労働生理21消化吸収・代謝

衛生管理者 労働生理 問21:消化吸収・代謝

血糖調節ホルモンに関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌され、血糖値を低下させる作用を持つ。
  • グルカゴンは膵臓のランゲルハンス島α細胞から分泌され、肝臓のグリコーゲン分解と糖新生を促進して血糖値を上昇させる作用を持つ。
  • アドレナリンは副腎髄質から分泌され、肝臓・筋肉のグリコーゲン分解を促進して血糖値を上昇させる。インスリンの作用と反対方向に働く。
  • コルチゾール(糖質コルチコイド)は副腎皮質から分泌され、タンパク質の異化を促進してアミノ酸から糖新生を促進するとともに、末梢組織でのインスリン感受性を増加させる(インスリン様作用を持つ)。正答
  • 1型糖尿病ではインスリンの絶対的欠乏が生じ、2型糖尿病ではインスリン抵抗性(インスリンが分泌されても効果が出にくい状態)が主体となることが多い。
正答:コルチゾール(糖質コルチコイド)は副腎皮質から分泌され、タンパク質の異化を促進してアミノ酸から糖新生を促進するとともに、末梢組織でのインスリン感受性を増加させる(インスリン様作用を持つ)。

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誤りはエです。コルチゾールは副腎皮質から分泌されるホルモンで、タンパク質の異化(分解)を促進してアミノ酸から糖新生を促進する点は正しいですが、「末梢組織でのインスリン感受性を増加させる」は誤りです。コルチゾールは末梢組織のインスリン感受性を低下させます(インスリン抵抗性を増加させる)。これによりコルチゾールは血糖上昇作用を持ち、インスリンの働きを妨げる「拮抗ホルモン」として機能します。ステロイド薬(コルチゾール類似物質)を長期投与すると血糖値が上がる(ステロイド糖尿病)のはこの機序によります。

その他の選択肢はすべて正確です。インスリン(β細胞・血糖低下)(ア)、グルカゴン(α細胞・血糖上昇)(イ)、アドレナリン(副腎髄質・血糖上昇)(ウ)、糖尿病の1型・2型の違い(オ)はいずれも正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): インスリンはランゲルハンス島β細胞(膵臓の内分泌細胞集団)から血糖高値に反応して分泌されます。血糖低下の主な機序: ①細胞(筋・脂肪)へのグルコース取り込み促進、②肝臓でのグリコーゲン合成促進、③グリコーゲン分解・糖新生の抑制。
  • イ(正): グルカゴンは低血糖時に膵臓α細胞から分泌されます。主な作用: 肝臓のグリコーゲン分解(グリコゲノリシス)促進→グルコース放出→血糖上昇。肝臓の糖新生促進(アミノ酸・乳酸・グリセロールからグルコース産生)。
  • ウ(正): アドレナリン(エピネフリン)は副腎髄質から分泌され、交感神経活性化(ストレス・運動)と連動します。肝臓・筋肉のグリコーゲン分解促進→血糖上昇。インスリンの血糖低下作用に拮抗します。
  • エ(誤): コルチゾールの作用:

①タンパク質異化(筋肉分解)→アミノ酸供給→肝臓での糖新生促進→血糖上昇: 正しい

②末梢組織のインスリン感受性を「増加」させる: 誤り。コルチゾールは末梢組織(筋肉・脂肪)のインスリン感受性を低下させ(インスリン抵抗性を引き起こし)、血糖を高く維持する方向に働きます。長期ステロイド使用によるステロイド糖尿病の機序がこれです。

  • オ(正): 1型糖尿病(膵β細胞の自己免疫破壊によるインスリン絶対的欠乏)と2型糖尿病(インスリン抵抗性+相対的インスリン分泌不足)の正確な区別の記述です。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

血糖調節は複数のホルモンが協調して行う精巧なフィードバック系です。インスリン(唯一の血糖低下ホルモン)に対して、複数の「インスリン拮抗ホルモン」が血糖を上昇させる方向に機能します。

インスリン拮抗ホルモンの体系整理:

| ホルモン | 産生部位 | 主な血糖上昇機序 | 分泌タイミング |

|---|---|---|---|

| グルカゴン | 膵α細胞 | 肝グリコーゲン分解・糖新生促進 | 低血糖・空腹時 |

| アドレナリン | 副腎髄質 | 肝・筋グリコーゲン分解促進・インスリン分泌抑制 | ストレス・運動・低血糖緊急時 |

| コルチゾール | 副腎皮質 | 糖新生促進(タンパク異化→アミノ酸供給)・インスリン感受性低下 | ストレス慢性曝露・朝方(概日リズム) |

| 成長ホルモン | 下垂体前葉 | 末梢でのインスリン感受性低下・脂肪酸動員 | 睡眠深睡眠・空腹・運動 |

インスリン抵抗性の機序(コルチゾール・アドレナリンによる):

  • 受容体後シグナル経路の障害: インスリンがIRS(インスリン受容体基質)を介してPI3K-Akt経路を活性化し、GLUT4(グルコーストランスポーター4)の細胞膜への移行を促進する→コルチゾール・炎症性サイトカイン等がこの経路を阻害→GLUT4が細胞膜に出てこない→グルコースが細胞に取り込まれない→血糖高値

インスリンの筋肉・脂肪への作用(GLUT4)とグルコーストランスポーター:

  • 脳・肝臓: GLUT1・GLUT2(インスリン非依存的にグルコースを取り込む)
  • 筋肉・脂肪組織: GLUT4(インスリン依存的→インスリンがないとグルコースを取り込めない)
  • 赤血球: GLUT1(インスリン非依存的)

【実務・条文構造】

糖尿病と職場(産業衛生的重要事項):

糖尿病労働者の職場対応:

  • 1型糖尿病(インスリン依存): 低血糖発作(インスリン過量・食事遅延・労働強度変化)に注意→職場でのブドウ糖補給の準備・緊急連絡体制
  • 2型糖尿病(最多): メタボリックシンドローム・過重労働・ストレス(コルチゾール過剰)が増悪因子→生活習慣指導・ストレス管理

ステロイド糖尿病の職場への影響:

  • リウマチ・喘息・膠原病等でステロイド長期投与を受けている労働者が多い
  • ステロイドによるインスリン抵抗性→血糖上昇(ステロイド糖尿病)→免疫抑制→感染リスク増大
  • 産業医・衛生管理者: ステロイド投与中の労働者の血糖管理を重要視する

過重労働とストレスホルモン:

  • 慢性的な過重労働→HPA軸の慢性活性化→コルチゾール慢性過剰分泌→インスリン抵抗性→2型糖尿病リスク上昇
  • コルチゾール→免疫抑制→感染症リスク増大・創傷治癒遅延
  • ストレスが血糖管理を悪化させる機序: コルチゾール↑→インスリン抵抗性↑→血糖コントロール不良

特定健康診査(メタボ健診)の検査項目と意義:

  • 空腹時血糖・HbA1c: インスリン抵抗性・糖代謝異常の検出
  • 腹囲(内臓脂肪の指標): 内臓脂肪↑→脂肪組織からの炎症性サイトカイン↑→インスリン抵抗性↑
  • 血中脂質(中性脂肪・HDL): インスリン抵抗性の間接的指標

【試験での位置づけ】

血糖調節ホルモン問題では「インスリン=β細胞・血糖低下(唯一の低下ホルモン)」「グルカゴン=α細胞・血糖上昇」「アドレナリン=副腎髄質・血糖上昇(ストレス時)」「コルチゾール=副腎皮質・血糖上昇・インスリン感受性を低下(増加ではない)」が最頻出です。エのような「コルチゾールがインスリン感受性を増加(インスリン様作用)」という誤りは方向を逆にした典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ソモジー現象とドーン現象: 夜間の低血糖(インスリン過量)→グルカゴン・アドレナリン・コルチゾール分泌→早朝の血糖上昇(ソモジー現象)。コルチゾールの概日リズム(朝に最大)→早朝の血糖上昇(ドーン現象)。1型糖尿病患者の夜間インスリン調節において重要です。
  • エ: ステロイドパルス療法(高用量ステロイド短期投与)→著明な血糖上昇→入院中の患者の場合は血糖モニタリングが必要。職場でステロイド投与中の労働者がいる場合、血糖コントロールの状態確認と低血糖・高血糖症状の理解が産業医・衛生管理者に求められます。
  • オ: 2型糖尿病の「インスリン抵抗性」の主な原因: 内臓脂肪蓄積→遊離脂肪酸↑→GLUT4のシグナル阻害、炎症性サイトカイン(TNF-α・IL-6等)産生↑→インスリンシグナル阻害、慢性的なインスリン高値→受容体のダウンレギュレーション。過重労働・慢性ストレス→コルチゾール↑→インスリン抵抗性もこのカテゴリに入ります。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。コルチゾールがインスリン感受性を低下させる(インスリン拮抗ホルモンとして機能する)こと、インスリン(β細胞)・グルカゴン(α細胞)の産生部位と作用は内分泌生理学の基礎概念として確立。

【補足】コルチゾールは末梢組織のインスリン感受性を「低下」させる(増加は誤り)→インスリン拮抗ホルモン。インスリン=β細胞・血糖低下。グルカゴン=α細胞・血糖上昇。アドレナリン=副腎髄質・血糖上昇。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学・内分泌学)。コルチゾールは末梢組織のインスリン感受性を「低下」させる(増加ではない)。コルチゾールはインスリン拮抗ホルモン(血糖上昇作用)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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