衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問70:労働基準法
妊産婦の労働制限に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア妊娠中の女性が請求した場合、使用者は時間外労働・休日労働・深夜業の全てを禁止しなければならない。
- イ産後8週間以内の女性は、本人が希望しても就業させることができない。
- ウ妊産婦以外の女性(一般女性)についても、労働基準法は深夜業(午後10時〜午前5時)への従事を原則として禁止している。
- エ使用者は、産後6週間を経過した女性が就業を申し出た場合、医師が支障ないと認めた業務に就かせることができる。正答
- オ妊産婦に対する時間外労働の制限は、あくまで本人からの請求を要件としており、事業者が一方的に時間外労働を禁止することはできない。
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正しいのはエです。労基法第65条第3項により、産後8週間以内の女性の就業は原則禁止ですが、産後6週間を経過した女性が就業を申し出た場合に、医師が支障ないと認めた業務については就業させることができます。産後「6週間後・医師の許可」という2要件が必要です。
各誤り: ア→妊娠中の女性の時間外・休日・深夜業制限は「本人の請求」が要件であり、全て自動的に禁止されるわけではありません。イ→産後8週間は原則禁止ですが6週間後に医師許可があれば就業可能(イの「就業させることができない」は絶対禁止と誤解させる)。ウ→現行の労基法は一般女性の深夜業を禁止していません(1999年改正で禁止規定は廃止)。オ→請求がなくても管理監督者等を除く規定があるが、記述として不正確です。
妊産婦の労働制限の全体像:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(誤): 労基法第66条第2項(時間外労働・休日労働)・第3項(深夜業)により、妊産婦が請求した場合に制限されます。「請求」が要件であり、本人からの申出なしに自動的に全て禁止されるわけではありません。また時間外・休日・深夜業のそれぞれについて個別に請求できる構造です。
- イ(誤): 労基法第65条第2項の産後8週間の就業禁止には例外があります。産後6週間を経過し、本人の申出と医師の許可があれば就業可能です(選択肢エが正しいことの裏付け)。「いかなる場合も就業させることができない」という絶対的禁止の表現が誤りです。
- ウ(誤): 1999年の男女雇用機会均等法・労基法改正(2000年4月施行)により、一般女性(妊産婦以外)の深夜業禁止規定は廃止されました。現行法では一般女性の深夜業は禁止されていません。
- エ(正): 労基法第65条第3項により正しい記述です。産後6週間経過・本人の申出・医師が支障なしと認めた業務という3要件が満たされた場合に就業可能となります。
- オ(誤): 制限の発動には「本人の請求」が要件ですが、管理監督者等の適用除外のある者を除き、請求があれば事業者は拒否できません。また事業者が自主的に配慮(過重業務からの保護)を行うことは可能です。
【理論的背景】
妊産婦の労働保護(労基法第64条〜第68条)は、母体の健康保護と胎児・新生児の健全な発育を確保するための規定です。産後の就業禁止(第65条)は医学的知見(分娩後の身体回復)に基づいており、6週間(法定の産後休業の最短期間)は「産褥期の基本的な回復期間」として設定されています。
一般女性の深夜業禁止が1999年に廃止された背景には、男女雇用機会均等の観点から「特定の性別だけに課す就業制限は差別的」という政策判断があります。一方、妊産婦は「特別な保護を要する状態」であるため、時間外・休日・深夜業の制限は維持されています(請求型)。
【実務・条文構造】
妊産婦の就業制限の体系(労基法第64条〜第68条):
絶対禁止(本人の意思・請求にかかわらず禁止):
1. 坑内業務(妊産婦・産後1年未満を経過しない女性): 労基法第64条の2
2. 危険有害業務(重量物取扱い・有害ガス等): 労基法第64条の3
3. 産後8週間以内の就業(原則): 労基法第65条第2項
請求型(本人が請求した場合に制限・請求なしは制限なし):
- 変形労働時間制の制限: 労基法第66条第1項(妊産婦が請求した場合、変形労働時間制でも法定労働時間を超えて労働させられない)
- 時間外労働・休日労働の制限: 労基法第66条第2項(36協定があっても請求があれば不可)
- 深夜業の制限: 労基法第66条第3項
産後8週間就業禁止の例外(労基法第65条第2項ただし書):
- 条件①: 産後6週間が経過していること
- 条件②: 本人が就業を申し出ること
- 条件③: 医師が当該業務を支障なしと認めること
→ 3要件が全て満たされた場合のみ就業可能
妊産婦の定義:
- 妊婦: 妊娠中の女性
- 産婦: 産後1年以内の女性(法律上の定義は産後1年以内)
- 「妊産婦」= 妊婦+産婦の総称
一般女性の深夜業に関する現行法:
- 1999年以前: 原則禁止(男女雇用機会均等法整備前の女性保護規定)
- 2000年4月以降: 禁止規定廃止(男女平等の観点から削除)
- 現在: 妊産婦の請求型制限のみが残存
育児・介護休業法との関係:
- 産後8週間の就業禁止(労基法第65条)は産後休業(育介法の産後休業)の基本
- 育介法では産後休業の権利(最長8週間取得可)に加え、育児休業(子が1歳まで)を規定
- 2022年育介法改正で「産後パパ育休」(出生後8週間以内に最大4週間)が新設
【試験での位置づけ】
妊産婦関連で頻出なのは「産後6週間・医師許可で就業可能」「一般女性の深夜業禁止は現行法では存在しない」「請求型の制限の要件(本人の請求が必要)」の3点です。「産後8週間=絶対禁止」と誤解させる選択肢(本問イのような選択肢)は頻出の引っかけパターンです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 時間外・休日・深夜業の制限は「請求型」であり、妊産婦全員が自動的に禁止されるわけではありません。実務では、妊娠の事実を把握した段階で事業者が「請求できる旨を周知する義務」があります(均等法第12条)。
- イ: 産後8週間の就業禁止(絶対型)と、6週間後の例外規定を正確に区別することが重要です。8週間の根拠は医学的に産褥期が約6〜8週間であることと、育児の時間確保です。
- ウ: 1999年の改正前は「女性保護の観点から深夜業を原則禁止」という考え方がありましたが、「就業機会の均等」への政策転換で廃止されました。ただし夜勤のある職場での妊産婦への配慮義務(均等法)は残っています。
- エ: 「医師が支障ないと認めた業務」という限定は重要です。産後6週間でも「重労働・立ち仕事・精神的ストレスの高い業務」等は医師が不適と判断する場合があります。
- オ: 請求型制限の趣旨は「本人の自律性を尊重しながら保護する」という考え方です。事業者が一方的に不利益を与えることは均等法・育介法の不利益取扱い禁止(ハラスメント防止)に違反しますが、保護的な配慮(軽業務への転換提案等)は許容されます。
【根拠法令】労働基準法 第65条第2項・第3項(産後8週間就業禁止・6週間後医師許可での就業可)・第66条第2項・第3項(妊産婦の請求による時間外・休日・深夜業制限)
【補足】産後8週間就業禁止は原則だが産後6週間経過+本人申出+医師許可で就業可。一般女性の深夜業禁止は1999年廃止。妊産婦の時間外等制限は「本人の請求」が要件。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法(労基法)第64条の2(坑内業務禁止)・第66条第2項(妊産婦の請求による時間外・休日労働の制限)・第66条第3項(深夜業の制限)・第65条第2項・第3項(産前産後休業)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。