なぜ民法改正の把握が行政書士試験で必須なのか
行政書士試験は「現行法」に基づく試験です。民法は2019年・2020年に大きな改正があり、旧ルールのままで解答すると不正解になる問題が複数あります。
改正前の古い参考書や過去問(2020年以前のもの)を使っている受験者が最も注意すべきポイントが、この民法改正への対応です。
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2020年施行:債権法改正の主要ポイント
2020年4月1日施行の「民法の一部を改正する法律」は、1896年(明治29年)の民法制定以来最大規模の改正とされます。行政書士試験で頻出の改正ポイントに絞って整理します。
ポイント1:消滅時効の統一
改正前(旧民法):
職業ごとに1〜3年の短期消滅時効が存在(例:医師の診療報酬請求権は3年、飲食代金の請求権は1年等)。
改正後(現行民法):
短期消滅時効を廃止し、次の二重の起算点方式に統一。
| 起算点 | 時効期間 |
|---|---|
| 権利を行使できることを知った時から | 5年 |
| 権利を行使できる時から | 10年 |
いずれか早い方が適用されます。試験問題では「5年・10年」という数字が問われます。
参照:民法第166条(2020年4月1日施行)
ポイント2:法定利率の変動制
改正前: 年5%固定(民法旧404条)
改正後: 当初年3%、3年ごとに見直す変動制(民法404条)
この変更は損害賠償算定(特に交通事故等での将来の損害の中間利息控除)に影響します。試験では「旧5%→新3%」の変更が出題されやすいです。
VolatileBox(変動値・要確認):法定利率
法定利率は3年ごとに変動します。現時点での適用利率は法務省・最高裁判所の公式情報で確認してください(本記事の確認日:2026年6月)。
ポイント3:契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
行政書士試験で特に重要な改正です。
改正前(旧民法・瑕疵担保責任):
- 要件:隠れた瑕疵(欠陥)の存在
- 手段:損害賠償請求・契約解除のみ
改正後(現行民法・契約不適合責任):
- 要件:契約の内容への不適合(目的物の種類・品質・数量が契約に合っていない)
- 手段:追完請求(修補・代替物引渡等)・代金減額請求・損害賠償・解除
参照:民法第562条〜第564条(2020年4月1日施行)
ポイント4:危険負担の変更
改正前: 双務契約において一方の債務が当事者双方の責めに帰することなく消滅した場合、相手方の債務も消滅(「債務者主義」・「債権者主義」が場面により異なった)
改正後: 債務者(義務を負う側)の危険負担に統一。売買等の危険負担は「債務者主義」に整理。反対給付の履行拒絶権(民法536条)という構成に変更。
ポイント5:保証制度の強化
主な改正内容:
- 個人が保証人になる根保証契約は、極度額の定めが必須(極度額の定めがない根保証契約は無効)
- 公正証書要件:主たる債務の総額が高額の場合、事業のための貸金等債務についての個人保証は公正証書作成が必要
参照:民法第465条の2、民法第465条の6(2020年4月1日施行)
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2019年施行:相続法改正の主要ポイント
2019年7月1日施行(一部は同年施行。配偶者居住権は2020年4月1日施行)の相続法改正も、行政書士試験で頻出です。
ポイント1:配偶者居住権の新設
概要:
相続開始時に居住していた建物に、被相続人の配偶者が引き続き居住できる権利が新設されました。
種類:
| 種類 | 期間 | 成立要件 |
|---|---|---|
| 配偶者居住権 | 原則として終身(遺産分割・遺贈での取得も可) | 遺産分割協議・審判・遺贈による取得 |
| 配偶者短期居住権 | 最低6ヶ月 | 相続開始時に居住していた事実のみで当然成立 |
立法趣旨: 高齢の配偶者が残された場合に住む場所を確保しつつ、遺産分割での取り分(現金等)も得られるようにするため。
参照:民法第1028条〜第1041条(配偶者居住権)、民法第1037条〜第1041条(配偶者短期居住権)
ポイント2:遺留分制度の見直し
改正前(遺留分減殺請求):
遺留分侵害を受けた相続人は、侵害した相手に物の返還(物権的請求)を求めることができた。
改正後(遺留分侵害額請求):
遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求する債権(金銭債権)に変更。
→ 物の所有関係を複雑にせず、金銭で精算する形になりました。
参照:民法第1046条(2019年7月1日施行)
ポイント3:特別の寄与制度の創設
新設された制度:
相続人以外の親族(例:被相続人の子の配偶者)が療養看護等の貢献をした場合、相続人に対して特別寄与料の支払いを請求できる制度が創設されました。
従来の課題: 相続人以外の貢献者は遺産分割の当事者になれず、貢献が報われない問題があった。
参照:民法第1050条(2019年7月1日施行)
ポイント4:自筆証書遺言の方式緩和
改正前: 遺言書の全文(財産目録を含む)を自筆で書く必要があった
改正後: 財産目録部分に限り、PCや預金通帳のコピーによる添付が認められた(本文と氏名は引き続き自筆が必要)
また、法務局での遺言書保管制度も2020年7月から開始されています(遺言書保管法)。
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行政書士試験での出題パターン
択一式での出題例
「2020年改正民法において、消滅時効の期間として正しいものはどれか」
→ 「権利を行使できることを知った時から5年または権利を行使できる時から10年」が正解
「配偶者居住権について正しいものはどれか」
→ 成立要件・期間・登記の問題として出題
記述式での出題例
「売買契約の目的物に契約不適合があった場合、買主が取りうる手段を全て列挙せよ」
→ 追完請求・代金減額請求・損害賠償・解除の4つをキーワードとして記述する
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学習の優先順位
行政書士試験の民法改正対策は優先順位をつけて進めます。
最優先(記述式・択一式で両方出る):
- 契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)
- 消滅時効の統一
- 遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)
- 配偶者居住権
次に対応(択一式中心):
- 法定利率の変動制
- 個人根保証の極度額
- 特別の寄与
民法の問題集と記述式問題集で改正後の現行法知識を実践的に確認してください。
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参照一次ソース
- 法務省「民法(債権関係)の改正に関する説明資料」(https://www.moj.go.jp/)
- 法務省「相続に関する民法の規定が改正されました」(https://www.moj.go.jp/)
- e-Gov法令検索「民法」(https://laws.e-gov.go.jp/)
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まとめ
行政書士試験の民法対策で改正を見落とすことは致命的なミスになります。2020年債権法改正(消滅時効・法定利率・契約不適合責任・保証)と2019年相続法改正(配偶者居住権・遺留分侵害額請求・特別の寄与)は現行法として確実に対応しましょう。
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