労働生理22消化吸収・代謝

衛生管理者 労働生理 問22:消化吸収・代謝

栄養素の特性と役割に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • ビタミンCは水溶性ビタミンであり、コラーゲン合成に必要で、欠乏すると壊血病(出血傾向・歯ぐきからの出血等)を生じる。過剰摂取しても尿中に排泄されるため毒性は比較的低い。
  • ビタミンDは脂溶性ビタミンであり、腸管からのカルシウム吸収を促進する。日光(紫外線)照射によって皮膚でも産生される。欠乏すると小児でくる病、成人で骨軟化症が生じる。
  • ビタミンKは脂溶性ビタミンであり、血液凝固因子(プロトロンビン等)の活性化に不可欠であり、欠乏すると出血傾向が生じる。また骨タンパク質(オステオカルシン)の合成にも関与する。
  • 鉄は赤血球のヘモグロビン(Fe₂⁺を含む)の構成成分として酸素運搬に不可欠であり、欠乏すると鉄欠乏性貧血が生じる。食品中の非ヘム鉄(植物性鉄)は動物性ヘム鉄より吸収率が高い。正答
  • カルシウムは骨・歯の主要な構成成分であるほか、筋肉収縮・神経伝達・血液凝固にも関与する。日本人は長年カルシウム摂取量が推奨量に達していない傾向がある。
正答:鉄は赤血球のヘモグロビン(Fe₂⁺を含む)の構成成分として酸素運搬に不可欠であり、欠乏すると鉄欠乏性貧血が生じる。食品中の非ヘム鉄(植物性鉄)は動物性ヘム鉄より吸収率が高い。

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誤りはエです。「非ヘム鉄(植物性)は動物性ヘム鉄より吸収率が高い」という記述が誤りです。実際は逆で、動物性食品に含まれるヘム鉄の方が、植物性食品に含まれる非ヘム鉄より吸収率が高い(ヘム鉄:約15〜25%、非ヘム鉄:約2〜5%)のが正しい関係です。ヘム鉄はヘモグロビン・ミオグロビン由来の有機鉄で、腸管で直接吸収されます。非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂取すると吸収率が向上します。

その他の選択肢はすべて正確です。ビタミンC(コラーゲン合成・壊血病)(ア)、ビタミンD(Ca吸収促進・くる病)(イ)、ビタミンK(凝固因子活性化)(ウ)、カルシウムの多機能性と日本人の摂取不足(オ)はいずれも正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれる水溶性ビタミンです。コラーゲンのプロリン・リジン残基の水酸化に必要な酵素(プロリン水酸化酵素・リジン水酸化酵素)の補酵素として機能します。欠乏するとコラーゲン合成が障害→毛細血管が脆くなる→出血傾向(壊血病)。水溶性のため過剰分は尿中排泄されますが、大量摂取(サプリメント等)では腎結石リスクが上昇することがあります。
  • イ(正): ビタミンDはコレカルシフェロール(D₃)等で、皮膚での産生(7-デヒドロコレステロール+UV→ビタミンD₃)と食品摂取の両方で補給されます。主な機能: 腸管Ca・P吸収促進→血中Ca濃度維持→骨の石灰化促進。欠乏→Ca吸収障害→骨のミネラル化不全→小児でくる病(骨変形)・成人で骨軟化症。
  • ウ(正): ビタミンKはビタミンK₁(フィロキノン、植物性食品)とK₂(メナキノン、腸内細菌産生・発酵食品)があります。主な機能: 凝固因子(II・VII・IX・X・タンパクC・S等)のγ-カルボキシグルタミン酸化(活性化)に不可欠。欠乏→凝固因子活性低下→出血傾向。新生児は腸内細菌が少なくK₂産生が乏しいため、新生児ビタミンK欠乏性出血症が起きる(予防のためビタミンK₂シロップを投与)。
  • エ(誤): ヘム鉄(動物性食品のヘモグロビン・ミオグロビン由来)の吸収率は約15〜25%、非ヘム鉄(植物性食品の無機鉄・有機酸鉄)の吸収率は約2〜5%です。動物性ヘム鉄の方が吸収率が高い(記述は逆)。非ヘム鉄はビタミンC(還元型)と一緒に摂取するとFe³⁺→Fe²⁺への還元が促進されて吸収率が向上します。
  • オ(正): カルシウムの機能は多岐にわたります。骨・歯(99%のCaが存在)・筋収縮(Ca²⁺がアクチン-ミオシン相互作用を調節)・神経伝達物質放出のトリガー・血液凝固(凝固カスケードにCa²⁺が必要)。日本人のカルシウム摂取量は長年推奨量(成人: 700〜800mg/日)を大幅に下回っており、骨粗鬆症リスクが高い集団的問題となっています。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

栄養素の吸収効率は食品の形態・共食成分・個人の生理状態によって大きく変動します。鉄の吸収は特に調節が複雑で、ヘム鉄と非ヘム鉄の吸収機序の違い、促進因子と阻害因子の理解が栄養管理において重要です。

鉄の吸収メカニズムの詳細:

ヘム鉄の吸収経路:

  • 動物性食品(肉・魚・内臓)のヘモグロビン・ミオグロビンが消化されてヘムが遊離
  • 腸管上皮細胞のHCP1(ヘムキャリアプロテイン1)がヘムをそのまま取り込む
  • 細胞内でヘムオキシゲナーゼがヘムを分解してFe²⁺を遊離
  • 吸収率: 約15〜25%(体内鉄充足状態でも比較的安定)

非ヘム鉄の吸収経路:

  • 植物性食品・サプリメントに含まれるFe³⁺(第二鉄)が主
  • まず胃酸やビタミンC(還元剤)でFe³⁺→Fe²⁺(第一鉄)に還元される(必須ステップ)
  • 腸管上皮細胞のDMT1(二価金属トランスポーター1)がFe²⁺を取り込む
  • 吸収率: 約2〜5%(体内鉄不足時に増加、充足時に低下)

非ヘム鉄の吸収に影響する因子:

| 促進因子 | 阻害因子 |

|---|---|

| ビタミンC(Fe³⁺→Fe²⁺の還元) | タンニン(お茶・コーヒー:Fe²⁺と不溶性複合体形成) |

| 動物性タンパク質(「肉因子」) | フィチン酸(穀物・豆:キレート) |

| 胃酸(還元環境の維持) | リン酸塩 |

| 低体内鉄状態(吸収率が自動的に上昇) | シュウ酸(ほうれん草等) |

【実務・条文構造】

職場での鉄欠乏性貧血の健康管理:

鉄欠乏性貧血のリスクが高い職域:

  • 女性労働者(月経による鉄損失:月間15〜30mg)
  • 若年女性・妊婦
  • 激しい肉体労働者(汗・消化管出血等による鉄損失)
  • 宗教的菜食主義者・ビーガン(非ヘム鉄のみ摂取)

貧血と労働パフォーマンス:

  • 鉄欠乏性貧血→Hb低下→O₂運搬能低下→筋肉への酸素供給不足→易疲労・筋力低下
  • 鉄欠乏(貧血未満の「隠れ鉄不足」)でも認知機能・作業効率が低下するという研究がある
  • 健康診断でのMCV(平均赤血球容積)・Hb・Ht・血清フェリチンのスクリーニングが有効

脂溶性ビタミン(ADEK)の過剰蓄積リスク:

  • 脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は体脂肪・肝臓に蓄積されるため過剰摂取で毒性が生じる
  • ビタミンA過剰: 頭痛・脱毛・催奇形性(妊婦では特に問題)
  • ビタミンD過剰: 高カルシウム血症→腎結石・軟組織の石灰化
  • ビタミンKは比較的安全(毒性が低い)、ワルファリン(抗凝固薬)服用者ではK₁摂取量の一定化が必要

【試験での位置づけ】

栄養素問題では「ヘム鉄(動物性)>非ヘム鉄(植物性)の吸収率(逆ではない)」「ビタミンD=Ca吸収促進・欠乏でくる病/骨軟化症」「ビタミンK=凝固因子活性化・欠乏で出血傾向」「ビタミンC=コラーゲン合成・欠乏で壊血病」が最頻出です。エのように「植物性鉄の方が吸収率が高い」という逆転した記述は典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: ビタミンCの職場健康管理への応用: 喫煙者は非喫煙者よりビタミンCの酸化消費が多いため推奨摂取量が高い(喫煙者+35mg/日)。有害化学物質(有機溶剤等)へのばく露が多い労働者では酸化ストレスが増加するため、抗酸化ビタミン(C・E)の摂取状況に注意することが衛生管理上有益です。
  • イ: ビタミンD不足の職業的リスク: 屋内作業中心の職種(工場・事務職・夜勤者)では日光照射が少なくビタミンD産生が低下します。特に夜勤者は昼間の日照を浴びる機会が減るため、ビタミンD不足→骨粗鬆症・筋力低下リスクが増加します。衛生管理者として夜勤者の栄養指導に取り入れるべき知識です。
  • エ: 「お茶は鉄吸収を阻害する」という知識の実際: 食後すぐのお茶(特に緑茶・紅茶・コーヒー)に含まれるタンニン(ポリフェノールの一種)は非ヘム鉄と不溶性複合体を形成し、吸収を著しく低下させます。鉄欠乏性貧血の治療で鉄剤を服用する際は「お茶で飲まない(水か白湯で)」指導が重要です。ヘム鉄はタンニンの影響を受けにくいという違いもあります。
  • オ: 骨粗鬆症の予防と職場介入: 骨密度の維持には①カルシウム摂取(乳製品・小魚・大豆)②ビタミンD(日光照射・食品)③荷重運動(歩行・ジョギング等)④ビタミンK(納豆・緑黄色野菜)の4要素が重要です。職場の健康増進プログラムで「骨密度測定会」「カルシウム摂取指導」を行うことは特に女性従業員の骨粗鬆症予防に有効です。

【根拠】医学的事実(確立した栄養学・生理学)。ヘム鉄の吸収率が非ヘム鉄より高いこと・鉄吸収の促進・阻害因子・各ビタミンの機能と欠乏症は栄養学の基礎概念として確立。

【補足】ヘム鉄(動物性)の吸収率は非ヘム鉄(植物性)より高い(逆ではない)。ビタミンD=Ca吸収促進、ビタミンK=凝固因子活性化、ビタミンC=コラーゲン合成。非ヘム鉄はビタミンCで吸収率が向上。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した栄養学・生理学)。ヘム鉄(動物性)の方が非ヘム鉄(植物性)より吸収率が高い(逆ではない)。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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