行政書士 行政法 問40:行政手続法
行政手続法が定める行政指導の方式に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア行政指導に携わる者は、その相手方に対し、当該行政指導の趣旨および内容ならびに責任者を明確にしなければならない。
- イ行政指導は書面によらなければならず、口頭による行政指導は行政手続法上許されない。正答
- ウ行政指導が口頭でされた場合において、その相手方から書面の交付を求められたときは、当該行政指導に携わる者は、行政上特別の支障がない限り、書面を交付しなければならない。
- エ行政庁が特定の者に対して課税について行政指導を行う場合において、相手方から書面の交付を求められたとき、行政上特別の支障がある場合は書面を交付しないことが認められる。
- オ行政指導が同一の目的のために多数の者を対象として行われるときは、行政庁はあらかじめ行政指導指針を定め、かつ行政上特別の支障がない限り公表しなければならない。
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行政手続法における行政指導の方式ルールを確認します。
イが誤りです。 行政指導は書面によることが義務づけられているわけではありません。口頭による行政指導も適法です。ただし相手方から書面の交付を求められた場合(口頭での行政指導のみがなされた後)には、「行政上特別の支障がない限り」書面を交付しなければなりません(行手法35条3項)。
行手法35条1項は「行政指導に携わる者は、その相手方に対し、当該行政指導の趣旨および内容ならびに責任者を明確に示さなければならない」と規定しています(ア: 正)。これは口頭・書面を問わず必要です。
ウ(正): 口頭指導後の書面交付義務(行手法35条3項)のとおり。エ(正): 「行政上特別の支障がある限り」という限定(35条3項)のとおり。オ(正): 行政指導指針(36条)のとおり。
行政指導の方式(行手法35条)の構造:
| 方式の要求 | 条文 | 義務/努力義務 |
|---|---|---|
| 趣旨・内容・責任者の明示 | 35条1項 | 義務 |
| 許認可権限を示す場合の根拠法令の条項等の明示 | 35条2項 | 義務 |
| 書面による行政指導 | 規定なし | 義務ではない(口頭も可) |
| 口頭指導後の書面交付(相手方の求めあり) | 35条3項 | 義務(行政上特別の支障がある場合を除く) |
行政指導指針(行手法36条)の特則:
「同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするとき」には、行政庁はあらかじめ行政指導指針を定め、かつ「行政上特別の支障がない限り」公表しなければなりません。
オの記述(行政指導指針の設定・公表)は行手法36条に対応した正確な内容です。
「行政上特別の支障がある」場合の解釈(エが正しい根拠):
「行政上特別の支障」の典型例として、書面作成によって第三者の秘密・個人情報が開示されるおそれがある場合や、手続上の緊急性がある場合等が考えられます(行手法35条3項)。エにある「課税について」の行政指導は個人情報・守秘義務の観点から「行政上特別の支障」を認定しやすい場面です(ただし一律の免除は認められない)。
【理論的背景】
行政指導の方式規制(35条)は、行政指導の「任意性の実質化」と「透明性の確保」という2つの目的を達成するためのものです。行政指導の内容・責任者を明確にすることで、相手方は①指導の根拠と正当性を確認でき、②適切に意見・異議を述べることができ、③指導に従わないという選択肢を実質的に行使できます。
書面交付義務の趣旨: 口頭の行政指導は「言った言わない」の問題が生じやすく、相手方が後から指導の存在・内容を確認することが困難です。書面交付によって指導の内容が証拠として残り、相手方の権利保護に資します。
【実務・条文構造】
行手法35条の構造の整理: 1項=趣旨・内容・責任者の明示義務(口頭・書面問わず)、2項=許認可等の権限を行使し得る旨を示して行政指導をするときは、根拠となる法令の条項・その要件・権限行使が要件に適合する理由を示す義務、3項=口頭の行政指導につき相手方から書面交付を求められたら行政上特別の支障がない限り交付する義務、4項=その場で完了する行為を求める場合等は書面交付義務の例外。本問で問われる口頭指導後の書面交付義務は3項です。
行政指導指針(36条)と意見公募手続の関係: 行政指導指針は行手法2条8号「命令等」の定義(ニ号)に含まれ、行政指導指針を定める際には原則として意見公募手続(パブコメ)が必要です(行手法38条以下)。これは、行政指導指針も広く国民生活に影響を与えることがあるためです。
課税と書面交付の特殊性: 税務行政における行政指導(税務調査に関連する指導等)については、守秘義務(国税通則法上の守秘義務等)が絡む場合に「行政上特別の支障」が認定されやすいですが、一律に書面交付を免除するわけではありません。個別事案の判断が必要です。
行政指導の証拠化と争訟: 書面を得た場合、相手方は行政指導の内容を証拠として国家賠償請求訴訟や行政指導の中止の求め(行手法36条の2)に活用できます。書面交付義務は相手方の実質的な権利保護ツールとして機能しています。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「行政指導は書面必須か」(任意・口頭可)、「口頭指導後の書面交付義務(相手方から求めがあれば義務・行政上特別の支障があれば例外)」、「趣旨・内容・責任者の明示義務(口頭・書面を問わず)」が頻出です。「書面に限る」という選択肢(本問イ)は典型的な誤り選択肢のパターンです。
【各選択肢の発展補足】
- ア(正): 行手法35条1項(趣旨・内容・責任者の明示義務)。書面・口頭を問わず義務です。明示の方法については明文規定なし(口頭でも可)。
- イ(誤): 行政指導に書面必須という規定はありません。口頭による行政指導も適法。書面要求があれば交付する義務が生じます(35条3項)。
- ウ(正): 行手法35条3項のとおり。相手方の求めがあれば書面交付義務(「行政上特別の支障がない限り」)。
- エ(正): 行手法35条3項の「行政上特別の支障がある場合」の限定。課税関係は守秘義務等から支障が認定されやすい場面。
- オ(正): 行手法36条の行政指導指針(設定・公表)の規定のとおり。
【根拠条文】行政手続法 第35条第1項(趣旨・内容・責任者の明示義務)・第35条第3項(口頭の行政指導への書面交付義務)、第36条(複数の者に対する行政指導・行政指導指針)
【補足】行政指導は口頭でも可(書面必須ではない)。口頭指導後に相手方から求めがあれば書面交付義務(行政上特別の支障がある場合を除く・35条3項)。趣旨・内容・責任者は常に明示義務(35条1項)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第35条(行政指導の方式)、第36条(複数の者に対する行政指導)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。