衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問19:労働基準法
妊産婦(妊娠中の女性または産後1年以内の女性)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア妊娠中の女性および産後1年以内の女性は、いかなる状況においても時間外労働・休日労働・深夜業に従事させることはできない。
- イ産後8週間を経過しない女性については、本人が就業を請求した場合でも、産後8週間は就業させることができない。
- ウ産後6週間を経過した女性が就業を請求し、医師が支障がないと認めた業務については、就業させることができる。正答
- エ妊娠中の女性が請求した場合は他の軽易な業務に転換させなければならず、産後1年以内の女性についても同様に軽易な業務への転換を請求する権利が認められている。
- オ坑内業務の禁止は妊娠中の女性にのみ適用され、産後1年以内の女性は本人が希望すれば坑内業務に就かせることができる。
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正しいのはウです。産後6週間が経過し、本人が就業を請求し、さらに医師が支障がないと認めた業務については就業させることができます(労基法第65条第3項)。産後は8週間が絶対的保護期間ですが、6週間から8週間の期間は「本人請求+医師許可」の条件が満たされれば就業が認められます。
各誤り: ア→「いかなる状況においても」は誤り。妊産婦が「請求した場合」に制限されるもの(時間外・休日・深夜は請求があった場合のみ禁止であり、全て絶対的禁止ではない)。イ→産後8週間以内でも6週間経過後は医師の許可があれば就業可能。エ→軽易業務転換請求権(労基法第65条第3項)は「妊娠中の女性」のみに認められ、産後1年以内の女性には認められません。「産後1年以内の女性にも同様に認められる」とする後半が誤りです。オ→坑内業務禁止は産後1年以内の女性にも適用されます。
妊産婦保護の法体系(労基法第64条の2〜第66条):
妊産婦保護は「絶対的禁止(本人の意思にかかわらず禁止)」と「請求による制限(本人が請求した場合に禁止)」の2種類があります。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 時間外労働・休日労働・深夜業の制限(労基法第66条)は「妊産婦が請求した場合」に使用者が命じることができなくなるものです。妊産婦が請求しなければ(本人が希望すれば)時間外等に従事させることは法律上禁止されていません。「いかなる状況においても」という絶対的表現が誤りです。
- イ(誤): 産後8週間は原則就業禁止ですが(労基法第65条第2項本文)、「産後6週間を経過した女性が就業を請求し、医師が支障がないと認めた業務」については就業が認められます(同条ただし書)。産後8週間全て絶対禁止ではありません。
- ウ(正): 労基法第65条第2項ただし書の通りです。産後6週間経過+本人請求+医師許可の3条件が必要です。
- エ(誤): 軽易業務転換請求権(労基法第65条第3項)は「妊娠中の女性が請求した場合」に限られ、産後1年以内の女性には認められません。よって「産後1年以内の女性についても同様に請求権が認められる」とする後半が誤りです(前半の妊娠中の女性に関する記述は正しい)。
- オ(誤): 坑内業務禁止(労基法第64条の2)は妊娠中・産後1年以内の女性両方に適用されます。産後1年以内の女性も坑内業務に就かせることはできません(本人希望でも禁止)。
【理論的背景】
妊産婦保護規定(労基法第64条の2〜第66条)は、母体保護と胎児・新生児の健全な発育を確保するために設けられています。保護の強度によって「絶対的禁止(本人意思に関係なく禁止)」と「相対的制限(本人の請求を前提に制限)」に分類されます。
この分類が試験で問われる核心であり、選択肢アの「いかなる状況においても」という表現と選択肢ウ・イの条件付き制限の正確な区別が得点のポイントです。
絶対的禁止(本人意思・請求に関係なく禁止):
1. 産後8週間以内の就業禁止(労基法第65条第2項本文)※ただし6週間後の医師許可あれば例外
2. 坑内業務への就業(労基法第64条の2): 妊娠中・産後1年以内の女性全員
3. 一定の危険有害業務への就業(労基法第64条の3): 省令で定める業務
相対的制限(本人が請求した場合のみ禁止):
1. 時間外労働・休日労働(労基法第66条第1項・第2項)
2. 深夜業(労基法第66条第3項)
【実務・条文構造】
産前産後休業の基本構造(労基法第65条):
【産前休業(同条第1項)】:
- 産前6週間(双子等多胎妊娠は14週間)について請求した女性は就業させることができない
- 「請求した場合」に発生する権利(本人が働きたければ働ける)
【産後休業(同条第2項)】:
- 産後8週間は原則就業禁止(絶対的保護)
- 例外: 産後6〜8週間の期間で「本人が請求し・医師が支障なしと認めた業務」は可
【妊娠中の軽易業務転換(同条第3項)】:
- 妊娠中の女性が請求した場合、使用者は他の軽易な業務に転換させなければならない
- 対象は「妊娠中の女性」に限られ、産後1年以内の女性には軽易業務転換の請求権はない(産後の保護は産後休業・育児介護休業法・均等法等で別途手当てされる)
- なお「軽易な業務」は原則として本人が請求した業務を指し、新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない(行政通達)
坑内業務禁止の対象(労基法第64条の2):
- 妊娠中の女性: 全ての坑内業務(完全禁止)
- 産後1年以内の女性: 全ての坑内業務(完全禁止・本人希望不可)
- 女性一般(妊産婦以外): 省令で定める一定の坑内業務のみ禁止
危険有害業務の就業制限(労基法第64条の3):
- 妊娠中の女性: 省令(女性労働基準規則)で定める危険有害業務(重量物取扱い・有害ガス業務等)への就業禁止
- 産後1年以内の女性: 省令で定める一定の業務への就業禁止(妊娠中より範囲が若干狭い場合あり)
- 本人の意思に関係なく適用される絶対的禁止
【試験での位置づけ】
妊産婦保護問題は「絶対的禁止 vs 請求があった場合の禁止」「産後6週間後の医師許可例外」「坑内業務禁止の対象(産後1年以内も含む)」の3点が核心です。「産後1年以内は坑内業務OK」(選択肢オ)は最頻出の誤りパターンです。また「時間外・深夜は請求があった場合のみ禁止(絶対的禁止ではない)」という理解も重要で、選択肢アのような「いかなる状況においても禁止」という絶対的表現は誤りのサインです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 「いかなる状況においても」という強い表現は、法律の規定を絶対的にしすぎる誤りパターンの典型です。時間外・休日・深夜業の制限は「妊産婦の請求」が前提であり、本人が望んで時間外労働をする場合は禁止されません(安全上問題がある場合は別途危険有害業務の規制が適用される場合あり)。
- イ: 産後6〜8週間の例外(「本人請求+医師許可」)は産後回復の個人差に対応した規定です。産後6週間以降でも回復が早い場合には本人意思で復帰できる仕組みです。「産後8週間は絶対的に禁止」と思い込むと選択肢イを正しいと誤認するリスクがあります。
- ウ: 本問の正答。産後6週間経過後の就業は「本人請求+医師が支障なしと認めた業務」という二重の条件が必要です。どちらか一方の条件だけでは就業できない点も確認しておきましょう。
- エ: 軽易業務転換請求権(労基法第65条第3項)は「妊娠中の女性」に限定された権利であり、産後1年以内の女性には及びません。本肢は前半(妊娠中の女性への転換義務)が正しい分、後半(産後1年以内にも同様の請求権が認められる)の誤りを見抜けるかが問われます。産後の女性は産後休業・育児時間(労基法第67条の育児時間とは別に、生後満1年に達しない生児を育てる女性の育児時間は第67条)・育児介護休業法・均等法で保護されますが、労基法第65条第3項の軽易業務転換請求権の対象ではありません。
- オ: 坑内業務禁止(労基法第64条の2)は「妊娠中の女性および産後1年以内の女性」を対象として列挙しており、産後1年以内の女性も含みます。「産後1年以内は対象外」という誤りは毎回出題される最頻出の引っかけです。
【根拠法令】労働基準法 第64条の2(坑内業務禁止:妊娠中・産後1年以内の女性)・第65条第2項ただし書(産後6週間後の医師許可就業)・第65条第3項(妊娠中の軽易業務転換)・第66条(時間外・休日・深夜業は請求があった場合の禁止)
【補足】坑内業務禁止は産後1年以内の女性も含む(本人希望でも不可)。産後8週間禁止だが6週間後は本人請求+医師許可で例外あり。時間外・深夜禁止は本人「請求」が前提の相対的制限。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第64条の2(坑内業務の禁止)・第64条の3(危険有害業務の就業制限)・第65条(産前産後休業・軽易業務転換)・第66条(時間外・休日・深夜業の制限)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。