問題
高度プロフェッショナル制度と裁量労働制に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
誤っているのはウです。専門業務型裁量労働制の導入手続きは、過半数組合(ない場合は過半数代表者)との書面による協定(労使協定)の締結と労働基準監督署への届出が基本です(労基法第38条の3)。「労使委員会の決議が必要」とするのは誤りで、労使委員会の決議が要件になっているのは企画業務型裁量労働制(第38条の4)と高度プロフェッショナル制度(第41条の2)です。
ア(年収1,075万円以上・特定の業務)、イ(労働時間・休憩・休日・深夜割増の規定が不適用)、エ(支社・工場でも対象業務があれば導入し得る)、オ(深夜・休日の割増賃金は免除されない)は正しい記述です。
高度プロフェッショナル制度と裁量労働制の比較(労基法):
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 第41条の2第1項第2号ロの年収要件は、厚生労働省令で「1,075万円以上」と定められています(厚生労働省「わかりやすい解説」)。対象業務は①金融商品の開発②資産運用・有価証券の売買等③アナリスト④コンサルタント⑤研究開発の5業務です。
- イ(正): 第41条の2第1項は、要件を満たした対象労働者について「この章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は…適用しない」と定めています。
- ウ(誤): 第38条の3は過半数組合等との「書面による協定」を要件とし、協定は届出が必要です(第38条の3第2項による第38条の2第3項の準用)。対象業務は省令・告示で定める20業務で、令和6年4月からは労働者本人の同意も必要です。
- エ(正): 厚生労働省の解説は、該当する業務の例に「地域統括支社におけるその地域の各支社を統括した事業戦略の策定」「各支社におけるその支社のみの事業戦略の策定」「各工場における特定の製品についての海外における事業戦略の策定」を挙げています。
- オ(正): 裁量労働制は労働時間を「みなす」制度で、深夜・休日の規定の適用は外れません。深夜割増の規定まで適用除外となるのは高度プロフェッショナル制度(第41条の2)です。
【理論的背景】
裁量労働制と高度プロフェッショナル制度は、どちらも業務の遂行方法を労働者の裁量に委ねる働き方を対象としますが、法的な仕組みが異なります。
専門業務型裁量労働制(第38条の3): 業務の性質上、遂行の手段・時間配分の決定等について使用者が具体的な指示をすることが困難な業務として省令で定める業務について、協定で定めた時間労働したものと「みなす」制度です。
企画業務型裁量労働制(第38条の4): 「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」について、労使委員会の委員の5分の4以上の多数による決議と届出により、決議で定めた時間労働したものとみなす制度です。本人の同意が決議事項に含まれます(第1項第6号)。
高度プロフェッショナル制度(第41条の2): 労使委員会の5分の4以上の決議・届出と本人の同意を要件に、労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金に関する規定そのものを適用しない制度です。みなし時間ではなく、規定の適用除外である点が裁量労働制と異なります。
【実務・条文構造】
三制度の比較:
| 制度 | 根拠条文 | 導入手続き | 対象業務 | 年収要件 | 深夜・休日の規定 |
|---|---|---|---|---|---|
| 専門業務型裁量 | 第38条の3 | 書面による労使協定+届出(令和6年4月から本人同意も必要) | 省令・告示の20業務 | なし | 適用あり |
| 企画業務型裁量 | 第38条の4 | 労使委員会の5分の4以上の決議+届出+本人同意 | 事業の運営に関する企画・立案・調査・分析 | なし | 適用あり |
| 高度プロフェッショナル | 第41条の2 | 労使委員会の5分の4以上の決議+届出+本人同意 | 省令の5業務 | 1,075万円以上 | 適用除外 |
専門業務型裁量労働制の対象20業務(厚生労働省資料)の例: 新商品・新技術の研究開発/情報処理システムの分析・設計/記事の取材・編集/デザインの考案/プロデューサー・ディレクター/コピーライター/システムコンサルタント/インテリアコーディネーター/ゲーム用ソフトウェアの創作/証券アナリスト/金融商品の開発/大学における教授研究/M&Aアドバイザー/公認会計士・弁護士・建築士・不動産鑑定士・弁理士・税理士・中小企業診断士の業務。
高度プロフェッショナル制度の健康確保措置(第41条の2第1項第3号〜第5号):
1. 健康管理時間を把握する措置(第3号)
2. 1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日の確保(第4号・必須)
3. 次のいずれかの措置(第5号・選択): イ 始業から24時間を経過するまでの継続した休息時間の確保と、深夜に労働させる回数の1か月当たりの上限/ロ 健康管理時間の1か月又は3か月の上限/ハ 1年に1回以上の継続した2週間(労働者が請求した場合は1年に2回以上の継続した1週間)の休日(有給休暇を与えた日を除く)/ニ 一定の要件に該当する労働者への健康診断
→ 第3号から第5号までの措置のいずれかを講じていない場合は、適用除外の効果が生じません(第1項ただし書)。
【試験での位置づけ】
頻出の区別:
- 専門業務型: 「書面による労使協定+届出」
- 企画業務型: 「労使委員会の決議+届出」。対象は業務で決まり、本社・本店に限られない
- 高度プロフェッショナル: 「年収1,075万円以上・5業務・労使委員会の決議+届出+本人同意・深夜割増も適用除外」
- 裁量労働制(専門・企画とも): 「深夜・休日の規定は適用あり」
「専門業務型の手続きは労使協定か労使委員会の決議か」は最も出題されやすい区別です。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 年収要件の賃金は、あらかじめ具体的な額をもって支払われることが約束され、支払われることが確実に見込まれる賃金であり、勤務成績・成果等に応じて支払われる賞与や業績給など支給額があらかじめ確定されていない賃金は含まれません(厚生労働省「わかりやすい解説」)。
- イ: 適用除外は第3号〜第5号の措置を講じていることが前提です。措置のいずれかを講じていなければ、労働時間・休日・深夜割増の規定が原則どおり適用されます。
- ウ: 専門業務型の協定で定める事項には、みなし労働時間、具体的な指示をしないこと、健康・福祉確保措置、苦情処理措置のほか、令和6年4月からは本人の同意を得ること・同意しなかった労働者に不利益な取扱いをしないこと・同意の撤回の手続が加わりました(厚生労働省資料)。
- エ: 企画業務型の対象は「業務」で判断され、厚生労働省の解説は支社・工場での事業戦略の策定も該当する業務の例に挙げています。一方、本社や各支社における個別の営業活動、各工場における個別の製造作業やその工程管理は該当しない業務の例です。
- オ: 企画業務型の就業規則の規定例でも、所定休日の勤務や深夜(22時〜5時)の勤務に対して割増賃金を支払う定めが置かれています(厚生労働省「企画業務型裁量労働制の解説」)。
【根拠法令】労働基準法 第38条の3(専門業務型裁量労働制:書面による協定+届出)・第38条の4(企画業務型裁量労働制:労使委員会の5分の4以上の決議+届出)・第41条の2(高度プロフェッショナル制度:労使委員会の決議+届出+本人同意・労働時間・休憩・休日・深夜割増の規定を不適用)
【補足】専門業務型の導入手続きは「書面による労使協定+届出」。企画業務型・高度プロフェッショナルは「労使委員会の決議+届出」。企画業務型は支社・工場でも対象業務があれば導入し得る。裁量労働制でも深夜・休日の規定は適用される。
- 労働基準法第38条の3e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第38条の3(専門業務型裁量労働制)・第38条の4(企画業務型裁量労働制)・第41条の2(高度プロフェッショナル制度)。厚生労働省「専門業務型裁量労働制について」(https://www.mhlw.go.jp/content/001164346.pdf)・「企画業務型裁量労働制の解説」(https://www.mhlw.go.jp/content/001236403.pdf)・「高度プロフェッショナル制度わかりやすい解説(令和8年以降版)」(https://www.mhlw.go.jp/content/001749350.pdf)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

