行政書士試験の行政手続法で問われる聴聞と弁明の機会の付与を整理します。13条1項の振り分け、13条2項の意見陳述を要しない5つの場合、聴聞の通知から決定までの流れ(15条〜28条)、弁明書による弁明(29条〜31条)の違いを条文の言葉で表にしました。
目次
結論:不利益処分をしようとするとき、行政庁は、名あて人となるべき者のために意見陳述の手続を執ります(行政手続法13条1項)。許認可等を取り消す処分などには聴聞(15条〜28条)、それ以外の不利益処分には弁明の機会の付与(29条〜31条)です。聴聞は期日に審理を行う手続、弁明は原則として弁明書の提出で足りる手続です。ただし、13条2項の5つのいずれかに該当するときは、13条1項が適用されず、どちらの手続も執ることを要しません。
この記事は、e-Govに掲載されている行政手続法の条文だけをもとに、聴聞と弁明の機会の付与を整理したものです。行政書士試験の行政法は、令和8年度の試験案内で「行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法及び地方自治法を中心とする」と書かれています(出典:行政書士試験研究センター 令和8年度行政書士試験のご案内)。行政手続法全体の見取り図(4本柱・適用除外・審査基準・行政指導・届出・意見公募手続)は行政手続法の記事にあります。この記事は、その中の不利益処分の意見陳述の手続だけを、通知から決定までの流れで詳しく整理します。
聴聞・弁明が必要になるのは「不利益処分」のとき
まず、どの処分が対象になるのかを確認します。2条4号は、不利益処分を、行政庁が、法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これに義務を課し、又はその権利を制限する処分と定義しています。ただし、次の4つは除かれています。
| 除外されるもの | 条文 |
|---|---|
| 事実上の行為及び事実上の行為をするに当たりその範囲、時期等を明らかにするために法令上必要とされている手続としての処分 | 2条4号イ |
| 申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分 | 同号ロ |
| 名あて人となるべき者の同意の下にすることとされている処分 | 同号ハ |
| 許認可等の効力を失わせる処分であって、当該許認可等の基礎となった事実が消滅した旨の届出があったことを理由としてされるもの | 同号ニ |
申請を拒否する処分は不利益処分ではないので、聴聞・弁明の対象になりません。拒否の処分には、8条の理由の提示が定められています。
13条1項:聴聞か弁明かの振り分け
13条1項は、行政庁は不利益処分をしようとする場合には、次の区分に従い、意見陳述のための手続を執らなければならないと定めています。
| 区分 | 該当するとき | 手続 |
|---|---|---|
| 1号イ | 許認可等を取り消す不利益処分をしようとするとき | 聴聞 |
| 1号ロ | イに規定するもののほか、名あて人の資格又は地位を直接にはく奪する不利益処分をしようとするとき | 聴聞 |
| 1号ハ | 名あて人が法人である場合におけるその役員の解任を命ずる不利益処分、名あて人の業務に従事する者の解任を命ずる不利益処分又は名あて人の会員である者の除名を命ずる不利益処分をしようとするとき | 聴聞 |
| 1号ニ | イからハまでに掲げる場合以外の場合であって行政庁が相当と認めるとき | 聴聞 |
| 2号 | 前号イからニまでのいずれにも該当しないとき | 弁明の機会の付与 |
覚え方は、「イ〜ハは、許認可・地位・役員等の解任など、名あて人の立場を大きく左右するもの。ニは、行政庁が相当と認めれば聴聞に引き上げられる。それ以外は弁明」です(当サイトの整理)。1号ロの「イに規定するもののほか」という言葉から、許認可等の取消しはイに入り、ロは許認可等の取消し以外の資格・地位のはく奪を指す、と読みます。
13条2項:意見陳述の手続を執らなくてよい5つの場合
13条2項は、次のいずれかに該当するときは、前項の規定は適用しないと定めています。
| 号 | 内容(条文の言葉の要点) |
|---|---|
| 1号 | 公益上、緊急に不利益処分をする必要があるため、意見陳述のための手続を執ることができないとき |
| 2号 | 法令上必要とされる資格がなかったこと又は失われるに至ったことが判明した場合に必ずすることとされている不利益処分であって、その資格の不存在又は喪失の事実が裁判所の判決書又は決定書、一定の職に就いたことを証する当該任命権者の書類その他の客観的な資料により直接証明されたものをしようとするとき |
| 3号 | 施設若しくは設備の設置、維持若しくは管理又は物の製造、販売その他の取扱いについて遵守すべき事項が法令において技術的な基準をもって明確にされている場合において、専ら当該基準が充足されていないことを理由として当該基準に従うべきことを命ずる不利益処分であってその不充足の事実が計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたものをしようとするとき |
| 4号 | 納付すべき金銭の額を確定し、一定の額の金銭の納付を命じ、又は金銭の給付決定の取消しその他の金銭の給付を制限する不利益処分をしようとするとき |
| 5号 | 当該不利益処分の性質上、それによって課される義務の内容が著しく軽微なものであるため名あて人となるべき者の意見をあらかじめ聴くことを要しないものとして政令で定める処分をしようとするとき |
2号と3号には、「客観的な資料により直接証明されたもの」「計測、実験その他客観的な認定方法によって確認されたもの」という条件があります。事実が客観的に確定している場合に限って省略できる、と読みます。この条件を落とした「資格がなければ常に省略できる」「基準違反なら常に省略できる」という選択肢は誤りです。
13条2項の場合でも、14条の理由の提示は別に必要です。不利益処分をする場合、行政庁は、名あて人に対し、同時に、処分の理由を示さなければなりません(14条1項本文)。ただし、理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りではなく(同項ただし書)、その場合は、名あて人の所在が判明しなくなったときなどを除き、処分後相当の期間内に理由を示さなければなりません(同条2項)。
聴聞の流れ:通知から決定まで(15条〜28条)
聴聞は、第三章第二節(15条〜28条)に定められています。流れに沿って条番号を整理します。
| 段階 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| ① 通知 | 15条1項 | 聴聞を行うべき期日までに相当な期間をおいて、不利益処分の名あて人となるべき者に、書面で、次の4つを通知する。予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項、不利益処分の原因となる事実、聴聞の期日及び場所、聴聞に関する事務を所掌する組織の名称及び所在地 |
| ② 教示 | 15条2項 | 通知の書面で、期日に出頭して意見を述べ証拠書類等を提出し、又は出頭に代えて陳述書及び証拠書類等を提出できること、聴聞が終結する時までの間、原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができることを教示する |
| ③ 閲覧 | 18条1項 | 当事者及び、不利益処分がされた場合に自己の利益を害されることとなる参加人は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時までの間、調査の結果に係る調書その他の原因となる事実を証する資料の閲覧を求めることができる。行政庁は、第三者の利益を害するおそれがあるときその他正当な理由があるときでなければ、拒むことができない |
| ④ 主宰 | 19条 | 行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰する |
| ⑤ 審理 | 20条 | 最初の期日の冒頭で、主宰者が、行政庁の職員に、予定される不利益処分の内容、根拠条項、原因となる事実を出頭した者に説明させる。当事者・参加人は、出頭して意見を述べ、証拠書類等を提出し、主宰者の許可を得て行政庁の職員に質問できる |
| ⑥ 陳述書 | 21条 | 当事者・参加人は、期日への出頭に代えて、期日までに陳述書及び証拠書類等を提出できる |
| ⑦ 続行 | 22条 | なお聴聞を続行する必要があると認めるときは、主宰者は、新たな期日を定めることができる |
| ⑧ 終結 | 23条 | 当事者が正当な理由なく期日に出頭せず、かつ、陳述書等も提出しない場合などに、改めて意見を述べる機会を与えずに終結できる |
| ⑨ 調書・報告書 | 24条 | 主宰者が調書(審理の経過・陳述の要旨)と、当事者等の主張に理由があるかどうかについての意見を記載した報告書を作成し、行政庁に提出する |
| ⑩ 再開 | 25条 | 行政庁は、聴聞の終結後に生じた事情にかんがみ必要があると認めるときは、報告書を返戻して聴聞の再開を命ずることができる |
| ⑪ 決定 | 26条 | 行政庁は、調書の内容及び報告書に記載された主宰者の意見を十分に参酌して、不利益処分の決定をする |
聴聞の審理の公開と、一部が出頭しないとき
20条5項は、主宰者は、当事者又は参加人の一部が出頭しないときであっても、期日における審理を行うことができると定めています。20条6項は、期日における審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しないと定めています。
通知の公示
不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合は、15条3項により公示の方法で通知できます。公示は、不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置などをとって行い、その措置を開始した日から二週間を経過したときに、通知が到達したものとみなされます(同条4項)。
聴聞に登場する人:当事者・参加人・代理人・補佐人・主宰者
聴聞では、似た名前の関係者が登場します。条文の定義で区別します。
| 呼び方 | 意味 | 条文 |
|---|---|---|
| 当事者 | 聴聞の通知(15条1項)を受けた者(15条4項後段により到達したものとみなされる者を含む) | 16条1項 |
| 参加人 | 主宰者が、必要があると認めるときに、聴聞に関する手続への参加を求め、又は許可した関係人 | 17条1項・2項 |
| 関係人 | 当事者以外の者であって、不利益処分の根拠となる法令に照らし、当該不利益処分につき利害関係を有するものと認められる者 | 17条1項 |
| 代理人 | 当事者・参加人が選任する者。各自、聴聞に関する一切の行為ができる。資格は書面で証明する | 16条・17条2項・3項 |
| 補佐人 | 当事者又は参加人が、主宰者の許可を得て、ともに出頭できる者 | 20条3項 |
| 主宰者 | 聴聞を主宰する者。行政庁が指名する職員その他政令で定める者 | 19条1項 |
代理人については、16条2項が「各自、当事者のために、聴聞に関する一切の行為をすることができる」と書いています。代理人は、弁明の機会の付与でも選任できます(31条による16条の準用。後述)。
主宰者になれない人
19条2項が、主宰できない者を列挙しています。当事者・参加人、その配偶者・四親等内の親族・同居の親族、当事者・参加人の代理人・補佐人、これらの者であった者、当事者・参加人の後見人等、参加人以外の関係人です。
弁明の機会の付与の流れ(29条〜31条)
弁明の機会の付与は、第三章第三節(29条〜31条)に定められています。聴聞に比べて条文が少なく、手続は簡易です。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 方式 | 行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明書(弁明を記載した書面)を提出してする。証拠書類等を提出できる | 29条 |
| 通知 | 弁明書の提出期限(口頭の場合は、その日時)までに相当な期間をおいて、書面で、予定される不利益処分の内容及び根拠となる法令の条項、不利益処分の原因となる事実、弁明書の提出先及び提出期限(口頭の場合は、その旨並びに出頭すべき日時及び場所)を通知する | 30条 |
| 準用 | 15条3項・4項(所在不明のときの公示)と16条(代理人)を準用する | 31条 |
聴聞にあって、弁明の機会の付与に条文がないものは、次のとおりです。
- 通知の書面での教示(15条2項)
- 文書等の閲覧(18条)
- 主宰者(19条)
- 参加人(17条)
- 期日の審理、調書・報告書、決定の際の参酌(20条〜26条)
「弁明の機会の付与」には、聴聞の15条2項の教示や18条の閲覧に当たる条文が置かれていません。聴聞と弁明で、手続の厚さが違うことを、条文の有無で確認します。
聴聞と弁明の機会の付与:違いのまとめ
| 項目 | 聴聞 | 弁明の機会の付与 |
|---|---|---|
| 条文 | 15条〜28条 | 29条〜31条 |
| 対象 | 13条1項1号(イ〜ニ) | 同項2号(イ〜ニのいずれにも該当しない) |
| 方式 | 期日に審理(意見陳述、証拠書類等の提出、主宰者の許可を得ての行政庁の職員への質問) | 原則として弁明書の提出(口頭は行政庁が認めたとき) |
| 通知事項 | 内容・根拠条項、原因となる事実、期日・場所、所掌する組織の名称・所在地 | 内容・根拠条項、原因となる事実、弁明書の提出先・期限(口頭の場合は日時・場所) |
| 資料の閲覧 | 18条に規定あり | 規定なし |
| 主宰者 | あり(19条) | なし |
| 代理人 | 選任できる(16条) | 選任できる(31条による準用) |
| 参加人・補佐人 | 17条・20条3項 | 規定なし |
| 決定の際の扱い | 調書の内容と報告書の主宰者の意見を十分に参酌(26条) | 規定なし |
試験での問われ方(出題の型)
実際の問題文は引用せず、型として整理します。
- 型1:具体的な不利益処分(許認可の取消し、資格のはく奪、役員の解任命令、それ以外の命令など)を示して、聴聞と弁明のどちらになるかを問う。13条1項の区分を使う
- 型2:13条2項の例外。事例が5つのどれに当たるか、または当たらないか。2号・3号の条件(客観的な資料・計測等による確認)を読む
- 型3:聴聞の手続の細部。通知の内容と方式(書面)、閲覧の時期(通知から終結まで)、主宰者の資格、期日の審理(公開しないのが原則)、調書・報告書の役割、参酌
- 型4:聴聞と弁明の条文の有無。「弁明の機会の付与でも主宰者が必要」「弁明でも文書閲覧ができる」といった、聴聞の規定を弁明に持ち込んだ誤りの選択肢を見分ける
- 型5:申請に対する処分との区別。申請の拒否は不利益処分ではないので、聴聞・弁明の対象ではない(2条4号ロ)。拒否には理由の提示(8条)
間違えやすいポイント
- 聴聞の対象は、許認可等の取消し(13条1項1号イ)だけではなく、資格・地位のはく奪(ロ)、役員等の解任・会員の除名の命令(ハ)、行政庁が相当と認めるとき(ニ)も含む
- 弁明の機会の付与は、聴聞の対象に当たらない不利益処分のための手続(13条1項2号)。弁明は原則として書面だが、行政庁が認めれば口頭もある(29条1項)
- 13条2項の例外は5つ。2号・3号には「客観的な資料」「計測、実験その他客観的な認定方法」という条件がある。4号は金銭の納付・給付制限の不利益処分
- 13条2項の場合でも、14条の理由の提示は別に必要(ただし書あり)
- 文書等の閲覧(18条)は、聴聞の通知があった時から聴聞が終結する時まで。弁明の機会の付与には規定がない
- 聴聞の期日の審理は、行政庁が公開することを相当と認めるときを除き、公開しない(20条6項)
- 27条は、聴聞の節の規定に基づく処分又はその不作為についての審査請求を制限する。聴聞を経てされた不利益処分そのものを制限する条文ではない
この論点の問題を解く
まとめ
- 聴聞・弁明の対象は「不利益処分」(2条4号)。申請を拒否する処分は含まれない(同号ロ)
- 13条1項:1号(イ〜ニ)は聴聞、2号は弁明の機会の付与。13条2項の5つの場合は、どちらも執ることを要しない(13条1項が適用されない)
- 聴聞の流れ:通知(15条)→閲覧(18条)→主宰者(19条)→期日の審理(20条)→調書・報告書(24条)→参酌して決定(26条)
- 弁明の機会の付与は、原則として弁明書の提出(29条)。通知は30条、公示と代理人は31条で準用
- 当事者・参加人・関係人・代理人・補佐人・主宰者は、条文の定義で区別する
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よくある質問
Q弁明の機会の付与では、口頭で意見を述べることはできますか?
行政庁が口頭ですることを認めたときに限ってできます。行政手続法29条1項は、弁明は、行政庁が口頭ですることを認めたときを除き、弁明を記載した書面(弁明書)を提出してするものとすると定めています。30条は、口頭による弁明の機会の付与を行う場合の通知事項として、その旨並びに出頭すべき日時及び場所を挙げています。弁明では、証拠書類等を提出することもできます(29条2項)。
Q申請を拒否されるときにも、聴聞や弁明の機会の付与は与えられますか?
聴聞も弁明の機会の付与も、「不利益処分」をしようとする場合の意見陳述の手続です(13条1項)。2条4号は、不利益処分から「申請により求められた許認可等を拒否する処分その他申請に基づき当該申請をした者を名あて人としてされる処分」(ロ)を除いています。申請を拒否する処分には、聴聞・弁明の機会の付与ではなく、8条の理由の提示(拒否する処分をする場合は、申請者に対し、同時に、処分の理由を示さなければならない。同条1項にただし書あり)が定められています。
Q聴聞を主宰できない人には、どのような人がいますか?
19条2項が、主宰できない者を列挙しています。聴聞の当事者又は参加人、その配偶者・四親等内の親族・同居の親族、当事者・参加人の代理人又は補佐人、これらの者であった者、当事者・参加人の後見人・後見監督人・保佐人・保佐監督人・補助人・補助監督人、参加人以外の関係人です。聴聞は、行政庁が指名する職員その他政令で定める者が主宰します(19条1項)。
Q聴聞の手続に関する処分について、審査請求はできますか?
27条は、聴聞の節(第二節)の規定に基づく処分又はその不作為については、審査請求をすることができないと定めています。制限されているのは、「この節の規定に基づく処分又はその不作為」です。27条は、聴聞を経てされた不利益処分そのものについて、審査請求を制限する条文ではありません。
Q聴聞を受ける人の所在が分からないときは、通知をどうしますか?
15条3項により、行政庁は、不利益処分の名あて人となるべき者の所在が判明しない場合には、通知を公示の方法で行うことができます。公示は、不特定多数の者が閲覧することができる状態に置く措置などをとって行い、その措置を開始した日から二週間を経過したときに、通知がその者に到達したものとみなされます(同条4項)。
法令や試験の数字は、改正や年度で変わります。この記事の最終確認日は2026年10月7日です。申込みや合格基準は、必ず試験団体の公式情報で確かめてください。

