行政書士 行政法 問26:行政手続法
行政手続法が定める申請に対する処分の手続に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア行政庁は、申請に対する処分にあたって適用する審査基準を定めなければならないが、その内容を公にする義務はなく、行政内部のみで使用することも許される。
- イ行政庁は、申請に対する処分を行うにあたっての標準的な処理期間を定め、かつこれを公にしなければならず、これを定めないことは行政手続法違反となる。
- ウ行政庁は、申請書の記載事項に不備がある申請については、補正を求めることは一切認められず、その不備を理由として直ちに当該申請を拒否する処分をしなければならない。
- エ行政庁は、申請を拒否する処分をする場合には、同時に申請者に対して理由を示さなければならず、申請者から求められた場合にのみ理由を示すのでは不十分とされる。正答
- オ行政庁が申請を受け付けた後、審査基準に適合しないとして申請を拒否する場合には、相手方に対して聴聞手続を経ることが義務づけられている。
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申請に対する処分に関する行政手続法のルールの核心は、審査基準・標準処理期間・理由の提示の3点です。
エが正しい。 申請を拒否するときは、「同時に」理由を示す必要があります(行手法8条1項)。申請者が求めた場合にのみ理由を開示するのでは不十分です。
ア(誤): 審査基準は定めるだけでなく「公にしておかなければならない」とされています(行手法5条3項)。行政内部だけでの使用は認められません。
イ(誤): 標準処理期間は「定めるよう努めるものとする」(努力義務)です(行手法6条)。定めなくても直ちに行政手続法違反にはなりません。
ウ(誤): 申請書に形式上の不備がある場合、行政庁は「速やかに補正を求める」か「拒否処分をする」ことができます(行手法7条)。補正を求めることが「一切認められず、直ちに拒否しなければならない」というのは誤りです。
オ(誤): 申請を拒否する処分(申請認容の拒否)は不利益処分ではなく、聴聞手続は不要です。聴聞は不利益処分(許認可の取消し・業務停止命令等)に適用されます。
申請に対する処分のルールの比較(重要):
| 事項 | 法律の定め | 義務/努力義務 |
|---|---|---|
| 審査基準の設定 | 行手法5条1項「定めるものとする」 | 義務(原則) |
| 審査基準の公表 | 行手法5条3項「公にしておかなければならない」 | 義務 |
| 標準処理期間の設定 | 行手法6条「定めるよう努める」 | 努力義務 |
| 標準処理期間の公表 | 行手法6条「公にしておく」 | 定めた場合は公表義務 |
| 申請拒否時の理由の提示 | 行手法8条1項「同時に」提示 | 義務 |
| 申請拒否時の聴聞 | 規定なし(聴聞は不利益処分対象) | 不要 |
審査基準の設定義務と努力義務の区別(ア誤り・イ誤りの根拠):
- 審査基準(5条)は「定めるものとする」(義務)かつ「公にしておかなければならない」(義務)。
- 標準処理期間(6条)は「定めるよう努めるものとする」(努力義務)。定めた場合は公表する(義務)が、定めなくても直ちに違法とはならない。
理由の提示(行手法8条):
申請を拒否する場合に「同時に」理由を示すことが義務づけられています。「求められた場合のみ」や「事後的に」では不十分。理由の提示は、行政庁に慎重な判断を促すとともに、申請者が不服申立てをするかどうかを適切に判断できるようにするためのものです。
【理論的背景】
行政手続法が申請に対する処分について審査基準の設定・公表を義務づけ、拒否処分に理由提示を要求する背景には、「行政の透明性」という基本理念があります。申請者が審査基準を事前に知ることで、自分の申請が認められるかどうかを予測し、必要な準備ができます。また拒否理由が明示されることで、申請者は不服申立てを適切に行えます。
申請に対する処分と不利益処分の区別: 行政手続法は「申請に対する処分」(2章: 5条〜11条)と「不利益処分」(3章: 12条〜31条)を区別しています。申請の拒否は「申請に対する処分」に分類され、不利益処分(聴聞・弁明の機会の付与を要する)とは異なります。すでに付与されている許認可を取り消す、または業務停止を命じる等が「不利益処分」です。
【実務・条文構造】
審査基準(行手法5条)の詳細:
- 5条1項: 行政庁は、審査基準を定めるものとする(設定義務)。
- 5条2項: 審査基準は、当該申請の性質に照らしてできる限り具体的なものでなければならない。
- 5条3項: 行政庁は、行政上特別の支障があるときを除き、法令により申請の提出先とされている機関の事務所における備付けその他の適当な方法により審査基準を公にしておかなければならない(公表義務)。
標準処理期間(行手法6条)の詳細:
- 「行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは、これらを公にしておかなければならない。」(努力義務+定めた場合は公表義務)。
申請書の補正と応答義務(行手法7条):
行手法7条は「行政庁は、申請がその事務所に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず、かつ、申請書の記載事項に不備がないこと等の形式上の要件に適合しない申請については、速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」と定めています。すなわち形式不備の申請については「補正を求める」か「拒否する」かが認められており、補正を求めること自体は適法な手段です。したがって「補正は一切認められず直ちに拒否しなければならない」とする選択肢ウは誤りです。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「審査基準(義務・公表義務)vs 標準処理期間(努力義務)」の区別と「申請拒否時の理由提示義務(同時に)」が最頻出です。「申請拒否にも聴聞が必要か」という誤り選択肢も典型的です。この区別(申請拒否≠不利益処分=聴聞不要)は確実に押さえてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 審査基準は「公にしておかなければならない」(行手法5条3項)。行政内部だけでの使用は義務に反します。ただし「行政上特別の支障があるとき」は例外(公表しなくてもよい場合あり)。
- イ(誤): 標準処理期間は「定めるよう努める」(努力義務)。定めなくても行政手続法違反にはなりません。定めた場合は公表義務が生じます。
- ウ(誤): 行手法7条は、形式上の要件に適合しない申請について「速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない」と定めています。すなわち補正を求めることが認められており、「補正は一切認められず直ちに拒否しなければならない」は誤りです。
- エ(正): 行手法8条1項「行政庁は、申請により求められた許認可等を拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、当該処分の理由を示さなければならない」。
- オ(誤): 申請の拒否は「申請に対する処分」(行手法2章)であり「不利益処分」(行手法3章)ではないため、聴聞・弁明の機会の付与は不要です。
【根拠条文】行政手続法 第5条(審査基準)、第6条(標準処理期間)、第7条(申請に対する審査・応答)、第8条(理由の提示)
【補足】審査基準=義務(設定・公表とも)、標準処理期間=努力義務(定めた場合は公表義務)。申請拒否には「同時に」理由提示。聴聞は不利益処分のみ。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第5条(審査基準)、第6条(標準処理期間)、第7条(申請に対する審査・応答)、第8条(理由の提示)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。