関係法令(有害業務以外)30健康診断

衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問30:健康診断

長時間労働者への面接指導に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 週の法定労働時間(40時間)を超えた時間が1か月当たり100時間を超えた労働者から申出があった場合は、医師による面接指導を行わなければならない。
  • 週の法定労働時間(40時間)を超えた時間が1か月当たり80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者から申出があった場合は、医師による面接指導を行わなければならない。
  • 長時間労働者に対する面接指導を実施した医師は、就業上の措置に関して事業者に意見を述べることができるが、この意見に法的拘束力はなく、事業者はこれを参考にするかどうかを自由に判断できる。正答
  • 事業者は、面接指導の結果の記録を作成し、5年間保存しなければならない。
  • 研究開発業務に従事する労働者で、月100時間を超えて時間外・休日労働をしている者については、本人の申出がなくても事業者が面接指導を行わなければならない。
正答:長時間労働者に対する面接指導を実施した医師は、就業上の措置に関して事業者に意見を述べることができるが、この意見に法的拘束力はなく、事業者はこれを参考にするかどうかを自由に判断できる。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠法令も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

誤りはウです。医師が面接指導の結果に基づいて就業上の措置に関する意見を述べた後、事業者はその意見を「勘案」して就業上の措置を決定する義務があります(安衛法第66条の8の4)。「自由に判断できる」という表現は誤りであり、意見を単純に無視することは許されません。ただし医師の意見に「法的拘束力(強制力)」がないという部分は正しく、最終的な措置決定権は事業者にあります(医師の指示に必ず従う義務はない)。「これを参考にするかどうかを自由に判断できる」という部分が誤りです。

ア(100時間超の申出)、イ(80時間超・疲労蓄積・申出の条件)、エ(記録5年保存)、オ(研究開発業務・100時間超は申出不要)はいずれも正しい記述です。

標準試験対策の基準レベル

長時間労働者への面接指導の制度(安衛法第66条の8・第66条の8の2):

面接指導には「一般の労働者(申出要件あり)」と「研究開発業務従事者(申出不要・強制的実施)」の2種類があります。

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 安衛法第66条の8第1項・安衛則第52条の2の通り。時間外・休日労働が月80時間超(疲労蓄積が認められる者が申出)のほか、月100時間超の者(疲労蓄積の有無を問わず申出があれば実施義務)という2段階があります。
  • イ(正): 月80時間超+疲労の蓄積+労働者の申出という3条件が揃った場合の面接指導義務(安衛法第66条の8)。kankei_06の論点と一致する正しい記述です。
  • ウ(誤): 面接指導後の医師の意見(安衛法第66条の8第4項・第66条の8の4)を受けた事業者は「勘案して必要な措置を講じる義務」を負います(第66条の8第5項)。意見を「参考にするかどうかを自由に判断できる」という表現は義務の軽視であり誤りです。ただし医師の意見に「法的拘束力」がない(措置の最終決定権は事業者)という点は正しいです。
  • エ(正): 安衛則第52条の7により、面接指導の結果の記録は5年間保存が必要です。
  • オ(正): 安衛法第66条の8の2(研究開発業務従事者への特例)により、研究開発業務に従事する労働者で月100時間超の時間外・休日労働がある場合は、本人の申出がなくても事業者が面接指導を実施しなければなりません(申出要件なし)。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

面接指導制度(安衛法第66条の8)は、長時間労働による健康障害(過労死・うつ病等)を未然に防ぐために設けられた予防的措置です。単に「長時間働いた事実」だけでなく「疲労の蓄積」と「申出」の要件を設けることで、本人が自覚的に受診を求める形になっています。

一方、研究開発業務従事者(安衛法第66条の8の2・2019年施行)では申出要件を廃止し、強制的な実施義務としました。研究開発業務は成果主義的な性質から過重労働になりやすく、かつ本人が「申し出づらい」という実態への対応です。

医師意見の「勘案義務」の法的意味(選択肢ウが誤りの根拠):

「勘案」とは「十分に考慮する」という意味であり、単なる参考ではありません。事業者は医師の意見を無視・軽視することは義務違反となり、後に過労死等の健康障害が発生した場合に安全配慮義務違反(民法・労働契約法)として民事責任を問われるリスクがあります。「自由に判断できる」という表現は勘案義務を無効化する誤りです。

【実務・条文構造】

面接指導の種類と要件の比較:

【一般の労働者(安衛法第66条の8)】:

  • 要件①: 月80時間超の時間外・休日労働(法定労働時間40時間を超えた部分)
  • 要件②: 疲労の蓄積が認められる
  • 要件③: 労働者の申出(これがトリガー)

→ 3要件が揃った場合に事業者の面接指導実施義務が発生

【月100時間超の場合の特則(安衛則第52条の2第1項)】:

  • 月100時間超の時間外・休日労働がある場合: 疲労蓄積の有無にかかわらず、申出があれば実施義務

(100時間超であれば疲労蓄積の認定不要・ただし申出は必要)

【研究開発業務従事者(安衛法第66条の8の2)】:

  • 月100時間超の時間外・休日労働の場合: 本人の申出不要・事業者が一方的に実施義務

(2019年施行・裁量労働制適用者にも適用)

【面接指導実施後の流れ】:

1. 医師が面接指導を実施(申出から「おおむね1か月以内」に実施)

2. 医師から就業上の措置に関する意見を聴取(安衛法第66条の8第4項)

3. 事業者が意見を勘案して就業上の措置を決定(同条第5項)

- 措置内容: 就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等

4. 面接指導の結果の記録作成・5年間保存(安衛則第52条の7)

5. 措置内容を衛生委員会に報告(任意)

月80時間超・100時間超の閾値の意味:

  • 80時間超: 長時間労働による健康障害リスクが高まる目安(過労死ラインと呼ばれることがある)
  • 100時間超: 明確な過重負荷として強化した面接指導実施義務が発生するライン

36協定の特別条項上限(月100時間未満・複数月平均80時間以内)と対応した設定です。

【試験での位置づけ】

面接指導の問題は「申出要件(80時間超・疲労蓄積・申出の3条件)」「100時間超の特則(疲労蓄積認定不要・申出は必要)」「研究開発業務従事者(100時間超・申出不要)」「医師意見の勘案義務(自由判断ではない)」「記録5年保存」の5点が頻出です。kankei_06(ストレスチェック・面接指導)と本問(研究開発業務・勘案義務)はセットで理解する論点です。「勘案義務」vs「自由判断」という表現の微妙な違いに注意が必要です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 月100時間超では「疲労の蓄積」という要件が外れます(100時間超の時間外労働があれば疲労蓄積は自明という扱い)。申出さえあれば実施義務が発生します。月80時間超との違い(疲労蓄積の認定有無)を明確に区別することが重要です。
  • イ: kankei_06の内容と一致します。80時間超・疲労蓄積・申出の3条件がポイント。「80時間」という数値(一般的な「残業代の80時間規制」や特別条項の平均80時間と対応)を正確に覚えることが必要です。
  • ウ: 「勘案して必要な措置を講じる義務」(第66条の8第5項)という表現の「必要な措置を講じる義務」という部分が重要です。医師が「措置不要」と意見した場合は措置不要の根拠になりますが、「措置が必要」と意見した場合に「参考にするかどうかを自由に判断できる」という立場は義務違反になります。
  • エ: 面接指導結果の記録は5年保存(安衛則第52条の7)。健康診断個人票(5年)と同じ保存期間です。両者を混同しないよう注意が必要ですが、結果的に両方5年です。
  • オ: 研究開発業務(R&D部門・研究職等)への特例は、創造的・専門的業務での過重労働という社会問題への対応です。裁量労働制が適用されている研究職にも適用される点が特徴です(裁量労働制では通常の残業規制が異なりますが、面接指導義務は適用される)。

【根拠法令】労働安全衛生法 第66条の8第1項(80時間超・疲労蓄積・申出の要件)・第66条の8第5項(勘案して必要な措置を講じる義務)・第66条の8の2(研究開発業務100時間超・申出不要)、労働安全衛生規則 第52条の7(面接指導記録5年保存)

【補足】研究開発業務従事者の月100時間超面接指導は申出不要(強制実施)。医師の意見は「勘案して必要な措置を講じる義務」があり「自由に判断できる」ではない。記録は5年保存。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第66条の8(面接指導の実施・申出要件)・第66条の8の2(研究開発業務従事者への特例)・第66条の8の4(面接指導の結果に基づく措置)、労働安全衛生規則(安衛則)第52条の2〜第52条の8(面接指導の詳細規定)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

関連論点

健康診断実施後の面接指導・産業医意見頻出度A

関係法令(有害業務以外)の他の問題

1
安全衛生管理体制
2
安全衛生管理体制
3
健康診断
4
安全衛生管理体制
5
労働基準法
6
健康診断・メンタルヘルス

科目別に解いて、衛生管理者に合格

関係法令・労働衛生・労働生理を260問。第一種・第二種対応。各問に根拠法令とAI解説(3レベル)付き。