行政法28行政手続法

行政書士 行政法 問28:行政手続法

行政手続法が定める不利益処分の手続に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 行政庁は、不利益処分を行うにあたって適用する処分基準を定め、かつこれを公にしておかなければならず、これは審査基準と同様に法的義務として規定されている。
  • 不利益処分を行う場合に予め実施しなければならない事前手続として、行政手続法は①許認可等の取消しは聴聞、②資格・地位をはく奪する処分は弁明の機会の付与と規定しており、いずれを行うかは行政庁の裁量による。
  • 行政庁が許認可等を取り消す不利益処分を行う場合、処分の名宛人となるべき者に対して聴聞を行わなければならない。正答
  • 弁明の機会の付与は聴聞よりも簡易な事前手続であり、弁明書の提出のみで行われ、弁明人が口頭で意見を述べることは行政手続法上認められていない。
  • 不利益処分の通知は書面で行わなければならず、当該通知には処分の理由を示さなければならないが、理由の記載は「処分基準に適合しないため」という簡略な記載でも足りる。
正答:行政庁が許認可等を取り消す不利益処分を行う場合、処分の名宛人となるべき者に対して聴聞を行わなければならない。

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不利益処分(許認可取消し・業務停止命令・除名等)をする際には、事前手続が必要です。どの手続を使うかが重要です。

聴聞が必要な場合(重い処分):

1. 許認可等の取消し

2. 資格・地位の剥奪

3. 法人等の役員の解任

弁明の機会の付与で足りる場合(聴聞を要しないその他の不利益処分): 業務停止命令・業務改善命令等。

ウが正しい。 許認可等を取り消す不利益処分には聴聞が必要です(行手法13条1項1号)。

ア(誤): 処分基準は「定め、かつ公にしておくよう努めなければならない」(努力義務)です。審査基準(義務)と異なります。エ(誤): 弁明の機会の付与でも、申請によって口頭で意見を述べることができます(行手法29条2項)。

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聴聞と弁明の機会の付与の振り分け(行手法13条):

| 処分の種類 | 必要な手続 |

|---|---|

| 許認可等の取消し | 聴聞(13条1項1号イ) |

| 資格・地位の剥奪 | 聴聞(13条1項1号ロ) |

| 法人等の役員の解任 | 聴聞(13条1項1号ハ) |

| その他の不利益処分 | 弁明の機会の付与(13条1項2号) |

「いずれを行うかは行政庁の裁量による」(イ誤り): この振り分けは法律で定められており、行政庁の裁量ではありません。許認可等の取消しに弁明で代替することは許されません。

処分基準の義務/努力義務(ア誤りの根拠):

  • 審査基準(行手法5条): 「定めるものとする」→義務。公にする→義務。
  • 処分基準(行手法12条): 「定め、かつ公にしておくよう努めなければならない」→努力義務

「審査基準と同様に法的義務」とするアは誤りです(処分基準は努力義務)。

弁明の機会の付与と口頭弁明(エ誤りの根拠):

行手法29条(弁明の機会の付与の方式)は弁明書の提出を基本とし、行政庁が口頭による意見陳述の機会を設ける場合は認める(29条2項)という構造ですが、申請によって口頭で述べることも排除していません。「口頭での意見陳述は一切認められない」は誤りです。

不利益処分の理由の提示の具体性(オ誤りの根拠):

理由提示は「どの事実がどの法令に照らしてどのように違反するか」を明示できる程度の具体性が必要とされており(判例)、単に「処分基準に適合しないため」という記載だけでは不十分です。

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【理論的背景】

不利益処分の事前手続制度(聴聞・弁明の機会の付与)は、適正手続の保障(憲法31条の趣旨の行政処分への及び方)の観点から設けられています。許認可等の取消しや資格剥奪は相手方の権利・地位に重大な侵害をもたらすため、より手厚い手続(聴聞)が求められます。一方で比較的軽微な不利益処分については、簡易な弁明手続で足りるとされています。

聴聞手続の公正性確保: 聴聞は「主宰者」(行政庁の職員の中で処分に直接関与しない者から選定)が主宰する準法廷的な手続です。当事者は文書の閲覧を請求でき(行手法18条)、聴聞期日に意見を述べ、証拠書類等を提出でき(行手法20条)、処分庁の職員に質問することもできます(行手法20条2項)。この手続を経て作成された調書・報告書は処分庁が不利益処分をするか否かを決定する際に「十分に参酌」しなければなりません(行手法26条)。

【実務・条文構造】

処分基準(行手法12条)の詳細:

  • 12条1項: 行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準(処分基準)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならない(努力義務)。
  • 12条2項: 行政庁は、処分基準を定めるにあたっては、不利益処分の性質に照らしてできる限り具体的なものとしなければならない(具体性の要求)。

不利益処分の理由の提示(行手法14条):

14条1項: 行政庁は、不利益処分をする場合には、その名宛人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない(理由後置の例外)。

理由提示の具体性については、最高裁が「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して(処分が)なされたかを、相手方においてその記載自体から了知しうるものでなければならない」としています(最判昭和60年1月22日・民集39巻1号1頁=一般旅券発給拒否処分の理由付記事件。理由提示の趣旨・程度に関する代表判例)。

聴聞の「当事者」と「参加人」の区別: 聴聞の「当事者」は処分の名宛人(行手法15条)であり、「参加人」は処分に利害関係を持つ第三者であって行政庁が許可した者(行手法17条)です。参加人は当事者と同様の権利を持ちます。

【試験での位置づけ】

行政書士試験では「聴聞vs弁明の振り分け(許認可取消し=聴聞、それ以外の不利益=弁明)」「処分基準の義務/努力義務(努力義務: 審査基準と逆)」「弁明における口頭陳述の可否(可能)」「不利益処分の理由提示の具体性(具体的に)」が頻出です。特に審査基準(義務)と処分基準(努力義務)の区別は、行政手続法の最頻出ひっかけポイントです。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(誤): 処分基準は努力義務(行手法12条1項「努めなければならない」)であり、審査基準(行手法5条1項「定めるものとする」という設定義務)とは異なります。この区別は必ず覚えること。
  • イ(誤): 聴聞と弁明の振り分けは法定されており(行手法13条1項各号)、行政庁の裁量ではありません。許認可等の取消しに弁明で代替することは違法です。
  • ウ(正): 行手法13条1項1号イ「不利益処分の名宛人となるべき者について…許認可等を取り消す不利益処分」→聴聞。
  • エ(誤): 行手法29条は弁明書の提出を基本とするが、「弁明を記載した書面(弁明書)の提出に代えて、口頭で弁明を行うことを求めることができる」とも定めています(29条2項)。一方的に口頭を禁止しているわけではありません。
  • オ(誤): 「処分基準に適合しないため」という簡略記載は不十分。判例は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用した」かが分かる程度の具体性を求めています。

【根拠条文】行政手続法 第12条(処分基準:努力義務)、第13条(不利益処分をするにあたって執るべき手続の選択)、第14条(不利益処分の理由の提示)、第29条(弁明の方式)

【補足】聴聞=許認可取消し・資格剥奪・役員解任、弁明=それ以外。処分基準は努力義務(審査基準と逆)。弁明でも申請により口頭可。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第12条(処分基準)、第13条(不利益処分の事前手続の選択)、第14条(不利益処分の理由の提示)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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