問題
食品衛生法に基づき飲食店営業許可を受けて営業中のAに対し、B市が「食中毒事案の発生に伴い食品衛生法に違反した」として営業停止処分(30日間)をしようとしている。この場合に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
本問は「営業停止処分」に必要な事前手続の種類を問うています。
まず事前手続の振り分けを確認します(行手法13条1項):
- 聴聞が必要: 許認可等の取消し・資格剥奪・役員解任など(13条1項1号)
- 弁明の機会で足りる: それ以外の不利益処分(13条1項2号)
営業停止処分(30日間)は「許認可等の取消し」ではなく「業務(営業)の一時停止」です。許可そのものは消滅しません。したがって13条1項1号の聴聞対象には当たらず、弁明の機会の付与で足ります(13条1項2号)。
アが誤りです。 アは「営業停止は許可取消しに準じる重大処分だから必ず聴聞が必要で、弁明では足りない」と述べていますが、これは誤りです。営業停止は許認可等の取消し(13条1項1号イ)に該当せず、弁明の機会の付与で足ります。聴聞と弁明の振り分けは処分の種類で法定されており、「重大だから聴聞」という解釈で聴聞を義務づけることはできません(行政庁が任意に聴聞を選ぶことは可能ですが、義務ではありません)。
イ・ウ・エ・オはいずれも正しい記述です。
不利益処分の事前手続の振り分けの再確認(行手法13条1項):
| 処分の種類 | 事前手続 |
|---|---|
| 許認可等の取消し | 聴聞(13条1項1号イ) |
| 資格・地位の全部剥奪 | 聴聞(13条1項1号ロ) |
| 法人役員の解任 | 聴聞(13条1項1号ハ) |
| 営業停止・業務停止 | 弁明の機会の付与(13条1項2号) |
| 業務改善命令等 | 弁明の機会の付与 |
営業停止処分(本問)は「弁明の機会の付与」で足ります(聴聞は不要)。
アが誤りである理由: アは「営業停止は許可取消しに準じる重大処分だから、必ず聴聞を実施しなければならず弁明では足りない」とします。しかし行手法13条1項1号が聴聞を義務づけるのは「許認可等を取り消す不利益処分」「資格・地位を直接にはく奪する不利益処分」「法人役員の解任等」に限られ、営業の一時停止はこれに当たりません。営業停止は13条1項2号の「その他の不利益処分」として弁明の機会の付与で足ります。「重大だから聴聞が義務」という解釈は条文の振り分け(処分の種類による振り分け)に反します。
なお、行政庁が法の要求(弁明)を超えて任意により手厚い聴聞を実施することは禁じられていません(任意の手続強化は可)。しかしそれは「義務」ではないため、「必ず聴聞を実施しなければならず弁明では足りない」とするアは誤りです。残りの選択肢(イ・ウ・エ・オ)はすべて正しいことを確認してください。
【理論的背景】
行政手続法13条1項の事前手続の振り分けは、「処分の重大性(相手方への影響の大きさ)」に応じて聴聞と弁明を使い分ける設計です。許認可等の取消し・資格剥奪は相手方にとって決定的な不利益(営業権の消滅・資格の喪失)をもたらすため、より手厚い手続(聴聞)が要求されます。一方で業務停止・業務改善命令等は一時的・部分的な制約であり、簡易な弁明手続で足りるとされています。
ただし行政庁は法律の要求(弁明の機会の付与)を超えて、任意に聴聞手続を実施することは禁じられていません(任意の手続的保護の強化は可能)。
【実務・条文構造】
不利益処分の理由の提示(行手法14条)と具体性の要求(エが正しい根拠):
「食品衛生法に違反した」という記述は、①どの食品衛生法の条文に違反したか、②どのような具体的行為が違反事実か、が示されていないため不十分です。判例(最判昭和60年1月22日・民集39巻1号1頁=一般旅券発給拒否処分の理由付記事件)は「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用したかを記載自体から了知しうる程度の具体性が必要」とする趣旨を示しており、不利益処分の理由提示(行手法14条)にも同様の考え方が及びます。
聴聞不出頭と手続終了(行手法23条・イが正しい根拠):
行手法23条1項「主宰者は、当事者の全部若しくは一部が正当な理由なく聴聞の期日に出頭せず、かつ、第二十一条第一項に規定する陳述書若しくは証拠書類等を提出しない場合、(略)これらの者に対し改めて意見を述べ、及び証拠書類等を提出する機会を与えることなく、聴聞を終結することができる」。当事者が正当な理由なく欠席し陳述書等も提出しない場合、主宰者による聴聞の終結が認められています。
手続的瑕疵の独立の取消事由(オが正しい根拠):
聴聞・弁明の機会の付与なしに行われた不利益処分は、手続的違法として取消しうべき瑕疵を帯びます(手続的違法の独自性)。処分の実体(内容)が適法であっても、手続的違法は独立の取消事由となります。不服申立て・取消訴訟で手続的違法を主張できます。
【試験での位置づけ】
行政書士試験では「営業停止は弁明の機会(聴聞ではない)」「不利益処分の理由の具体性要求」「聴聞の不出頭と手続終了」「手続的違法の独立取消事由性」が頻出です。具体的な事案(本問の食中毒→営業停止)と行手法の対応を素早く判断できる練習をしてください。
【各選択肢の発展補足】
- ア(誤): 営業の一時停止は「許認可等の取消し」(13条1項1号イ)に当たらず、弁明の機会の付与で足ります(13条1項2号)。「許可取消しに準じる重大処分だから必ず聴聞」「弁明では足りない」とする点が誤り。聴聞・弁明の振り分けは処分の種類により法定されており、処分の重大性を理由に聴聞を義務づけることはできません。
- イ(正): 行手法23条1項のとおり、当事者が正当な理由なく出頭せず陳述書・証拠書類等も提出しない場合、主宰者は聴聞を終結できます。
- ウ(正): 行手法14条1項(同時に理由を提示。差し迫った必要がある場合の例外あり)・3項(書面で処分するときは理由も書面)のとおり。
- エ(正): 理由提示の具体性要件(判例)により、単なる法条の引用では不十分。
- オ(正): 手続的違法(聴聞・弁明省略)は独立の取消事由。緊急の適用除外要件(行手法13条2項)を充足しない限り、手続省略は違法。
【根拠条文】行政手続法 第13条(不利益処分の事前手続の選択)、第14条(不利益処分の理由の提示)、第23条(当事者の不出頭等の場合の措置)
【補足】営業停止=弁明の機会の付与(聴聞は不要)。理由提示は「具体的な事実と法条」が必要。手続的違法は独立の取消事由。
- 行政手続法第13条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政手続法 第13条(不利益処分の事前手続の選択基準)、第14条(不利益処分の理由の提示)。 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

