行政法29行政手続法

行政書士 行政法 問29:行政手続法

行政手続法が定める聴聞手続に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 行政庁は、聴聞を行うにあたって、不利益処分の名宛人となるべき者に対し、予定される不利益処分の内容・根拠法令・処分の原因となる事実・聴聞の期日および場所等を書面で通知しなければならない。
  • 当事者(処分の名宛人となるべき者)は、聴聞の期日において、処分庁の職員に対して質問を発することができる。
  • 聴聞の主宰者は、不利益処分を担当する行政庁の職員の中から、当該処分に最もよく精通した者として選定されなければならず、処分手続に直接関与していない職員を主宰者に選ぶことは許されない。正答
  • 当事者および参加人は、聴聞の期日における陳述が終わるまでの間、行政庁に対し、当該不利益処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができるが、行政庁は第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときは、閲覧を拒否することができる。
  • 聴聞の主宰者は、聴聞の期日における審理の内容を記載した調書を作成し、当該聴聞に関する当事者の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成して、行政庁に提出しなければならず、行政庁は不利益処分をするかどうかを決定するにあたりこれらを十分に参酌しなければならない。
正答:聴聞の主宰者は、不利益処分を担当する行政庁の職員の中から、当該処分に最もよく精通した者として選定されなければならず、処分手続に直接関与していない職員を主宰者に選ぶことは許されない。

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聴聞手続のポイントを整理します。

聴聞の主宰者(行手法19条): 主宰者は行政庁が指名する職員ですが、当該処分に関与していない職員でなければなりません。処分を担当する職員が主宰するのは、公正な審理が損なわれるおそれがあるためです。

ウが誤りです。 「処分に最もよく精通した者」が選ばれるとする点と、「処分手続に直接関与していない職員を選ぶことは許されない」という部分が逆になっています。正しくは、処分に関与していない職員を主宰者にすることが原則です(19条2項の欠格事由参照)。

ア(正): 聴聞前の書面通知義務は行手法15条のとおり。イ(正): 質問権は行手法20条2項。エ(正): 文書閲覧権と拒否権は行手法18条のとおり。オ(正): 調書・報告書の作成と参酌義務は行手法24条・26条のとおり。

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聴聞主宰者の欠格事由(行手法19条2項): 行政庁は、次の各号に掲げる者を主宰者として指名することができません。

1. 処分に関係のある利害関係を有する者

2. 当事者の代理人である者

3. 前2号に掲げる者のほか、聴聞の公正な実施を妨げるおそれのある者

これは、処分の公正性・中立性を確保するための規定です。「処分に最もよく精通した者」(ウの表現)は、むしろ処分に深く関与しているため主宰者に選びにくい場合があります。

文書閲覧(行手法18条)の詳細(エが正しい根拠):

  • 当事者・参加人は、聴聞の終結まで、行政庁に対し、当該処分の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができます。
  • 行政庁は、第三者の利益を害するおそれのある場合や「正当な理由」がある場合に閲覧を拒否できます。
  • 閲覧できるのは「処分の原因となる事実を証する資料」であり、全ての行政文書ではありません(情報公開法とは別の制度)。

調書・報告書の意義(オが正しい根拠):

聴聞調書(事実の記録)と報告書(当事者の主張に理由があるかの意見)は、行政庁の処分決定に際して「十分に参酌」されなければなりません(行手法26条)。「参酌」とは「十分に考慮すること」を意味し、調書・報告書を無視した処分は手続的に違法となります。ただし行政庁が調書・報告書の意見に拘束されるわけではありません。

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【理論的背景】

聴聞手続は、行政処分において「聞く耳を持つ(hear)」という適正手続の核心的要請を具現化したものです。アメリカの行政手続の影響を受けて設計された制度であり、当事者が反論の機会を持つことで、一方的・恣意的な処分が抑制されます。

聴聞と弁明手続の設計差: 聴聞は準法廷的な口頭審理(期日の設定・主宰者・調書の作成等)を伴い、時間・コストがかかる手続です。一方弁明の機会の付与は書面審理が原則の簡略手続です。この手続の重さの差が、それぞれを適用する処分の重大性(許認可取消し・資格剥奪の重大性)の差に対応しています。

【実務・条文構造】

聴聞の流れ(主要条文との対応):

1. 聴聞の通知(行手法15条): 書面で、予定処分の内容・根拠法令・処分の原因たる事実・期日・場所等を通知。原則として期日の相当期間前に通知。

2. 参加人の許可(行手法17条): 利害関係人が参加を申し出た場合、行政庁は許可できる。参加人は当事者と同様の権利を持つ。

3. 文書閲覧(行手法18条): 終結まで閲覧可能・行政庁は正当な理由があれば拒否可。

4. 主宰者の指名(行手法19条): 行政庁の職員から指名。欠格事由(関係利害・公正阻害)あり。

5. 聴聞の期日(行手法20条): 当事者は意見陳述・証拠書類提出・処分庁職員への質問が可能。

6. 聴聞の再開・終結(行手法22条・23条): 主宰者は必要があれば再開可能。当事者が正当な理由なく出頭しない場合は終結可能。

7. 調書・報告書(行手法24条): 主宰者は調書(審理の内容)と報告書(当事者の主張に理由があるかの意見)を作成して行政庁に提出。

8. 聴聞の結果の反映(行手法26条): 行政庁は処分を決定するにあたり調書・報告書を「十分に参酌」しなければならない。

報告書の拘束力の有無: 報告書は「意見」を記載するもの(行手法24条3項)であり、行政庁を拘束しません。行政庁は報告書と異なる判断をすることも可能ですが、その場合も参酌した上で判断している必要があります(「十分に参酌」)。

【試験での位置づけ】

聴聞手続は行政書士試験で繰り返し出題されます。特に①主宰者の欠格事由(処分関与者は選べない)、②文書閲覧(可能・正当理由での拒否可能)、③調書と報告書の作成義務・参酌義務(拘束なし)、④当事者の質問権の4点が頻出です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア(正): 行手法15条1項の通知事項の列挙は正確。「書面で」の要件と「聴聞の期日の相当期間前」という時間的要件も重要。
  • イ(正): 行手法20条2項「当事者又は参加人は、主宰者の許可を得て、互いに質問を発することができる」とあり、処分庁の職員への質問も含みます。
  • ウ(誤): 行手法19条の主宰者の要件は「公正な実施」であり、処分に関与していない者が適切な主宰者です。「処分に最もよく精通した者」という選定基準も規定になく、「処分手続に直接関与していない職員を選ぶことは許されない」という記述が完全な誤りです。
  • エ(正): 行手法18条の閲覧請求権と行政庁の拒否権(第三者利益保護・正当理由)を正確に説明しています。
  • オ(正): 行手法24条(調書・報告書の作成)と26条(参酌義務)を正確に説明。「十分に参酌しなければならない」は拘束ではなく考慮義務。

【根拠条文】行政手続法 第15条(聴聞の通知)、第18条(文書等の閲覧)、第19条(主宰者・欠格事由)、第20条(聴聞の期日における審理の方式)、第24条(調書・報告書)、第26条(聴聞の結果の反映)

【補足】主宰者は処分関与者を選べない(欠格事由)。調書・報告書は参酌義務あり、拘束なし。文書閲覧は聴聞終結まで可能。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第15条(聴聞の通知)、第17条(参加人)、第18条(文書閲覧)、第19条(主宰者)、第20条(聴聞の期日)、第24条(調書)、第26条(聴聞の結果の反映)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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聴聞手続・主宰者・調書・文書閲覧頻出度A

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