衛生管理者 関係法令(有害業務以外) 問72:安全衛生管理体制
雇入れ時および作業変更時の安全衛生教育(安衛法第59条)に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事業者は、新たに雇い入れた労働者に対し、当該業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならない。
- イ雇入れ時の安全衛生教育は、正規雇用の労働者だけでなく、臨時労働者・パートタイム労働者に対しても実施しなければならない。
- ウ作業変更時の安全衛生教育は、従事する業務を変更した場合だけでなく、作業設備・作業方法が変更された場合にも実施が必要である。
- エ危険または有害な業務に従事する労働者に対し行う特別教育(安衛法第59条第3項)の記録は、5年間保存しなければならない。正答
- オ雇入れ時の安全衛生教育については、その実施が義務付けられているが、教育記録の作成・保存期間についての規定は労働安全衛生規則に明文化されていない。
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誤りはエです。特別教育(安衛法第59条第3項)の記録は、安衛則第38条により「特別教育の記録を作成し、3年間保存しなければならない」と規定されています。「5年間保存」という記述は誤りです(3年が正しい)。
ア(新雇入れ時の教育義務)、イ(臨時・パートも対象)、ウ(作業設備・方法変更時も実施義務)、オはいずれも正しい記述です。オについては、特別教育の記録保存義務(安衛則第38条・3年)とは異なり、雇入れ時教育・作業変更時教育の記録保存については労働安全衛生規則に明文の規定がありません(実務上は記録保存が強く推奨されるが、法令上の義務規定ではない)。この「特別教育=記録保存義務あり(3年)/雇入れ時・作業変更時教育=明文の記録保存義務なし」という違いが本問の核心です。
安全衛生教育(安衛法第59条)の全体像:
各選択肢の正誤と根拠:
- ア(正): 安衛法第59条第1項により、雇入れ時に当該業務に関する安全・衛生教育の実施義務があります。業種・規模を問わず全ての事業者に義務があります。
- イ(正): 安衛法第59条の対象は「労働者」であり、雇用形態(正規・臨時・パート・派遣等)を問いません。短時間雇用や派遣労働者に対する教育義務も明確に含まれます。
- ウ(正): 安衛法第59条第2項により、「労働者の作業内容を変更したとき」の教育義務は、業務内容の変更だけでなく「機械・設備の導入による作業方法の変更」等も含まれます(安衛則第35条の「作業設備の変更」も該当)。
- エ(誤): 安衛則第38条により、特別教育(安衛法第59条第3項)の記録は3年間保存しなければなりません。「5年間」という記述は誤りです。
- オ(正): 雇入れ時教育(安衛法第59条第1項)・作業変更時教育(同条第2項)については、実施義務(罰則付き)はあるものの、記録の作成・保存についての明文規定は労働安全衛生規則にありません。記録保存義務が明文化されているのは特別教育(安衛則第38条・3年)のみです。したがってオは正しい記述です(実務上は記録保存が強く推奨される)。
【理論的背景】
安全衛生教育(安衛法第59条・第60条・第60条の2)は、労働災害の発生を防ぐために「知識・技能の習得」を制度的に保証する仕組みです。特に雇入れ時は、新たな職場・業務に不慣れなため事故リスクが高い(労働災害の発生頻度は雇用後1〜6か月の新規雇用者に集中する統計がある)ことから、入職教育の義務化が重要です。
安全衛生教育の種類と根拠規定:
1. 雇入れ時教育(安衛法第59条第1項): 全業種・全雇用形態
2. 作業変更時教育(安衛法第59条第2項): 従事業務・作業設備・方法変更時
3. 危険有害業務の特別教育(安衛法第59条第3項): 安衛則第36条の危険有害業務リスト
4. 職長教育(安衛法第60条): 製造業・建設業等の新任職長
5. 危険有害業務従事者の能力向上教育(安衛法第60条の2): 機会ある毎に実施
【実務・条文構造】
雇入れ時・作業変更時教育の実施内容(安衛則第35条):
1. 機械・設備・原材料等の取扱方法に関すること
2. 安全装置・保護具等の性能・取扱方法
3. 作業手順に関すること
4. 作業開始時の点検
5. 当該業務に関して発生する恐れのある疾病の原因・予防
6. 整理整頓・清潔の保持
7. 事故時等における応急措置・退避
8. 前各号に掲げるもののほか、業務に関する安全・衛生のために必要な事項
業種による教育内容の省略:
- 安衛則第35条第2項により、業種・業務によっては「危険有害性のない項目」(上記1〜4の一部)を省略できます。ただし省略できるのは「危険または有害な業務に従事しない場合」に限られます。
特別教育が必要な業務(安衛則第36条・抜粋):
- 研削といしの取替え(電動工具等)
- 動力プレス機械の操作
- 高所作業車の運転(地上10m以上)
- 有機溶剤等の取扱い(関係規則)
- ボイラーの整備
等、80種類以上の危険有害業務
教育記録の保存義務:
- 特別教育の記録: 3年間保存が法定義務(安衛則第38条)
- 雇入れ時・作業変更時教育の記録: 記録の作成・保存についての明文の法令規定なし(実務上は記録保存が強く推奨されるが法定義務ではない)
- 職長教育の記録: 法令上の明文の保存義務なし(行政指導レベルで推奨)
記録保存義務に関する重要な区別: 法令で「3年間保存」が明文化されているのは特別教育(安衛則第38条)のみです。雇入れ時教育・作業変更時教育・職長教育には実施義務(罰則付き)はあるものの記録保存の明文規定はありません。ただし労働災害発生時に「適切な教育を実施した」ことを証明できるよう、実務上は記録の作成・保存が不可欠です。書面様式は法定されていませんが、教育年月日・教育内容・受教育者の氏名・講師の氏名等を記録することが推奨されます。
【試験での位置づけ】
安全衛生教育では「特別教育の記録3年保存(安衛則第38条)」「全雇用形態に適用」「作業変更時は設備・方法変更時も含む」が頻出です。特に「記録保存義務が明文化されているのは特別教育(3年)のみで、雇入れ時教育・作業変更時教育には明文の保存義務がない」という区別は、本問のような正誤判定で問われる重要ポイントです。また「雇入れ時教育の業種・規模による省略可否」(一部内容は省略可)も試験ポイントです。
【各選択肢の発展補足】
- ア: 雇入れ時教育の義務は「当該業務に関する」という限定があります。従事しない業務についての全般的な安全衛生知識まで義務付けているわけではありません。しかし企業文化として広範な安全意識啓発教育を行うことは推奨されます。
- イ: 派遣労働者の場合、安衛法の適用は「派遣先事業者」が担います(派遣法・安衛法の調整規定)。雇入れ時教育は派遣先の実際の就業場所での業務内容に応じて実施されます。
- ウ: 「作業設備の変更」の例として、コンベアの導入・機械の更新・作業手順の見直し等があります。新しい設備・手順には新たなリスクが存在するため、変更時に再教育を行うことで事故防止につなげます。
- エ: 特別教育の記録保存は安衛則第38条で3年と明文化されています(5年ではない)。特別教育の対象業務(安衛則第36条)は定期的に見直しされ、新技術・新設備の普及に伴い「アーク溶接」「小型車両系建設機械」等が追加されてきた歴史があります。
- オ: 雇入れ時教育・作業変更時教育には記録保存の明文規定がない点が、特別教育(安衛則第38条・3年保存義務)との大きな違いです。ただし労働災害発生時に「適切な教育を実施した」ことを証明できなければ安全配慮義務違反を問われるリスクが高いため、実務上は記録の作成・保存が不可欠とされています。
【根拠法令】労働安全衛生法 第59条第1項・第2項(雇入れ時・作業変更時教育義務)・第59条第3項(特別教育)、労働安全衛生規則 第35条(教育内容)・第36条(特別教育の対象業務)・第38条(特別教育の記録の3年保存)
【補足】記録保存義務が明文化されているのは特別教育(安衛則第38条・3年保存)のみ。雇入れ時教育・作業変更時教育には記録保存の明文規定なし(実務上は保存が不可欠)。全雇用形態が対象。作業設備・方法変更時も作業変更時教育の義務あり。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法(安衛法)第59条(雇入れ時・作業変更時教育)・第60条(職長教育)、労働安全衛生規則(安衛則)第35条(教育内容)・第36条(特別教育の対象業務)・第38条(特別教育の記録の3年保存)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。