行政法52行政不服審査法の教示制度

行政書士 行政法 問52:行政不服審査法の教示制度

行政不服審査法が定める教示制度に関する次の記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 行政庁は、審査請求または再調査の請求をすることができる処分を書面でする場合には、処分の相手方に対し、当該処分につき審査請求をすることができる旨や審査請求先・審査請求期間等を書面で教示しなければならない。
  • 行政庁が誤った教示(本来審査請求ができるのに、審査請求できないと教示した場合等)をした場合、当該教示を信じて審査請求等ができなかった者が不利益を受けることのないよう、法律は一定の救済措置を設けている。
  • 利害関係人から教示を求められた場合、行政庁は書面により教示しなければならず、口頭での教示は許されない。正答
  • 行政庁が教示義務のある場合に教示をしなかったときは、当該処分の相手方は当該処分庁に対して不服申立てをすることができ、当該処分庁は審査庁として定める行政庁に速やかに送付しなければならない。
  • 処分庁が、審査請求をすべき行政庁を誤って教示した場合において、教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は速やかに審査請求書を処分庁または審査庁となるべき行政庁に送付しなければならず、送付がされたときは、初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなされる。
正答:利害関係人から教示を求められた場合、行政庁は書面により教示しなければならず、口頭での教示は許されない。

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ウが誤りです。行審法82条2項は、利害関係人から不服申立てをすることができる旨の教示を求められた場合、「行政庁は、当該教示を求めた者に対し、書面で教示しなければならない」と規定しています。ただしこれは「利害関係人が求めた場合に書面で教示する義務」であり、「口頭での教示が一切許されない」ではなく、「求められた場合は書面でなければならない」という規定です。一方、処分を書面でする場合に相手方に対して行う教示(82条1項)はそれ自体書面による処分への付随的教示ですが、利害関係人からの求めに対する教示は「書面で」が要件です。ウの「口頭での教示は許されない」は、誰に対しても口頭教示が一切禁止されるという意味に読めるため誤りです。

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教示義務の二種類(82条):

1. 職権教示(82条1項): 審査請求・再調査の請求ができる処分を書面でする場合、処分の相手方に対して①不服申立てができる旨、②不服申立先、③不服申立期間を書面(または当該書面に明示)で教示する義務。処分が口頭でされた場合は82条1項の適用外(相手方から求めがあれば対応)。

2. 申請教示(82条2項): 利害関係人(処分の相手方以外で不服申立てに利害を有する者)から教示を求められた場合、行政庁は書面で教示しなければならない。

ウの誤りの詳細: 82条1項の処分書面に対する教示は書面で行われますが、これは処分を書面で行う場合の話です。口頭の処分(一般的に書面でない処分)の場合は職権教示義務は生じません(処分の相手方が求めれば書面教示義務が生ずる)。したがって「口頭での教示は許されない」という絶対的禁止の読み取りは誤りです。

オ(誤った教示の救済・22条)が正しい根拠: 処分庁が審査請求先を誤って教示し、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は速やかに審査請求書を処分庁または審査庁となるべき行政庁に送付し、その旨を審査請求人に通知します(22条1項)。そして、審査請求書が審査庁となるべき行政庁に送付されたときは、「初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす」(22条5項)。すなわち、当初の(誤った機関への)申立て時点に遡って適法な審査請求があったものと扱われます。オはこの22条1項・5項を正確に述べた正しい記述です。

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【教示制度の沿革と趣旨】

教示制度は、一般国民が複雑な行政不服申立て制度を知らないまま期間を徒過して救済の機会を失うことを防ぐための制度です。行審法旧法でも教示制度は存在しましたが、2016年改正で整備が進みました。行訴法46条にも処分・裁決の告知に関する教示規定があり(取消訴訟が提起できる旨等の教示)、行審法の教示制度と連携しています。

教示の機能:①国民への情報提供(知る権利の保障)、②手続保障(争訟機会の実質的確保)、③行政の適正運営(誤りの自律的是正インセンティブ)。

【各教示条文の詳細】

82条1項(処分書面への教示): 教示が必要な処分の要件:「審査請求もしくは再調査の請求をすることができる処分を書面でする場合」。教示内容:①審査請求(または再調査の請求)ができる旨、②審査請求先(審査庁)または再調査の請求先(処分庁)、③審査請求期間(または再調査の請求期間)。書面教示の方法:処分を書面でする場合は処分書に記載するか、別紙で交付します。

82条2項(利害関係人からの教示請求への対応): 利害関係人とは処分の相手方以外で不服申立てに正当な利益を有する者(例:隣接地所有者が他の者への建築確認処分に利害を持つ場合)。求めがあれば書面で教示する義務があります。求めがない場合の自発的口頭教示は排除されていませんが、義務的教示は書面です。

83条(教示をしなかった場合): 教示義務があるにもかかわらず教示しなかった場合、当該処分の相手方は「処分庁」に書面で不服申立てをすることができます。処分庁は速やかに審査庁に送付し、送付を受けた審査庁がその後の審理を担当します。この仕組みにより、教示なしで相手方が審査庁を知らなくても救済が受けられます。

【誤教示救済の仕組み(22条)】

誤教示の典型パターンと救済:

パターン1(不服申立先の誤り): A機関へ申立てるべきところをB機関と教示→B機関に申立て→B機関はA機関に送付・申立人に通知→B機関に申立てた日に遡及してA機関への申立てとみなす(22条1項・2項)。

パターン2(不服申立てができないとの誤り教示): 「審査請求できない」と教示したが実際はできる場合→教示を信じて期間を徒過した者は「正当な理由」(18条1項ただし書)として取り扱われる可能性あり。

パターン3(期間の誤り): 「3か月以内」を「1か月以内」と誤教示→1か月以内に申立てた場合は通常の期間内申立てとして適法。1か月超3か月以内の申立ては誤教示を信じた「正当な理由」で救済の余地あり。

オはこのパターン1(不服申立先の誤り)を条文どおりに述べたものです。22条1項により誤って教示された行政庁に書面で審査請求がされれば、その行政庁が正しい行政庁に送付し、22条5項により「初めから審査庁となるべき行政庁に審査請求がされたものとみなす」とされます。みなし効果により、最初の申立て時点を基準に審査請求期間(18条)の遵守が判断されるため、誤った機関への当初申立てが期間内であれば適法な審査請求として扱われます。よってオは正しい記述であり、本問の正答は明確な誤りであるウ(利害関係人への教示は書面義務だが「口頭での教示は一切許されない」とまでは言えない点)です。

【取消訴訟と教示の連携(行訴法46条)】

行訴法46条は、行政庁が処分または裁決をする場合において、当事者に対して取消訴訟の被告・管轄裁判所・出訴期間を教示する義務を定めています。行審法82条の教示(不服申立ての教示)と行訴法46条の教示(取消訴訟の教示)が連携することで、国民は行政上の救済(審査請求)と司法上の救済(取消訴訟)の両方について情報を得られます。この二段構えの教示制度が「争訟機会の実質的確保」を支えています。

【根拠条文】

行政不服審査法 第22条(誤った教示の場合の救済)、第82条第1項(職権教示)、第82条第2項(利害関係人の教示請求)、第83条(教示をしなかった場合の不服申立て)

【参照条文】

行政事件訴訟法 第46条(取消訴訟の教示)

【補足】

職権教示(82条1項)は書面処分の際に相手方へ義務的。利害関係人からの請求があれば書面で教示義務(82条2項)。口頭処分に自発的義務なし。誤教示→22条の遡及効(申立日みなし)。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政不服審査法 第82条(教示)・第83条(教示をしなかった場合の不服申立て)・第22条(誤った教示の救済) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

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