商法・会社法15設立無効の訴え・設立取消しの制度

行政書士 商法・会社法 問15:設立無効の訴え・設立取消しの制度

株式会社の設立無効に関する次の記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 株式会社の設立に無効事由がある場合、設立の無効は誰でも、いつでも設立無効の訴えを提起することによって主張することができる。
  • 設立無効の訴えは、会社の成立の日から2年以内に提起しなければならず、原告は、設立時の株主・取締役・監査役に限定される。
  • 設立無効の判決が確定した場合、その効力は将来に向かってのみ生じ(遡及効なし)、設立無効判決確定前に会社が行った法律行為は有効のまま維持される。正答
  • 株式会社の設立取消しの訴えは、設立の無効の訴えとは別に会社法が定める訴訟類型であり、発起人の詐欺・脅迫等を原因として提起することができる。
  • 設立無効事由の典型例として、定款の絶対的記載事項の欠如・公証人認証の欠如・発起人が一人もいない場合が挙げられ、形式的な手続違反(軽微な欠陥)も設立無効事由となる。
正答:設立無効の判決が確定した場合、その効力は将来に向かってのみ生じ(遡及効なし)、設立無効判決確定前に会社が行った法律行為は有効のまま維持される。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・判例も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

設立無効の訴え(会社法828条1項1号)は、会社法が定める会社の組織に関する訴えの一種です。提起できる者(原告適格)は、設立時の株主・取締役・監査役に限定されます(アの「誰でも」は誤り)。提訴期間は会社の成立の日から2年以内(イの期間は正しいが原告適格の範囲も確認必要)。設立無効の判決が確定した場合、その効力は将来に向かってのみ生じ(遡及しない)、確定前の取引行為は有効のまま維持されます(ウ正しい)。エの「設立取消しの訴え」は会社法に設けられておらず、発起人の詐欺等は個別の法律(民法)で対処します。オの「形式的な軽微な欠陥も無効事由」は誤りで、設立無効事由は重大な瑕疵に限定されます。

標準試験対策の基準レベル

設立無効の訴えの各要素を整理します。原告適格(会社法828条2項1号):設立無効の訴えを提起できる者は「株式会社の場合…設立時の株主…設立時の取締役、設立時の監査役」に限定されています(ア誤り:「誰でも」は過剰)。提訴期間(828条1項1号):会社の成立の日から2年以内に提起しなければならない(イの期間は正しいが原告適格の記述が誤り)。判決の効力(839条):設立無効・取消しの判決が確定した場合、その効力は第三者に対しても効力を生じますが(対世効)、判決確定前に生じた法律効果(会社が行った取引等)は影響を受けません(将来効・遡及効なし)(ウ正しい)。これは多数の取引関係者の法的安定性を保護するためです。設立取消しの訴え:会社法は設立取消しの訴えという制度を設けていません(エ誤り)。発起人の詐欺・脅迫等については民法の意思表示の取消し等で対応しますが、設立という一体的な法律行為に民法の取消しを適用することは限定的です。設立無効事由:重大な瑕疵(定款の絶対的記載事項の欠如・公証人認証の欠如・発起人の存在自体の欠如等)に限定されます。軽微な手続違反は無効事由とはなりません(オ誤り)。

上級誤答論破・条文/判例まで深掘り

【理論的背景】

会社の設立無効を訴えによってのみ主張できる(訴えによる形成)とする制度は、会社設立後の取引安全と法的安定性の確保のためです。もし誰でもいつでも民法の無効を主張できるとすれば(一般原則によれば誰でも・いつでも・抗弁としても無効主張可)、会社が行った取引・契約が事後的に全て無効とされるリスクが生じ、取引の安全が根本から損なわれます。そこで会社法は、①一定の者のみが原告となれる(原告適格の限定)、②一定期間内のみ提起できる(出訴期間の制限)、③判決確定後に効力が生じ遡及しない(将来効・遡及効なし)、という三重の制限を設けることで、取引安全と設立無効の主張(正義の実現)のバランスを図っています。設立取消しの訴えが会社法に存在しない理由も同様で、会社という集団的法律関係に民法の意思表示の取消し(個人間の法律行為に設計された制度)をそのまま適用することが適切でないからです。

【条文構造】

会社法828条1項各号は「会社の組織に関する行為の無効の訴え」として、設立無効(1号)・新株発行等無効(2号)・資本金の額の減少無効(5号)等を列挙し、それぞれ提訴期間を定めています。設立無効(1号)の提訴期間は「会社の成立の日から2年以内」です。828条2項1号は原告適格として、株式会社の設立無効については「設立する株式会社の株主等(株主、取締役、監査役(監査役設置会社の場合)、執行役(指名委員会等設置会社の場合)又は清算人)」に限定しています。会社債権者は原告適格を有しません。839条は「会社の組織に関する訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合には、当該判決において無効とされ又は取り消された行為(当該行為によって会社が設立された場合にあっては、当該設立)は、将来に向かってその効力を失う」と規定し、遡及効を否定しています。

【試験での位置づけ】

行政書士試験での設立無効の問われ方は、①原告適格(株主・取締役・監査役に限定)、②出訴期間(成立の日から2年)、③判決の効力(将来効・対世効・遡及効なし)、④設立取消しの訴えの不存在、⑤設立無効事由の重大性限定の5点が典型です。株主総会決議取消しの訴え(831条)との比較(出訴期間・原告適格・遡及効の有無)も有用な論点です。本問ウの「将来効・遡及効なし」は取消し・解散・合併無効の判決と共通する会社法の組織訴訟の特徴です。

【各選択肢の発展補足】

  • ア: 誤り。設立無効の訴えの原告は「株式会社の設立時の株主・取締役・監査役等」に限定(828条2項1号)。「誰でも」は認められない。
  • イ: 誤り(期間は正しいが原告適格の説明が不正確)。「設立時の株主・取締役・監査役」に限定されるというイの記述は828条2項1号と整合するが、設問全体の文脈でウが最も正確な正答。
  • ウ: 正しい。839条により、設立無効判決確定の効力は将来に向かって生じ(遡及効なし)、確定前の法律行為は有効のまま維持される。
  • エ: 誤り。会社法は「設立取消しの訴え」という類型を設けていない。発起人の詐欺等の問題は民法・各種法令で対応するが、会社組織に関する訴えとして法定はされていない。
  • オ: 誤り。設立無効事由は、定款の絶対的記載事項の欠如・公証人認証の欠如・発起人が存在しない等の重大な瑕疵に限定される。軽微な手続違反は設立無効事由にはならない(設立の安定性確保)。

【根拠条文】

会社法 第828条第1項第1号(設立無効の訴え・出訴期間2年)

会社法 第828条第2項第1号(原告適格・株主等に限定/債権者は不可)

会社法 第839条(組織訴訟の判決の効力・将来効・遡及効なし)

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(過去問の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 会社法第828条第1項第1号(設立無効の訴え)、会社法第839条(設立無効判決の効力・遡及効なし)、会社法第831条以下(株主総会決議取消しとの比較) 現行法(2026年度基準)に準拠し、根拠条文・判例を明記しています。

関連論点

設立無効の訴え・設立取消しの制度頻出度B

商法・会社法の他の問題

1
商人の意義・固有の商人と擬制商人
2
商行為の種類・絶対的商行為と営業的商行為
3
商業登記の効力・登記事項の対抗力
4
商号・商号選定の自由と制限
5
支配人の権限・表見支配人
6
商事売買の特則・売買の目的物の検査・通知義務

全365問・科目別に解いて、行政書士に最短合格

行政法・民法・憲法を科目別に攻略。各問に根拠条文・判例とAI解説(3レベル)付き。