衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問47:安全衛生管理体制
職場における健康障害防止の基本的なアプローチ(三管理)に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア作業環境管理とは、労働者個人の作業方法・労働時間・保護具の着用を適切に管理することにより、有害因子への暴露を低減させることをいう。
- イ作業管理とは、作業環境を測定・評価し、発生源対策・換気などによって職場の有害因子の濃度・強度を許容できる水準以下に保つことをいう。
- ウ健康管理とは、健康診断・面接指導などを通じて労働者の健康状態を把握し、健康障害の早期発見・早期措置および就業上の配慮を行うことをいう。正答
- エ三管理(作業環境管理・作業管理・健康管理)のうち、最も優先されるべき管理は健康管理であり、労働者の健康診断結果に基づいて作業環境・作業方法を改善するアプローチが推奨されている。
- オ作業環境管理と作業管理は、いずれも有害因子そのものを除去・低減する措置であり、両者を区別する実務的な意義はほとんどない。
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正しいのはウです。健康管理は、健康診断・面接指導等を通じて労働者の健康状態を把握し、健康障害を早期発見・早期対処するとともに、就業上の配慮(作業転換・労働時間短縮等)を行うことです。三管理の中で「人(労働者個人)」に着目する管理であり、ウの記述は正確です。
各誤りの要点: ア→記述の内容は「作業管理」(個人の作業方法・保護具着用・労働時間管理)の説明です。「作業環境管理」は発生源対策・換気・設備的な対策によって職場環境そのものの有害因子を低減させることです。イ→記述の内容は「作業環境管理」の説明です。エ→三管理の優先順位は「作業環境管理が最優先」とされており、健康管理が最優先というのは誤りです。オ→作業環境管理(環境そのものの改善)と作業管理(個人の作業方法・保護具の管理)は明確に区別され、実務上も異なるアプローチをとります。
三管理の定義と優先順位:
職業性疾病の予防には、①有害因子を発生源で制御する「工学的対策(作業環境管理)」、②個人レベルで有害因子への暴露を低減する「行動的対策(作業管理)」、③労働者の健康状態を追跡する「医学的対策(健康管理)」の三層構造が基本です。
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 選択肢の記述は「作業管理」の内容です。作業環境管理とは、職場の作業環境(空気中の有害物質濃度・騒音レベル・温湿度等)を測定・評価し、発生源対策・密閉化・換気装置の設置等によって有害因子の濃度・強度を一定水準以下に保つことです。
- イ(誤): 選択肢の記述は「作業環境管理」の内容です。作業管理とは、労働者の作業方法・作業時間・保護具の使用・適切な体位の維持等を管理することで、個人レベルでの有害因子への暴露を低減することです。
- ウ(正): 健康管理の正確な定義。健康診断による異常の早期発見・面接指導・就業上の配慮(作業転換・就業制限等)が含まれます。
- エ(誤): 三管理の優先順位は「作業環境管理 → 作業管理 → 健康管理」の順が一般原則です(有害因子を源から制御するほど根本的な対策)。健康管理は「一次予防の手段が不十分な場合の補完的な安全網」という位置づけです。
- オ(誤): 作業環境管理(職場環境そのものの改善・設備的対策)と作業管理(個人の行動・保護具着用の管理)は概念・実施主体・有効な場面が異なります。
【理論的背景】
職場における健康障害の予防は、「職業性疾病の発生プロセス(有害因子→暴露→吸収→健康影響)」に対して、どの段階で介入するかという視点で三管理が体系化されています。
三管理の概念は産業衛生学(Occupational Medicine)の基礎理論として国際的に確立されており、ILO・WHOの勧告でも有害因子の「源での制御(Hazard Elimination / Engineering Control)」を最優先とするハイアラーキー・オブ・コントロール(管理の階層)と一致しています。
三管理の優先順位(制御の階層):
1. 作業環境管理(最優先): 有害因子そのものを除去・代替・密閉化・換気によって職場環境から排除または低減する(工学的対策)
2. 作業管理(次優先): 有害因子を完全排除できない場合に、個人の作業方法・時間・距離・保護具によって個人の暴露量を下げる(行政的対策・個人的保護措置)
3. 健康管理(補完): 上記二つが不完全な場合の安全網として健康状態を追跡し、早期発見・早期対処する(医学的対策)
「健康管理が最優先」という誤りが典型的な引っかけです。健康管理は「労働者個人の健康問題は見つけられるが、職場環境そのものを改善しない限り次々と被害者が出る」という限界があります。
【実務・条文構造】
三管理に対応する法令上の義務:
1. 作業環境管理(安衛法第65条・安衛則第588条等):
- 作業環境測定: 有害業務を行う作業場の環境測定(騒音・有害物質濃度等)
- 管理区分に基づく措置: 第3管理区分(最悪)→改善計画・設備改善の義務
- 設備的措置: 局所排気装置・全体換気装置の設置・密閉化
2. 作業管理(安衛法・安衛則・各有害業務規則):
- 作業標準・作業手順の整備(適切な作業方法の確立)
- 労働時間管理・暴露時間の制限(有害業務での就業時間制限等)
- 個人用保護具(PPE)の選定・支給・着用管理
- 適切な体位・姿勢の維持(人間工学的観点)
3. 健康管理(安衛法第66条〜第66条の10):
- 定期健康診断・特殊健康診断・特定業務従事者健康診断
- 面接指導(長時間労働者・ストレスチェック後の高ストレス者)
- 就業上の措置(医師意見聴取・作業転換・労働時間短縮・就業禁止等)
- 健康情報の管理(個人情報保護・プライバシー配慮)
三管理に加えた「総括管理」:
三管理の実施には組織的な「総括管理」が必要です。これは経営トップが安全衛生方針を定め、組織全体で三管理を推進するための管理的枠組みであり、PDCAサイクルで継続的改善を行います。安全衛生管理体制(総括安全衛生管理者・衛生管理者・産業医・衛生委員会)がこの総括管理を担う組織的インフラです。
【試験での位置づけ】
三管理の頻出ポイント:
- 各管理の正確な定義(「作業環境管理≠作業管理」の取り違えが最頻出)
- 優先順位: 「作業環境管理 > 作業管理 > 健康管理」
- 健康管理は「補完的安全網」であり最優先ではない
出題パターン:
- 「作業環境管理」の説明として「個人の保護具着用管理」を置く誤り(保護具は作業管理)
- 「作業管理」の説明として「環境測定・換気設備の設置」を置く誤り(これは作業環境管理)
- 「健康管理が最優先」という誤り選択肢
- 「三管理に区別の実務的意義はない」という誤り選択肢
【各選択肢の発展補足】
- ア: 保護具着用管理が「作業管理」に含まれる理由は、個人の行動レベルでの暴露制御であるためです。保護具は「職場環境を改善する」のではなく「個人が有害環境から自分を守る」ための手段です。制御の階層では保護具(PPE)は最後の手段とされており、工学的対策が優先されます。
- イ: 作業環境測定・換気装置の設置が「作業環境管理」の代表的な手段です。局所排気装置・全体換気装置・発生源の密閉化・代替物質への切り替えがこれに含まれます。「環境」を管理するので「作業環境管理」です。
- ウ: 健康管理の「就業上の配慮」には、①就業禁止、②作業転換、③労働時間短縮、④深夜業の回数削減、⑤医師の治療等が含まれます(安衛法第66条の5)。これらは職場環境の改善ではなく「個人の就業状況の調整」です。
- エ: 「作業環境管理が最優先」の根拠は「同じ職場にいる全員を守れる集団的対策であり、個人任せの対策(保護具・健康診断)より根本的」という点です。一人の健康診断異常を見つけても環境を改善しなければ次の被害者が出ます。
- オ: 作業環境管理と作業管理の区別は、「事業者の設備投資・環境整備の義務(作業環境管理)」と「労働者の行動規範・保護具使用義務(作業管理)」という責任の所在の違いとも対応します。法令上も別々の規定で義務が課されており、実務上の区別は重要です。
【根拠法令】労働安全衛生法 第65条(作業環境測定:作業環境管理)・第65条の4(作業管理:健康障害防止のための措置)・第66条〜第66条の10(健康管理:健康診断・面接指導等)
【補足】作業環境管理=職場環境(換気・設備)の改善。作業管理=個人の作業方法・保護具の管理。健康管理=健康診断・就業上の配慮。優先順位は作業環境管理→作業管理→健康管理(健康管理は最優先ではない)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)・職業医学・産業衛生の基本概念(三管理の体系は労働衛生管理の根幹)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。