労働生理25腎臓・尿

衛生管理者 労働生理 問25:腎臓・尿

体液バランスと腎臓の機能に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 成人の体液量は体重の約60%(男性)を占め、細胞内液(約40%)と細胞外液(約20%)に分けられる。細胞外液はさらに血漿(約5%)と組織間液(約15%)に分けられる。
  • 脱水の種類として、水と電解質がほぼ同程度に失われる「等張性脱水(混合性脱水)」と、水の欠乏が電解質欠乏より優位な「高張性脱水」、電解質欠乏が水欠乏より優位な「低張性脱水」がある。
  • 高張性脱水(水欠乏型)では血漿浸透圧が上昇し、強い口渇感が生じる。バソプレシンの分泌が増加して尿量が減少する。
  • 低張性脱水(Na欠乏型)では血漿浸透圧が低下し、口渇感はほとんど生じない。過剰な水分補給(Na補充なし)をすると低ナトリウム血症が進行し、重篤な場合は脳浮腫が生じることがある。
  • 浮腫は組織間液が異常に増加した状態であり、心不全による静脈圧上昇・低アルブミン血症・炎症による毛細血管透過性亢進・リンパ管閉塞のいずれかによっても生じるが、腎臓の糸球体ろ過量が低下しても浮腫は生じない。正答
正答:浮腫は組織間液が異常に増加した状態であり、心不全による静脈圧上昇・低アルブミン血症・炎症による毛細血管透過性亢進・リンパ管閉塞のいずれかによっても生じるが、腎臓の糸球体ろ過量が低下しても浮腫は生じない。

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誤りはオです。「腎臓の糸球体ろ過量が低下しても浮腫は生じない」という部分が誤りです。腎不全でGFR(糸球体ろ過量)が低下すると、水と塩分(Na⁺)の排泄が減少し、体内に水・Naが貯留します。その結果循環血液量が増加→静脈圧が上昇→毛細血管からの液体滲出が増加→組織間液増加→浮腫が生じます。腎臓病における浮腫は、GFR低下による水・Na貯留が主な原因の一つです。

その他の選択肢はすべて正確です。体液区分(ア)、脱水の種類(イ)、高張性脱水の症状(ウ)、低張性脱水と低Na血症(エ)はいずれも正確です。

標準試験対策の基準レベル

各選択肢の正誤と根拠:

  • ア(正): 成人の体液区分の正確な記述です。体重70kgの例: 全体液量=42L(60%)、細胞内液=28L(40%)、細胞外液=14L(20%)、血漿=3.5L(5%)、組織間液=10.5L(15%)。女性は体脂肪が多いため体液率が約55%とやや低い。
  • イ(正): 脱水の3分類の正確な記述です。等張性脱水(最多:嘔吐・下痢・熱傷等)、高張性脱水(水摂取不足・高温環境での発汗・尿崩症等)、低張性脱水(汗を水だけで補給・副腎不全等)の3種類。
  • ウ(正): 高張性脱水の病態は正確な記述。水が失われて電解質が相対的に多い→血漿浸透圧上昇→視床下部の浸透圧受容器が感知→①強い口渇感(水を飲む行動を誘発)②バソプレシン分泌増加→集合管での水再吸収増加→尿量減少・尿比重上昇。
  • エ(正): 低張性脱水の病態は正確な記述。Na⁺が優位に失われて水が相対的に多い(または水のみで補給した場合)→血漿浸透圧低下→口渇感が生じにくい→飲水行動が起きにくい→さらに細胞外液が希釈される。過剰な水分補給(スポーツ時の水のみ補給→低Na血症)は低ナトリウム血症・脳浮腫のリスクがあります(低ナトリウム血症性脳症)。
  • オ(誤): 浮腫の原因の記述は前半まで正確ですが、最後の「GFR低下でも浮腫は生じない」が誤りです。腎不全(急性・慢性ともに)ではGFR低下→尿量減少→水・Naの体内貯留→循環血液量増加→静脈圧上昇→毛細血管静水圧上昇→組織への液体滲出増加→浮腫。腎疾患は浮腫の重要な原因の一つです。
上級誤答論破・根拠法令まで深掘り

【理論的背景】

体液バランスの調節は複数の臓器・ホルモンが協調して行います。腎臓は尿量・電解質排泄の最終コントロールを行い、体液の量・組成の恒常性維持の中心臓器です。

体液区分と電解質の分布(細胞内・外での主要電解質の違い):

  • 細胞内液の主要陽イオン: K⁺(約140mEq/L)、Mg²⁺
  • 細胞内液の主要陰イオン: 有機リン酸・タンパク質
  • 細胞外液(血漿・組織間液)の主要陽イオン: Na⁺(約140mEq/L)
  • 細胞外液の主要陰イオン: Cl⁻(約100mEq/L)・HCO₃⁻(約26mEq/L)

各種脱水のまとめ・職場での対応:

| 種類 | 特徴 | 血漿浸透圧 | 口渇 | 治療の基本 |

|---|---|---|---|---|

| 等張性脱水 | 水・塩分を同等に喪失(嘔吐・下痢等) | 正常 | 中等度 | 等張液(生理食塩水等)で補給 |

| 高張性脱水 | 水の喪失が主(高温発汗・高齢者の飲水不足等) | 上昇 | 強い | 水(低張液)の補給が主 |

| 低張性脱水 | 塩分(Na)喪失が主(汗を水だけで補給等) | 低下 | 少ない | Na補充(塩分を含む飲料・生理食塩水) |

浮腫の成因と分類(スターリングの力関係):

  • 静水圧上昇: 心不全・深部静脈血栓症・GFR低下による体液貯留→毛細血管からの液体滲出増加
  • 膠質浸透圧低下: 低アルブミン血症(肝不全・ネフローゼ症候群・低栄養)→液体回収力低下→浮腫
  • 毛細血管透過性亢進: 炎症・アレルギー・火傷・敗血症→血管から蛋白質が漏出→局所の膠質浸透圧低下
  • リンパ流障害: リンパ節郭清後・フィラリア症→リンパ液の還流障害→リンパ浮腫
  • 腎性浮腫: GFR低下・ネフローゼ症候群(大量タンパク尿→低アルブミン血症)等

【実務・条文構造】

熱中症と体液管理(衛生管理者として必須の知識):

熱中症の分類と体液バランスの関係:

  • 熱中症I度(熱失神・熱けいれん): 皮膚血管拡張による相対的な脳への血流不足、または低Na血症(汗を水のみで補給)
  • 熱中症II度(熱疲労): 水・電解質欠乏による循環不全(高張性または等張性脱水)
  • 熱中症III度(熱射病): 体温調節中枢の破綻→高体温(≥40℃)→臓器障害(腎不全・肝不全・DIC等)

熱けいれん(heat cramps)の機序と治療:

  • 大量発汗→Na損失→水だけ補給→低Na血症→骨格筋の電解質異常→痛みを伴う筋けいれん
  • 治療: 生理食塩水またはスポーツドリンクでNa補充(水だけでは悪化する)

職場での水分補給指導の標準:

  • WBGTが28℃以上: 20〜30分ごとに200〜250mLの水分補給
  • Na補充の重要性: 純水のみ補給は低Na血症リスク→0.1〜0.2%食塩水またはスポーツドリンク推奨
  • 高温作業者には「口渇を感じる前に補給」の指導(高張性脱水では口渇は有用なシグナルだが、感知が遅れる場合もある)

【試験での位置づけ】

体液バランス問題では「体液区分の数値(60%・40%・20%・5%・15%)」「高張性脱水:浸透圧上昇・口渇強い・ADH増加」「低張性脱水:浸透圧低下・口渇少ない・水のみ補給で悪化」「浮腫の4原因(静水圧上昇・膠質浸透圧低下・透過性亢進・リンパ閉塞)+腎不全によるGFR低下」が最頻出です。オのような「GFR低下でも浮腫が生じない」という誤りは腎疾患の浮腫の原因を無視した典型的な引っかけです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 加齢と体液割合: 乳幼児は約75〜80%(体液が多い)で乳幼児は脱水しやすい。高齢者は約50〜55%(体液が少ない・筋肉量低下・体脂肪増加)。高齢者は口渇感を感じにくく(浸透圧受容器の感受性低下)、脱水に気づきにくいリスクがあります。
  • イ: 日常の汗(高温環境・中等度労働での発汗)は基本的に低張液です(Na濃度が血漿より低い約20〜80mEq/L)。したがって大量発汗→水のみ補給→低Na血症という経路(低張性脱水)が職場での熱中症対策として重要な問題となります。スポーツドリンクはNa・Kを含み、これを防ぐ設計になっています。
  • エ: 運動時の低ナトリウム血症(Exercise-Associated Hyponatremia: EAH)は、マラソン等の持久系競技で発症し、重篤な場合は脳浮腫・死亡に至ります。原因は「過度の水分補給(水のみ)」により血中Na濃度が希釈されること。治療は高張食塩水の投与(低張液の投与は禁忌)。職場でも「水を飲みすぎる」ことのリスクを周知する必要があります。
  • オ: ネフローゼ症候群では尿タンパク(3.5g/日以上の大量蛋白尿)→血清アルブミン低下(3g/dL以下)→膠質浸透圧低下→浮腫という機序で生じます。一方で腎炎症候群(急性糸球体腎炎等)では糸球体ろ過量の低下による体液貯留が浮腫の主因です。2つの腎疾患で浮腫の機序が異なるため、職場での尿タンパク陽性者への対応(蛋白尿の量・性状・腎機能検査で区別して医療機関に紹介)が重要です。

【根拠】医学的事実(確立した生理学・腎臓内科学)。GFR低下(腎不全)が水・Na貯留→浮腫を引き起こすこと、体液区分・脱水の3分類・浮腫の成因は体液生理学の基礎概念として確立。

【補足】GFR低下(腎不全)では水・Na貯留→浮腫が生じる(「生じない」は誤り)。浮腫の原因は静水圧上昇・膠質浸透圧低下・透過性亢進・リンパ閉塞の4つ+腎不全。高張性脱水は口渇強い・ADH増加。低張性脱水は口渇少ない・水のみ補給で悪化。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(公表問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 医学的事実(確立した生理学)。腎臓のGFR低下(腎不全)では尿量減少→水・Na貯留→循環血液量増加→静脈圧上昇→浮腫が生じる。「GFR低下でも浮腫は生じない」は誤り。 現行の労働安全衛生法令(2026年基準)に準拠し、根拠法令・規則を明記しています。

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