の調査は雇入れ時健診の中で特に重要な項目です。「業務歴」を調査することで、前職での有害物質曝露歴等を把握し、適切な配置(有害業務への配置の適否等)の判断に活用します。
- オ: 5年保存(安衛則第51条)は定期健診・雇入れ時健診共通のルールです。特殊健康診断の一部(石綿・放射線等)は30年保存が必要な点と区別して覚えてください。
【根拠法令】労働安全衛生規則 第43条(雇入れ時の健康診断・省略不可)・第44条(定期健康診断・省略条件あり)・第51条(記録保存5年)
【補足】雇入れ時健診は全項目省略不可(定期健診とは異なる最重要の違い)。「3か月以内に定期健診があっても省略不可」が典型的な出題ポイント。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生規則(安衛則)第43条(雇入れ時の健康診断)・第51条(記録の保存)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。