行政書士 行政法 問63:無効等確認訴訟・不作為違法確認訴訟
行政事件訴訟法が定める無効等確認訴訟および不作為の違法確認訴訟に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア無効等確認訴訟は、いかなる場合でも提起することができ、取消訴訟の補充的手段として常に利用できる。
- イ無効等確認訴訟を提起するには、「当該処分もしくは裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」または「当該処分もしくは裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分もしくは裁決の無効等の確認を求めることがなければ当該損害を避けることができないもの」に限り提起することができる(補充性要件)。正答
- ウ不作為の違法確認訴訟は、法令に基づく申請をした者に限り提起することができ、申請をしていない者は提起することができない。
- エ不作為の違法確認訴訟において勝訴(違法確認判決)を得た場合、処分庁は申請に対して直ちに許可処分をしなければならない。
- オ無効等確認訴訟については、出訴期間(処分を知った日から6か月)の規定が適用され、この期間内に提起しなければ訴えが不適法として却下される。
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イが正しいです。行訴法36条は無効等確認訴訟の原告適格について、①当該処分・裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者、または②処分・裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、無効確認以外の方法によって損害を避けることができない者(補充性)、と定めています。アは誤りで、36条の補充性要件(取消訴訟等で目的達成できる場合は無効確認訴訟は認められない)があります。ウは正しく(37条)、不作為違法確認訴訟は法令に基づく申請をした者のみが提起できます。エは誤りで、違法確認判決は不作為の違法を確認するだけで申請の認容を命じるものではなく、処分庁は何らかの処分(拒否処分を含む)をすれば足ります。オは誤りで、無効等確認訴訟には出訴期間の制限がありません(行訴法14条は取消訴訟の規定で、36条は準用なし)。
無効等確認訴訟(36条)の特徴:
補充性要件(イが正しい根拠・36条): 無効等確認訴訟は、取消訴訟や当事者訴訟等の他の手段では損害を避けられない場合の「最後の手段」です。36条は①続く処分による損害のおそれがある者、②無効確認以外では損害を避けられない者、という二種類の原告適格者を定め、後者については「補充性」(他の訴訟手段では目的達成不可)が明示的に要求されています。
出訴期間(オが誤りの根拠): 無効等確認訴訟には行訴法14条の出訴期間規定が適用されません(36条は14条を準用していない)。行政行為の無効は不可争力(出訴期間・審査請求期間)の制約を受けないことと対応しています(無効な行為には不可争力が発生しない)。
不作為の違法確認訴訟(37条)の特徴:
原告適格(ウが正しい根拠・37条): 「処分または裁決についての申請をした者」に限られます。申請をしていない者は提起できません。「申請」は「法令に基づく申請」であることが必要です。
判決の効果(エが誤りの根拠): 違法確認判決は「不作為が違法であること」を確認するだけです。処分庁に特定の処分(申請認容等)を命じるものではなく、処分庁は何らかの応答をする義務が生じます(拒否処分も可)。申請の内容を命じたい場合は義務付け訴訟(37条の2〜37条の3)を選択すべきです。
【無効と取消しの違いと訴訟選択の問題】
行政行為の無効と取消しの区別が訴訟選択に直結します。
取消しうべき行政行為(軽度の瑕疵):出訴期間・審査請求期間が経過すると不可争力が発生し、以後は取消訴訟・審査請求で効力を争えなくなります(民事訴訟でも「公定力」を主張されて効力を覆せない)。
無効な行政行為(重大明白な瑕疵):不可争力が発生しないため、いつでも無効を主張できます(期間制限なし)。また、民事訴訟において先決問題として無効を主張(抗弁)することも可能です。
訴訟選択の実務:出訴期間(取消訴訟は知った日から6か月)を徒過した場合でも、当該処分が「重大明白な瑕疵」を持つ無効行為であれば、無効等確認訴訟(または民事訴訟での抗弁)によって争う余地があります。ただし「重大明白」の立証は容易でなく、実務上の難点があります。
【補充性要件の詳細分析(36条の二類型)】
36条の二つの原告適格類型を分析します。
第一類型:「当該処分もしくは裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」
この類型は補充性が明示的に要求されていません(36条柱書の但書が第二類型にのみかかるという解釈が通説)。典型例:課税処分が無効なのに、続く滞納処分(差押え等)の被害を受けるおそれがある場合→続く処分の前段階で無効確認を求める必要性が高く、補充性を要求しない。
第二類型:「当該処分の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分もしくは裁決の無効等の確認を求めることがなければ当該損害を避けることができないもの」
補充性が明示的に要求されています(36条後段)。例:国籍確認訴訟(当事者訴訟)でも目的が達せられる場合、無効確認訴訟の補充性なし→無効確認訴訟は不適法。
この二類型の区別は試験で問われる重要な論点であり、第一類型(続く処分からの保護)vs 第二類型(それ以外で補充性必須)という整理が重要です。
【不作為違法確認訴訟の位置づけの変化】
2004年改正前:不作為に対する申請者の救済手段として「不作為の違法確認訴訟」が主要な手段でした。しかしこの訴訟の効果は「違法確認」のみで、処分庁に特定の処分を命じる力がなく、実効性に限界がありました。
2004年改正後:申請型義務付け訴訟(37条の3)が法定化されたことで、申請者は「不作為違法確認+申請認容処分の義務付け」を組み合わせて請求できるようになりました(37条の3第3項1号:義務付け訴訟は不作為違法確認訴訟と併合して提起できる)。これにより不作為違法確認訴訟単体での活用場面は限定されつつあります。
現在の不作為違法確認訴訟の主な機能:①義務付けの要件が不明確な段階で先行して不作為の違法を確認する手段、②義務付け訴訟との併合提起(37条の3第3項)における一部として利用。
【義務付け訴訟との役割分担】
不作為違法確認訴訟(37条)と申請型義務付け訴訟(37条の3)の役割分担を整理します。
| 訴訟 | 勝訴した場合の効果 | 特徴 |
|---|---|---|
| 不作為違法確認訴訟(37条) | 「不作為が違法」という確認のみ。処分庁は何らかの処分をする義務が生じる(拒否処分も可)| 2004年改正前は主要手段。現在は義務付けと併合が主流 |
| 申請型義務付け訴訟(37条の3) | 処分庁に申請認容処分を義務付け。「一定の処分または裁決をすべき旨を命ずる」判決が可能 | 2004年改正で法定化。不作為違法確認訴訟と併合提起が必要(37条の3第3項1号) |
エが誤りとなる核心:不作為違法確認判決(37条)で得られるのは「違法確認」のみです。「直ちに許可処分をしなければならない」という義務が生じるのではなく、処分庁は拒否処分も含めた何らかの応答をすることで義務を果たします。申請の認容を命じる義務は生じません(義務付け訴訟との本質的な差異)。
【根拠条文】
行政事件訴訟法 第36条(無効等確認訴訟の原告適格・補充性)、第37条(不作為の違法確認訴訟)、第37条の3第3項第1号(義務付け訴訟と不作為違法確認訴訟の併合提起)
【補足】
無効等確認訴訟は補充性あり(他の手段で目的達成可能なら不適)・出訴期間制限なし。不作為違法確認訴訟は「法令に基づく申請者のみ」・勝訴でも「違法確認」のみ(許可命令でない)。2004年改正で申請型義務付けとの併合が主流に。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 行政事件訴訟法 第36条(無効等確認訴訟の原告適格・補充性)・第37条(不作為の違法確認訴訟) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。